経穴学考察です。

 食道の構造

◆食道:前後にやや扁平な筋肉性の管状の臓器で,その全長は約25cmである。
第6頸椎の高さで咽頭喉頭部に続いて始まり,横隔膜の食道裂孔を貫いて腹腔に至り,
  第11胸椎の前左側で胃の噴門に移行する。
頸部食道:第6頸椎体下縁~胸骨柄上縁までの長さ約5Cmの部分で,結合組織によって
  気管の後壁に接しており,脊柱のすぐ前を下行する。
胸部食道:胸骨柄上縁~横隔膜の食道裂孔までの長さ約18Cmの部分で,気管及び
  心臓の後方,脊柱胸部及び胸大動脈の前を下行する。
腹部食道:食道裂孔~胃の噴門までの長さ1~2Cmの部分で,3部の中で最も短い。
食道-位置 
3ヶ所の生理的狭窄部があり,しばしば通過障害を起こし異物の停滞し易い部位となる。
第1狭窄部:食道起始部の第6頸椎の高さにあり,切歯より約15cmの距離にあたる。
第2狭窄部:左主気管支と交差する部位にあり,切歯より約25cmの距離にあたる。
第3狭窄部:食道裂孔を通過する所にあり,切歯より約40cmの距離にあたる。
食道裂孔では横隔膜の右脚から延びる筋束が食道を取り巻いており,息を吸う時に
  横隔膜が収縮すると同時に収縮し食道壁を締める。
食道裂孔 
食道壁は内腔側から粘膜,粘膜下層,筋層,外膜の4つの層に分かれている。
粘膜には7~10本の縦ヒダがあり,内腔に隆起しているため,食道内腔は嚥下時
  以外はほぼ閉じた状態になっている。
食道・胃接合部-冠状断面 
✤粘膜は食物が通過することで傷つかないように重層扁平上皮で構成されている。
粘膜下層には多数の食道腺があり,粘液を分泌し,食物の通りをよくする。
✤筋層は内輪走筋・外縦走筋で,筋層間には疎性結合組織があり,中に筋層間神経叢
  (アウエルバッハ神経叢)がある。
食道上1/3部は横紋筋(鰓弓由来)からなり,次第に移行し下1/3部は平滑筋になる。
✤外膜は疎性結合組織で,大動脈や気管など縦隔器官との間を埋める。
食道管壁-低倍率像   
食道粘膜の重層扁平上皮は食道・胃接合部で急に単層円柱上皮に変わる。
粘膜固有層は疎性結合組織の薄い層で,毛細血管,リンパ管,リンパ組織及び
  食道腺の導管などが含まれている。
食道噴門部側の粘膜固有層には静脈叢が発達している。
食道上端と下端の粘膜固有層には食道噴門腺があり,粘液を分泌する。
粘膜筋板は縦走する薄い平滑筋層で,食道の縦ヒダに沿って波状を呈する。
✤粘膜下層は疎性結合組織で,血管やリンパ管が豊富で,粘膜下神経叢がある。
食道噴門部側の粘膜下層は粘膜固有層と共に静脈叢が発達している。
食道腺の導管は粘膜筋板と粘膜固有層を貫いて食道の内腔に開口する。
✤食道には固有の漿膜がなく,疎性結合組織の外膜に直接連なっているため,食道癌は
  周囲の臓器(肺,胸膜,気管・気管支,心臓・心膜,大動脈など)に浸潤しやすく,血管や
  リンパ管を通して転移を起こしやすい傾向がある。
食道管壁-高倍率像 
解剖学的に食道・胃接合部には厳密な意味での括約筋はないが,この部位の輪状筋が
  生理学的に神経による調節機構が発達し,嚥下などの刺激に対応し収縮と弛緩を生じ,
  内容物の通過や逆流防止に機能しているため,これを下部食道括約筋(LES)と呼ぶ。
食道・胃結合部 
横隔食道靱帯(筋膜):横隔膜(主に下面)を包む筋膜が食道裂孔で食道の外膜に移行し
  形成されている。
上葉は食道裂孔を通り貫けて上行し,一部は粘膜下層に結合している。
横隔食道靱帯は常に動きのある横隔膜と食道の位置関係を正常に保持する。
なんらかの原因で横隔食道靱帯が緩んだり,裂孔が大きくなったりすると,胃の一部が
  胸腔内に入り込んでしまいますが,この状態を食道裂孔ヘルニアと言う。
食道-筋層 
食道末端の左縁と胃底部で作る鋭角(50~80 )をHis角(噴門切痕)と呼ぶ。
His角は主に内斜筋の肥厚と走行によって形成され,内斜筋を被う胃粘膜は内腔に
  隆起して弱い食道噴門弁として働く。
食道の動脈:胸大動脈から4本~5本の食道動脈が来る。ほかに下甲状腺動脈,
  気管支動脈,左胃動脈,左下横隔動脈などから来る。
食道-動脈 
食道の静脈:食道静脈叢から出る食道静脈は下甲状腺V,奇V,左胃静脈などに注ぐ。
食道-静脈
左胃静脈は正常では門脈に流れますが,門脈圧が上昇すると肝臓に流入するはずの
  血流が食道静脈側に逆流し,左胃静脈の側副血行路が形成される。
食道下端の粘膜下層と粘膜固有層は共に静脈叢が発達しているため,圧の高い静脈が
  流入すると負担がかかり,拡張して次第に静脈瘤が形成される。
食道静脈瘤出血は肝不全,肝臓癌の合併と共に肝硬変の三大死因の1つである。
食道静脈瘤 
食道の神経:食道神経叢(第1~第6胸交感神経,大内臓神経小内臓神経の枝,
  迷走神経の食道枝)(図1図2),筋層間神経叢粘膜下神経叢がある。
食道リンパの流れ
頸部食道のリンパ管は大部分が気管傍リンパ節に入り,一部は深外側頸リンパ節
  又は鎖骨上リンパ節に流入する。
胸部食道のリンパ管は主に食道傍リンパ節後縦隔リンパ節及び気管・気管支淋巴節
  流入する。
腹部食道のリンパ管は主に食道傍淋巴節左胃リンパ節及び腹腔リンパ節に流入する。
食道リンパの流れ 
食道リンパ管の一部は所属リンパ節を経由しないで直接胸管に流入するため,
  食道癌は早期の段階から遠隔転移を起こす可能性が高い。
食道癌-表在隆起型