経穴学考察です。

 小腸の構造

小腸は消化管の中で最も長い(6~7m)部分で,第1腰椎体の右側で胃の幽門
  続いて始まり,腹腔内を迂回しながら走り,右腸骨窩で盲腸に開口する。
小腸は十二指腸,空腸,回腸の3部に分けられる。
十二指腸は後腹膜臓器で,後腹壁に固定されており,無間膜小腸ともいう。
空回腸は腸間膜によって後腹壁に付いており,可動性が大きく,腸間膜小腸という。
小腸は消化と吸収の90%以上を担う重要な臓器であるとともに,壁に多数の
  リンパ小節が存在し,最大の免疫器官でもある。
◆十二指腸:胃の幽門と空腸を繋ぐ長さ20~30Cmの部分で,前面(腹腔側)のみ
  壁側腹膜に覆われ,後面は後腹壁(前腎筋膜)に癒着し,腹膜後隙(前腎傍腔)を
  走行しながらC字状で膵頭を囲む。
幽門に続く起始部と空腸に移行する末端部は腹膜に包まれている。
十二指腸は上部,下行部,水平部,上行部の4部に分けられる。
十二指腸 

✤上部:長さ約5Cmの部分で,第1腰椎の右側に位置している。
胃の幽門に続いて始まり,ほとんど水平に右後方に進み,胆嚢頸の後下方で急に
  上十二指腸曲をなして下方に曲がり,下行部に移行する。
上部の始まり(3Cm以内)の部分は十二指腸球部と呼ばれ,壁が薄く,粘膜に
  輪状ヒダを欠いており,潰瘍の好発部位である。
上(球)部と肝門部との間には肝十二指腸間膜が張っており,十二指腸の中で最も
  自由に動ける部位である。
上部の後方には胃十二指腸動脈,総胆管,門脈などが通っている。
✤下行部:上十二指腸曲に続く長さ約8Cmの部分で,右腎の内側縁に沿って,
  第1~3腰椎体と膵頭の右側を下行する。
第3腰椎の下縁で急に下十二指腸曲をなして左に曲がり,水平部に移行する。
下行部の粘膜にはかなりの数の輪状ヒダがあり,後内側壁には縦走する1条の
  縦ヒダがある。
縦ヒダの下端は隆起して大十二指腸乳頭を形成し,ここに総胆管と膵管とが
  共同に開口する。
しばしば大十二指腸乳頭の上方2~3Cmの所に小十二指腸乳頭があり,
  副膵管が開口する。
十二指腸-粘膜ヒダ 

✤水平部:下十二指腸曲に続く長さ約10Cmの部分で,下大静脈と第3腰椎の前を
  ほぼ水平に左に進み,腹大動脈の前方,第3腰椎の左前方で上行部に移行する。
腹大動脈は第12胸椎~第4腰椎の前,左側に位置している。
上腸間膜動静脈は水平部の前面を越えて下行する。
✤上行部:水平部に続く長さ2~3Cmの部分で,脊柱の左側を斜め上方に向い,第2
  腰椎の左側で急に十二指腸空腸曲をなして前下方に曲がり,空腸に移行する。
十二指腸空腸曲の上後壁は十二指腸提筋によって横隔膜右脚に固定されている。
十二指腸提筋の下端は上12指腸ヒダに包まれており,合わせてTreitz 靱帯という。
◆空腸と回腸:第2腰椎の左側で十二指腸空腸曲に続いて始まり,その下端は
  右腸骨窩で盲腸に開口する。
空腸と回腸は腹膜に包まれており,腸間膜根によって後腹壁に付いている。
腸管には腸間膜に付着する腸間膜縁とその反対側の自由縁がある。
おおむね口側の約2/5が空腸,残り約3/5が回腸とされる。
空腸 
空腸は回腸より太く,粘膜に見られる輪状ヒダも丈が高く密に並んでいる。
空腸は回腸に比べ血管が豊富であり,生体で回腸より赤く見える。
回腸の辺縁動脈は空腸に比べ複雑で,動脈弓が多層構成になっている。
回腸部の腸間膜は空腸部に比べやや厚く,脂肪を多く含んでいる。
回腸 
粘膜固有層と粘膜下層には多数のリンパ小節があり,粘膜上皮下に侵入した
  様々な病原体から体を守る。
空腸では個々のリンパ小節が散在しており,孤立リンパ小節という。
回腸では多数のリンパ節が長円板状に集合してパイエル板を形成する。
パイエル板の長軸は腸管の長軸に一致し,腸間膜付着部の反対側にある。
腸チフス菌(傷寒杆菌)は主に集合リンパ小節(パイエル板)で増殖する。
小腸壁は内側から粘膜,粘膜下層,筋層,外膜の4つの層に分かれている。
✤粘膜:十二指腸の上部を除く小腸の粘膜と粘膜下層は内腔に突出し多数の
  輪状ヒダを形成する。
輪状ヒダは十二指腸下行部より始まり,下行部と空腸上部で最も発達しており,
  回腸では次第に少なくなり,回盲部ではほとんど消失している。
輪状ヒダを含む粘膜の表面には絨毛(指状の小突起)が無数に密生している。
腸絨毛は小腸の特有な構造で,粘膜上皮と固有粘膜層が内腔に突出して
  形成されている。
小腸壁-輪状ヒダ 
粘膜上皮:単層円柱上皮で構成されており,円柱上皮細胞(吸収細胞)の間に
  杯細胞が散在している。
吸収細胞は背の高い円柱状の細胞で,卵円形の核は基底部に位置している。
吸収細胞の内腔面には小突起(微絨毛)が密生しており,刷子縁という。
刷子縁は消化吸収に重要な酵素の豊富な糖蛋白に覆われている。
粘膜表面積は輪状ヒダ,絨毛,微絨毛によって600倍にも拡大されている。
杯細胞の頂部の細胞質には粘液性の分泌顆粒が充満しており,核は基底部に
  位置している。
杯細胞は粘液を分泌し粘膜を潤滑にし,また消化酵素などから粘膜を保護する。
小腸壁-腸腺 
粘膜固有層:疎性結合組織の薄い層で,毛細血管,リンパ管,神経などが
  豊富にあり,他に平滑筋細胞やマクロファージ,リンパ細胞,ブラズマ細胞,
  肥満細胞,好酸球などの細胞が散在している。
腸絨毛の固有層には中心乳糜管と豊富な毛細血管網があり,円柱上皮細胞に
  より吸収された葡萄糖とアミノ酸は血管網に,脂肪はリンパ管に吸収される。
粘膜固有層には多数の腸腺(リーバーキューン腺)があり,絨毛間の陥凹部に
  開口している。
腸腺(腸陰窩)は絨毛間の粘膜上皮が粘膜固有層に陥入して形成された
  単純管状腺で,円柱上皮細胞,杯細胞,再生細胞,パネート細胞及び
  内分泌細胞で構成されている。
絨毛&腸腺 
再生細胞:腸腺底部に増殖細胞帯があり,分裂増殖されて細胞は約2日の寿命で
  小腸内腔に脱落していく。
パネート細胞:腸腺の底部にあり,抗菌物質(デフェンシン,リゾチームなど)を
  分泌する。
内分泌細胞:腸腺の底部に散在しており,消化管ホルモンを分泌する。
EC細胞:セロトニン(5-HT)を分泌する。
M細胞:コレシストキニン(縮胆嚢素-促膵液分泌素)を分泌する。
L細胞:エンテログルカゴン(腸高血糖素),インクレチン(GLP-1)を分泌する。
K細胞:インクレチン(GIP胃抑制ペプチド)を分泌し,胃の運動を抑制するとともに
  インスリンの分泌を促進する。
D細胞:ソマトスタチン【生長激素釈放抑制激素】を分泌する。
S細胞:セクレチン(膵泌素)を分泌し,膵液の分泌を促進するとともに
  胃酸の分泌を抑制する。 
粘膜固有層には多数の孤立リンパ小節や集合リンパ小節が存在する。
集合リンパ小節は粘膜筋板を貫いて,粘膜下層にまではみ出している。
粘膜筋板:内輪・外縦の2層平滑筋からなり,一部は絨毛の中に入り込んで,
  腸腺の分泌に関与する。
絨毛&十二指腸腺
✤粘膜下層:疎性結合組織で,太い血管やリンパ管,神経叢を含んでいる。
十二指腸の粘膜下層には十二指腸腺(ブルンネル腺)があり,その導管は
  粘膜筋板を貫いて腸腺の底部に開口する。
十二指腸腺の一部は絨毛上に導管を伸ばすようにして直接十二指腸管腔に
  開口する。
十二指腸腺は粘度の高いアルカリ性の粘液を分泌し,胃酸を中和し腸壁を
  保護しるとともに胆汁と膵液が働きやすい環境にする。
十二指腸腺はストレスが強い時などに交感神経の働きで分泌が抑制され,
  十二指腸潰瘍の原因になる。
✤筋層:内輪状筋,外縦走筋の2層平滑筋で構成されており,筋層間には
  アウエルバッハ神経叢がある。
十二指腸-筋層 
✤外膜:十二指腸の前面と空腸及び回腸は漿膜に覆われている。
十二指腸の後面は疎性結合組織によって後腹壁に癒着している。
十二指腸の動脈:主に上膵十二指腸動脈と下膵十二指腸動脈から来る。
上膵十二指腸動脈は胃十二指腸動脈から起こり,前上膵十二指腸動脈と
  後上膵十二指腸動脈に分かれ,膵頭右縁の前面と後面に沿って下行する。
下膵十二指腸動脈は上腸間膜動脈から起こり,前下膵十二指腸動脈と
  後下膵十二指腸動脈に分かれ,膵頭右縁の前面と後面に沿って上行する。
十二指腸-動脈-1 
前上膵十二指腸動脈と前下膵十二指腸動脈は膵前アーケードを形成する。
後上膵十二指腸動脈と後下膵十二指腸動脈は膵後アーケードを形成する。
膵前・膵後アーケードは多数の小枝を出し,十二指腸と膵頭部を栄養する。
十二指腸の動脈-後面 
✤十二指腸の静脈:ほぼ同名の動脈に伴行し,直接或は上腸間膜静脈を経由して
  門脈に流入する。
✤十二指腸のリンパ管は主に前・後膵十二指腸リンパ節に流入し,
  その輸出リンパ管は幽門リンパ節と上腸間膜リンパ節に流入する。
✤十二指腸の神経は主に上腸間膜神経叢肝神経叢腹腔神経叢から来る。
空腸・回腸の動脈上腸間膜動脈の分枝である空腸・回腸動脈から来る。
小腸の動脈 
空・回腸の静脈:同名の動脈に伴行し,上腸間膜静脈を経由して門脈に流入する。
小腸の静脈 
✤空腸・回腸のリンパ管は腸絨毛の中心乳糜管から起こり,粘膜下層で
  リンパ管網を 形成する。
粘膜下層でリンパ管網から出るリンパ管は腸間膜リンパ節に流入し,
  その輸出リンパ管は上腸間膜リンパ節に流入する。
✤空腸・回腸の神経腹腔神経叢から来る交感神経線維と迷走神経から来る
  副交感神経線維は上腸間膜動脈の壁上で上腸間膜神経叢を作りつつ,
  動脈と伴に枝分かれ空腸と回腸に分布する。