酵素

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ここに概要や目的

目次

使い方

このテンプレートを使うには、以下のテキストをコピーし、記事の一番上に貼りつけて下さい。 そしてできるだけ多くの項目を入力して下さい。但し、入力できていない項目があっても構いません。 但しリンクの多くはEC番号に基づいて生成されているので、EC番号については値を入力しておく方がいいでしょう。 例えば、3β-ヒドロキシ-Δ5-ステロイドデヒドロゲナーゼでは入力済みテンプレートが使われています。

{{enzyme
| Name = 
| EC_number = 
| CAS_number = 
| IUBMB_EC_number = 
| GO_code = 
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}}

引数

酵素名

この項目には、受け入れられているこの酵素クラスの名前の一覧を記載します。国際生化学・分子生物学連合 (IUBMB) の酵素委員会による命名に基づいた名前であるのが理想的です(IUBMBのサイトも参照下さい)。

EC番号

EC番号IUBMB酵素委員会によって開発された、酵素の分類を数値で表した分類体系です(再度IUBMBのサイトも参照下さい)。

CAS番号

CAS登録番号は数値で表された化学物質を特定する固有の値です。

IUBMB_EC番号

EC番号とほぼ同じですが、区切り文字がピリオドではなくスラッシュが使われたものです(例:1.1.1.1 1/1/1/1

GOコード

酵素反応に対応する遺伝子オントロジーGO)コードで、遺伝子オントロジーのウェブサイトから得るのが理想的です。

画像

分子の3次元構造を2次元的に見た様子を示した画像を指定します。通常PDBファイルから生成されるものです。この画像を指定した場合、キャプションパラメータを使って、画像を生成するのに使われた構造を明示することができます。できれば{{PDBj}}テンプレートを用いて下さい。また画像を指定した場合、任意で画像の幅を指定することもできます(指定がない場合の既定値は220px)。

右に示した酵素テンプレートによって生成される情報BOXの記述方法を以下に示します。

アルコール脱水素酵素

識別子

EC番号

1.1.1.1

CAS登録番号

9031-72-5

データベース

IntEnz

IntEnz view

BRENDA英語版

BRENDA entry

ExPASy

NiceZyme view

KEGG

KEGG entry

MetaCyc

metabolic pathway

PRIAM

profile

PDB構造

RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum

遺伝子オントロジー

AmiGO / EGO

{{enzyme 
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関連項目

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酵素

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/78/Purine_Nucleoside_Phosphorylase.jpg/220px-Purine_Nucleoside_Phosphorylase.jpg

核酸塩基代謝に関与するプリンヌクレオシドフォスフォリラーゼの構造(リボン図)
研究者は基質特異性を考察するときに酵素構造を抽象化したリボン図を利用する。

酵素(こうそ、: enzyme)とは、生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子である。酵素によって触媒される反応を“酵素的”反応という。このことについて酵素の構造や反応機構を研究する古典的な学問領域が、酵素学 (こうそがく、: enzymology)である。








目次

 [非表示

1概要

2役割

3発見

3.1鍵と鍵穴説

3.2酵素の実体の発見

3.3酵素と分子細胞生物学

4特性

4.1基質特異性

4.1.1誘導適合

4.2反応特異性

4.3酵素作用の失活

5分類

5.1所在による分類

5.1.1膜酵素

5.1.2可溶型酵素

5.1.2.1分泌型酵素

5.2系統的分類

5.2.1命名法

6構成

6.1補欠分子族

6.2補酵素

6.3サブユニットとアイソザイム

6.4複合酵素

7生化学

7.1酵素反応速度

7.1.1酵素反応の定式化

7.1.2阻害様式と酵素反応速度

7.1.3酵素反応の活性化エネルギー

7.2反応機構モデル

7.2.1遷移状態と抗体酵素

7.3酵素反応の調節機構

8酵素が働く条件

8.1最適pH

8.2最適温度

8.3基質の濃度

8.4酵素の濃度

9利用

9.1食品

9.2健康食品を標榜する製品

9.3日用品

9.4医療

9.5工業利用の技術(固定化酵素)

9.6バイオセンサー

10生命の起源と酵素

11人工酵素

12代表的な酵素の一覧

13酵素に関する年表

14脚注

15関連項目

 

概要

酵素は生物が物質消化する段階から吸収分布代謝排泄に至るまでのあらゆる過程(ADME)に関与しており、生体が物質を変化させて利用するのに欠かせない。したがって、酵素は生化学研究における一大分野であり、早い段階から研究対象になっている。

多くの酵素は生体内で作り出されるタンパク質を基にして構成されている。したがって、生体内での生成や分布の特性、pH によって変性して活性を失う(失活)といった特性などは、他のタンパク質と同様である。

生体を機関に例えると、核酸塩基配列が表すゲノム設計図に相当するのに対して、生体内における酵素は組立て工具に相当する。酵素の特徴である作用する物質(基質)をえり好みする性質(基質特異性)と目的の反応だけを進行させる性質(反応選択性)などによって、生命維持に必要なさまざまな化学変化を起こさせるのである。

古来から人類は発酵という形で酵素を利用してきた。今日では、酵素の利用は食品製造だけにとどまらず、化学工業製品の製造や日用品の機能向上など、広い分野に応用されている。医療においても、酵素量を検査して診断したり、酵素作用を調節する治療薬を用いるなど、酵素が深く関っている。

役割

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0d/Metabolism_790px.png/220px-Metabolism_790px.png

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a0/A_thaliana_metabolic_network.png/220px-A_thaliana_metabolic_network.png

細胞内の主要代謝経路

細胞呼吸における酵素の調節機構(上の経路図の緑・紫矢印部分だけ)

赤点が酵素、黒線が調節機構を表す。丸く配置された赤点がTCAサイクルである。

生体内での酵素の役割は、生命を構成する有機化合物無機化合物を取り込み、必要な化学反応を引き起こすことにある。生命現象は多くの代謝経路を含み、それぞれの代謝経路は多段階の化学反応からなっている。

小さな細胞内では、その中で起こるさまざまな化学反応を担当する形で多くの種類の酵素がはたらいている。それぞれの酵素は自分の形に合った特定の原料化合物(基質)を外から取り込み、担当する化学反応を触媒し、生成物を外へと放出する。そして再び次の反応のために別の基質を取り込む。

ここで放出された生成物は、別の化学反応を担当する酵素の作用を受けて、さらに別の生体物質へと代謝されていく。その繰返しで酵素の触媒反応は進行し、生命活動が維持されていく。

生体内では化学工業のプラントのように基質と生成物の容器が隔てられているわけではなく、さまざまな物質が渾然一体となって存在している。しかし、生命現象をつくる代謝経路でいろいろな化合物が無秩序に反応してしまっては生命活動は維持できない。

したがって酵素は、生体内の物質の中から作用するべき物を選び出さなければならない。また、反応で余分な物を作り出してしまうと周囲に悪影響を及ぼしかねないので、ある基質に対して起こす反応は1通りでなければならない。酵素は生体内の化学反応を秩序立てて進めるために、このように高度な基質選択性と反応選択性を持つ。

さらにアロステリズム阻害などによって化学反応の進行を周りから制御する機構を備えた酵素もある。それらの選択性や制御性を持つことで、酵素は渾然とした細胞内で必要なときに必要な原料を選択し、目的の生成物だけを産生するのである。

このように、細胞よりも小さいスケールで組織的な作用をするのが酵素の役割である。人間が有史以前から利用していた発酵も細胞内外で起こる酵素反応の一種である。

発見

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/66/Salivary_alpha-amylase_1SMD.png/220px-Salivary_alpha-amylase_1SMD.png

ヒトの唾液に含まれるアミラーゼ(リボン図)。薄黄はカルシウムイオン、黄緑は塩化物イオン

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b2/Eduardbuchner.jpg/220px-Eduardbuchner.jpg

エドゥアルト・ブフナー
ノーベル化学賞

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/e0/Hermann_Emil_Fischer_c1895.jpg/220px-Hermann_Emil_Fischer_c1895.jpg

エミール・フィッシャー

最初に発見された酵素はジアスターゼアミラーゼ)であり、1832A・パヤンJF・ペルソ (Jean Francois Persoz) によるものである。命名も彼らが行った[1]。彼らは翌1833には麦芽の無細胞抽出液によるでんぷんの糖化を発見し、生命(細胞)が存在しなくても、発酵のプロセスの一部が進行することを初めて発見した。

また、1836にはT・シュワンによって、胃液中にタンパク質分解酵素のペプシンが発見・命名されている[2]。この頃の酵素は生体から抽出されたまま、実体不明の因子として分離・発見されている。

「酵素 (enzyme)」という語は酵母の中 (in yeast) という意味のギリシア語の "εν ζυμη"(en zymi) に由来し、1878ドイツウィルヘルム・キューネによって命名された[3]

19世紀当時、ルイ・パスツールによって、生命は自然発生せず、生命がないところでは発酵(腐敗)現象が起こらないことが示されていた。したがって「有機物は生命の助けを借りなければ作ることができない」とする生気説が広く信じられており、酵素作用が生命から切り離すことができる化学反応(生化学反応)のひとつにすぎないということは画期的な発見であった。

しかし、酵素は生物から抽出するしか方法がなく、微生物と同様に加熱すると失活する性質を持っていたので、その現象は酵素が引き起こしているのか、それとも目に見えない生命(細胞)が混入して引き起こしているのかを区別することは困難であった。

したがって、酵素が生化学反応を起こすという考え方はすぐには受け入れられなかった。当時のヨーロッパの学会では、酵素の存在を否定するパスツールらの生気説派と酵素の存在を認めるユストゥス・フォン・リービッヒらの発酵素説派とに分かれて論争が続いた。

最終的には、1896エドゥアルト・ブフナーが酵母の無細胞抽出物を用いてアルコール発酵を達成したことによって生気説は完全に否定され、酵素の存在が認知された[4]

鍵と鍵穴説

上述したように、19世紀後半にはまだ酵素は生物から抽出される実体不明の因子と考えられていたが、酵素の性質に関する研究は進んだ。その研究の早い段階で、酵素の特徴として基質特異性と反応特異性が認識されていた。

これを概念モデルとして集大成したのが、1894ドイツエミール・フィッシャーが発表した鍵と鍵穴説である[5]。これは、基質の形状と酵素のある部分の形状が鍵穴の関係にあり、形の似ていない物質は触媒されない、と酵素の特徴を概念的に表した説である。

現在でも酵素の反応素過程のモデルとして十分に通用する。ただし、フィッシャーはこのモデルの実体が何であるかについては科学的な実証を行っていない。

酵素の実体の発見

1926ジェームズ・サムナーナタマメウレアーゼ結晶化に成功し、初めて酵素の実体を発見した[6]。サムナーは自らが発見した酵素ウレアーゼはタンパク質であると提唱したが、当時サムナーが研究後進国の米国で研究していたこともあり、酵素の実体がタンパク質であるという事実はなかなか認められなかった。

その後、タンパク質からなる酵素が次々と発見され、酵素の実体がタンパク質であるということが広く認められるようになった。

酵素と分子細胞生物学

20世紀後半になると、X線回折を初めとした生体分子の分離・分析技術が向上し、生命現象を分子の構造が引き起す機能として理解する分子生物学と、細胞内の現象を細胞小器官の機能とそれに関係する生体分子の挙動として理解する細胞生物学が成立した。これらの学問によってさらに酵素研究が進展する。すなわち、酵素の機能や性質が、酵素や酵素を形成するタンパク質の構造やそのコンホメーション変化によって説明付けられるようになった。

酵素の機能がタンパク質の構造に起因するものであれば、何らかの酵素に適した構造をもつものは酵素としての機能を発現しうると考えることができる。実際に、1986にはトーマス・チェックらが、タンパク質以外で初めて酵素作用を示す物質(リボザイム)を発見している[7]

今日においては、この酵素の構造論と機能論に基づいて人工的な触媒作用を持つ超分子(人工酵素)を設計し開発する研究も進められている[8][9][10]

特性

酵素は生体内での代謝経路のそれぞれの生化学反応を担当するために、有機化学で使用されるいわゆる触媒とは異なる基質特異性反応特異性などの機能上の特性を持つ。

また、酵素はタンパク質をもとに構成されているので、他のタンパク質と同様に失活の特性、すなわち熱や pH によって変性し活性を失う特性を持つ。次に酵素に共通の特性である基質特異性、反応特異性、および失活について説明する。

基質特異性

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/a/ae/%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3_%E3%83%9A%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3.gif/220px-%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3_%E3%83%9A%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%B3.gif

基質に結合する酵素

詳細は「基質特異性」を参照

酵素は作用する物質を選択する能力を持ち、その特性を基質特異性 (substrate specificity) と呼ぶ。

たとえば、酵素(ペプチターゼ;ペプチド分解酵素)を作用させてタンパク質を分解する場合は、特定の場所のペプチドを加水分解したり、場合によっては基質として認識せずに全く作用しない場合もある。

一方、タンパク質を(酵素ではなく)酸触媒で加水分解する場合は、ペプチド結合の任意の箇所に作用するので、いろいろな長さのアミノ酸配列のペプチドやアミノ酸が生成されることになる。また、ペプチド分解酵素はペプチド結合だけに反応し、他の結合(エステルやグリコシド結合)には作用しないが、酸触媒ならばペプチド結合も他の結合も区別することなく同じように分解する。

この特性は酵素研究のごく初期から認識されており、鍵穴に喩えたモデルで説明されていた。20世紀中頃以降、X線結晶解析で酵素分子の立体構造が特定できるようになり、鍵穴の仕組みの手掛かりが入手できるようになった。

すなわち、酵素であるタンパク質の立体構造には様々な大きさや形状の窪みが存在し、それはタンパク質の一次配列(アミノ酸の配列順序)に応じて決定付けられている。前述の鍵穴はまさにタンパク質立体構造のくぼみ(クラフト)である。酵素は、くぼみに合った基質だけをくぼみの奥に存在する酵素の活性中心へ導くことで、酵素作用を発現する。

今日では、X線結晶解析によって立体構造を決定しなくても、過去の知見や計算機化学に基づき、タンパク質の一次配列情報やその設計図となる遺伝子の塩基配列情報から立体構造を予測することが可能になりつつある。さらに、生物界に存在しないタンパク質酵素を設計することも可能であるし、タンパク質以外の物質で同様な手法によって人工酵素を設計することも可能である。

生物界に存在する酵素に適合する基質を設計すると、逆に各種酵素の阻害剤を作ることも可能となった。酵素や阻害剤が設計できるようになったことは、医薬品分子生物学研究の発展に役立っている。

誘導適合

詳細は「誘導適合」を参照

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/c/cf/%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3_%E9%85%B5%E7%B4%A0%E8%AA%98%E5%B0%8E%E9%81%A9%E5%90%88.png/220px-%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3_%E9%85%B5%E7%B4%A0%E8%AA%98%E5%B0%8E%E9%81%A9%E5%90%88.png

基質に結合することで誘導適合する酵素

基質の結合した酵素は、それが結合していない酵素よりもエントロピーが減少していると考えられており、事実、基質を結合させた酵素はあらゆるストレス(熱や pH の変化など)に対して安定である。これは酵素の立体構造変化が起きているからであると考えられている。

すなわち、基質が結合すると酵素が触媒反応に適した形状に変化すると考えられている。そして酵素の立体構造変化に従い、基質の立体構造も変化し遷移状態へと向かう。すると、遷移状態に向かう反応の過程がエントロピーの減少とともに促進されることによって、反応の活性化エネルギーを低下させていると考えられている。これらの誘導的な化学反応を生じる考え方を誘導適合という。

誘導適合は基質特性を発現する上でも重要であるが、酵素活性発現とも関連し、アロステリック効果などを通じて酵素活性の制御とも関連している。

反応特異性

生体内ではある1つの基質に着目しても、作用する酵素が違えば生成物も変わってくる。通常、酵素は1つの化学反応しか触媒しない性質を持ち、これを酵素の反応特異性と呼ぶ。

酵素が反応特異性を持つので、消化酵素などいくつかの例外を除けば、通常1つの酵素は生体内の複雑な代謝経路の1か所だけを担当している。これは、生体を恒常的に維持するための重要な性質である。

まず、ある代謝経路が存在するかどうかは、その代謝経路を担当する固有の酵素が存在するかどうかに左右されるので、その酵素タンパク質を産生する遺伝子発現によって制御できる。また、代謝生産物の1つが過剰になった場合、その代謝経路を担当する固有の酵素の活性にフィードバック阻害が起こるので、過剰な生産が動的に制御される。

酵素はそれぞれに固有の基質と生化学反応を担当するが、同じ生体内でも組織や細胞の種類が異なると、別種の酵素が同じ基質の同じ生化学反応を担当する場合がある。このような関係の酵素を互いにアイソザイム (isozyme) と呼ぶ。

酵素作用の失活

酵素が役割を果たすとき、またはその活性を失う原因には、酵素を構成するタンパク質の立体構造(コンホメーション)が深く関与している。失活の原因となる要因としては、pH、塩濃度、溶媒、他の酵素による作用などが知られている。

タンパク質は熱、pH、塩濃度、溶媒など置かれた条件の違いによって容易に立体構造を替えるが、条件が大きく変わると立体構造が不可逆的に大きく変わり、酵素の場合は失活することもある。場合によっては、汚染した微生物が発生するペプチダーゼなどの消化酵素によってタンパク質の構造が失われて失活することもある。

したがって、酵素反応は至適温度・至適pH や水溶媒など条件が限定される。

ただし、生物多様性は非常に広いので、好熱菌好酸性菌好アルカリ菌などのもつ酵素(イクストリーモザイム)のように、極端な温度や pH に耐えうるとされるものもあり、こうした極限環境微生物の応用から酵素の工業利用が現実的になり始めている。

分類

酵素の分類方法はいくつかあるが、ここでは酵素の所在による分類と、基質と酵素反応の種類(基質特異性と反応特異性の違い)による系統的分類を取り上げる。後者による分類は酵素の命名法と関連している。

所在による分類

酵素は生物体内における反応のすべてを起こしているといって過言ではない。したがって、代謝反応の関与する生物体内であれば普遍的に存在している。酵素は、生体膜(細胞膜や細胞小器官の膜)に結合している膜酵素と、細胞質や細胞外に存在する可溶型酵素とに分類される。可溶型酵素のうち、細胞外に分泌される酵素を特に分泌型酵素と呼ぶ。

このような酵素の種類の違いは、酵素以外のタンパク質の種類の違い(膜タンパク質、分泌型タンパク質)と同様に、立体構造における疎水性側鎖と親水性側鎖の一次構造上の分布(タンパク質配列のモチーフ)の違いによる。他のタンパク質と同様に酵素も細胞内のリボゾームで生合成されるが、モチーフは遺伝子に依存するので、その構造には酵素の進化を反映している。遺伝的に近隣の酵素は類似のモチーフを持ち、酵素群のグループを形成する。

膜酵素

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/82/Cell_membrane_scheme.png/220px-Cell_membrane_scheme.png

膜酵素の模式図
左から埋没型、貫通型、付着型

生体膜に存在する膜酵素はエネルギー保存や物質輸送に関与するものも多く、生体膜の機能を担う重要な酵素群(ATPアーゼATP合成酵素呼吸鎖複合体バクテリオロドプシンなど)が多い。生体膜と酵素との位置関係によって3種類に大分できる:

生体膜は内部が水性で外部が親水性なので(=脂質二重膜と呼ばれる)、膜酵素であるタンパク質の部分構造(側鎖)の性質も、膜に接しているところは疎水性が強くて膜脂質への親和性が極めて高く、膜から突出しているところは親水性が強くなっている。

可溶型酵素

細胞質に存在している酵素は、水によく溶ける。細胞質での代謝にはこの可溶性酵素が多く関わっている。可溶性酵素は、外部には親水性アミノ酸、内部には疎水性アミノ酸が集まって、球形の立体構造を採っている場合が多い。

分泌型酵素

酵素は細胞内で産生されるが、産生後に細胞外に分泌されるものもあり、分泌型酵素と呼ばれる。消化酵素が代表例であり、細胞外に存在する物質を取り込みやすいように消化するために分泌される。その形状は可溶性酵素と同じく球形をしている場合が多い。

生物に対して何らかの刺激(熱、pH、圧力などの変化)を与えると、その刺激に対してエキソサイトーシスと呼ばれる分泌形態で分泌型酵素を放出する現象が見られる場合がある。構造生物学の進歩において、最初に結晶化され立体構造が決定されていった酵素の多くは分泌型酵素であった。

系統的分類

詳細は「EC番号」を参照

酵素を反応特異性と基質特異性の違いによって分類すると、系統的な分類が可能となる。このような系統的分類を表す記号として、EC番号がある。

EC番号は "EC"[11]に続けた4個の番号 "EC X.X.X.X"Xは数字)によって表し、数字の左から右にかけて分類が細かくなっていく。EC番号では、まず反応特異性を、酸化還元反応、転移反応、加水分解反応、解離反応、異性化反応、ATP の補助を伴う合成の6つのグループに分類する。

EC 1.X.X.X 酸化還元酵素

EC 2.X.X.X 転移酵素

EC 3.X.X.X 加水分解酵素

EC 4.X.X.X リアーゼ

EC 5.X.X.X 異性化酵素

EC 6.X.X.X リガーゼ

さらに各グループで分類基準は異なるが、反応特異性と基質特異性との違いとで細分化していく。すべての酵素についてこの EC番号が割り振られており、現在約 3,000 種類ほどの反応が見つかっている[12]

またある活性を担う酵素が他の活性を持つことも多く、ATPアーゼなどは ATP加水分解反応のほかにタンパク質の加水分解反応への活性も持っている(EC番号酸化還元酵素転移酵素加水分解酵素リアーゼ異性化酵素リガーゼなどを参照)。

命名法

酵素の名前は国際生化学連合の酵素委員会によって命名され、同時に EC番号が与えられる。酵素の名称には「常用名」と「系統名」が付される。常用名と系統名の違いについて例を挙げながら説明する:

(例)次の酵素は同一の酵素(EC番号=EC 1.1.1.1

  • 系統名 — アルコール:NAD+ オキシドレダクターゼ(酸化還元酵素)

基質分子の名称(複数の場合は併記)と反応の名称を連結して命名される。系統名における反応の名称には規制がある。

系統名と同じ規則で命名されるが、基質の一部を省略して短縮されたりしている。また、命名規則に従わない酵素も多く、DNAポリメラーゼなどはその一つである。

古くに発見され命名された酵素については、上述の規則ではなく当時の名称がそのまま使用されている。

ペプシントリプシンキモトリプシンカタラーゼ

などがこれに当たる。

構成

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/8/83/%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3_%E9%85%B5%E7%B4%A0%E3%81%A8%E8%A3%9C%E5%9B%A0%E5%AD%90.png/220px-%E8%AA%AC%E6%98%8E%E5%9B%B3_%E9%85%B5%E7%B4%A0%E3%81%A8%E8%A3%9C%E5%9B%A0%E5%AD%90.png

酵素と補因子の関係

RNA を除いて、酵素はタンパク質から構成されるが、タンパク質だけで構成される場合もあれば、非タンパク質性の構成要素(補因子)を含む場合(複合たんぱく質)もある。酵素が複合タンパク質の場合、補因子と結合していないと活性が発現しない。このとき、補因子以外のタンパク質部分をアポ酵素、アポ酵素と補因子とが結合した酵素をホロ酵素という。以下では、特に断らない限り、たんぱく質以外の、金属を組み込んでいない有機化合物を単に有機化合物と呼称する。

補因子の例としては、無機イオン、有機化合物(補酵素)があり、金属含有有機化合物のこともある。いくつかのビタミンは補酵素であることが知られている[13]。補因子は酵素との結合の強弱で分類されるが、その境界は曖昧である。

また、酵素を構成するタンパク質鎖(ペプチド鎖)は複数本であったり、複数種類であったりする場合がある。複数本のペプチド鎖から構成される場合、立体構造をもつそれぞれのペプチド鎖をサブユニットと呼ぶ。

補欠分子族

詳細は「補因子」を参照

酵素と必須元素[14][15]

元素名

酵素名

シトクロームcオキシダーゼ (E.C. 1.9.3.1[16])、コレステロールモノオキシゲナーゼ(E.C. 1.14.15.6)、リボヌクレオシド二リン酸レダクターゼE.C. 1.17.4.1[16]、アコニターゼ(E.C. 4.2.1.3[16])

亜鉛

DNAポリメラーゼ (E.C. 2.7.7.7[16])RNAポリメラーゼ(E.C. 2.7.7.6[16])カルボネートデヒドラターゼ (E.C. 4.2.1.1,)、アルカリホスファターゼ (E.C. 3.1.3.1[16])、アルドラーゼ(E.C. 4.2.1.1)、カルボキシペプチダーゼA/B(E.C. 3.4.17.1/2)、ロイシンアミノペプチダーゼ (E.C. 3.4.11.1[16])アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.1.1.1[16])

元素名

酵素名

L-アスコルビン酸オキシダーゼ(E.C. 1.10.3.3[16])ラッカーゼ(E.C. 1.10.3.2[16])、モノフェノールモノオキシゲナーゼ(E.C. 1.14.18.1[16])、カテコールオキシダーゼ (E.C. 1.10.3.2[16])

カルシウム

カルパイン (E.C. 3.4.22.17[16])

マンガン

スーパーオキシドディスムターゼ(E.C. 1.15.1.1[16])

モリブデン

キサンチンオキシダーゼ (E.C. 1.1.3.22[16])、亜硫酸オキシダーゼ(E.C. 1.8.3.1[16])、ニトロゲナーゼ(E.C. 1.18.6.1[16])

コバルト

ビタミンB12レダクターゼ(E.C. 1.6.99.9)

ニッケル

ウレアーゼ(E.C. 3.5.1.5[16])

セレン

グルタチオンペルオキシダーゼ(E.C. 1.11.1.9[16])

強固な結合や共有結合をしている補因子を補欠分子族(ほけつぶんしぞく、prosthetic group)という。補欠分子族は有機化合物のこともあるが、酵素から遊離しうる補因子を補欠分子族と区別して、補酵素と呼ぶ。

カタラーゼP450などの活性中心に存在するヘム鉄などが代表的な補欠分子族である。金属プロテアーゼの亜鉛イオンなど、直接タンパク質と結合していることもある。生体が要求する微量金属元素は、補欠分子族として酵素に組み込まれていることが多い。

補酵素

詳細は「補酵素」を参照

有機化合物の補因子を補酵素という。遊離しない場合は補欠分子族という。アポ酵素との結合が弱い、有機化合物の補欠分子族を補酵素とし、補酵素は補欠分子族の一種と捉える考えもある[17]。とはいえ、たとえば、酵素と共有結合していても遊離しうるリポ酸が補酵素と区別されるなど、補酵素であるか補欠分子族であるかの基準は厳密ではない。

補酵素は、常時酵素の構造に組み込まれていないが、酵素反応が生じる際に基質と共存することが必要とされる。酵素活性のときに取り込まれ、ホロ酵素を生じさせる。したがって、酵素反応の進行によって基質とともに消費され、典型的な補欠分子族とは異なる[18]

酵素タンパク質が熱によって変性し失活するのに対して、補酵素は耐熱性を示し、かつ透析によって酵素タンパク質から分離することが可能なので、補因子として早い時期からその存在が知られていた。1931年にはオットー・ワールブルクによって初めて補酵素が発見されている。ビタミンあるいはビタミンの代謝物に補酵素となるものが多い。

NADNADPFMNFADチアミン二リン酸ピリドキサールリン酸補酵素Aα-リポ酸葉酸などが代表的な補酵素であり、サプリメントとして健康食品に利用されるものも多い。

サブユニットとアイソザイム

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/f/f7/1UPM_fill.png/220px-1UPM_fill.png

ホウレンソウRubisCOは大サブユニットと小サブユニットのヘテロダイマーの8量体で構成される。(サブユニットごとに色分け)

酵素が複数のペプチド鎖(タンパク質鎖)から構成されることがある。その場合、各ペプチド鎖はそれぞれ固有の三次構造(立体構造)をとり、サブユニットと呼ばれる。サブユニット構成を酵素の四次構造と呼ぶこともある。

ヒト乳酸デヒドロゲナーゼと
アイソザイムタイプ

アイソザイムタイプ

サブユニット構成

組織分布

LD1

H4

心臓

LD2

H3M

骨格筋
・横隔膜
・腎臓など

LD3

H2M2

LD4

HM3

LD5

M4

肝臓

例えばヒトにおける乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH; E.C. 1.1.1.27) 4つのサブユニットから構成される四量体だが、体内組織の位置によってサブユニット構成が異なることが知られている。この場合、サブユニットは心筋型 (H[16]) と骨格筋型 (M[16]) 2種類であり、そのいずれか4つが組み合わされて乳酸デヒドロゲナーゼが構成される(例えば H2 個と M2 個から構成される H2M2 など)。したがって5タイプの乳酸デヒドロゲナーゼが存在するが、これらは同じ基質で同じ生化学反応を担当するアイソザイムの関係にある。これを応用すると、例えば臨床検査で乳酸デヒドロゲナーゼのアイソザイムタイプを同定(電気泳動で同定できる)して、疾患が肝炎であるか心筋疾患であるかを識別することができる。

なお、ここに示した以外の要因(遺伝子変異による一次構造の変化など)によってアイソザイムとなることもある。

複合酵素

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複合酵素の模式図
脂肪酸生成系

一連の代謝過程を担当する複数の酵素がクラスターを形成して複合酵素となることも多い。

代表例として脂肪酸合成系の複合酵素を示す。これらは [ACP]S-アセチルトランスフェラーゼ (AT; E.C. 2.3.1.38)、マロニルトランスフェラーゼ (MT; E,C.2.3.1.39)3-オキソアシル-ACPシンターゼI (KS)3-オキソアシル-ACPレダクターゼ (KR; E.C. 1.1.1.100)、クロトニル-ACPヒドラターゼ (DH; E.C. 4.2.1.58)、エノイル-ACPレダクターゼ (ER; E.C. 1.3.1.10) 6種類の酵素がアシルキャリアタンパク質 (ACP) と共にクラスターとなって複合酵素を形成している。脂肪酸合成系はほとんどが複合酵素で、単独の酵素はアセチルCoAカルボギラーゼ (TE; E.C. 6.4.1.2) だけである[14]

生化学

酵素反応速度

詳細は「酵素反応速度論」を参照

日本工業規格に「酵素は選択的な触媒作用をもつタンパク質を主成分とする生体高分子物質 (JIS K 3600-1310) と定義されているように触媒として利用されるが、化学工業などで用いられる典型的な金属触媒とは反応の特性が異なる。 第一に酵素反応の場合、基質濃度[S]が高くなると反応速度飽和する現象が見られる。酵素の場合、基質濃度を高く変えると、反応速度は飽和最大速度 Vmax へと至る双曲線を描く。一方、金属触媒の場合、反応初速度 [ν] は触媒濃度に依存せず基質濃度 [S] の一次式で決定される。

これは、酵素と金属触媒との粒子状態の違いによって説明できる。金属触媒の場合、触媒粒子の表面は金属原子で覆われており、無数の触媒部位が存在する。それに対して酵素の場合は、酵素分子が基質に比べて巨大な場合が多く、活性中心を高々1か所程度しかもたない。したがって、金属触媒に比べて、基質と触媒(酵素)とが衝突しても(活性中心に適合し)反応を起こす頻度が小さい。そして基質濃度が高まると、少ない酵素の活性中心を基質が取り合うようになるので、飽和現象が生じる。このように酵素反応では、酵素と基質が組み合った基質複合体を作る過程が反応速度を決める律速過程になっていると考えられる。

酵素反応の定式化

詳細は「酵素反応#酵素反応の定式化」を参照

1913L・ミカエリスM・メンテンは酵素によるショ糖の加水分解反応を測定し、「鍵と鍵穴」モデルと実験結果から酵素基質複合体モデルを導き出し、酵素反応を定式化した。このモデルによると、酵素は次のように示される。

酵素 (E) + 基質 (S) {\displaystyle \rightleftarrows } \rightleftarrows 酵素基質複合体 (ES) → 酵素 (E) + 生産物 (P)

すなわち、酵素反応は、酵素と基質が一時的に結びついて酵素基質複合体を形成する第1の過程と、酵素基質複合体が酵素と生産物とに分離する第2の過程とに分けられる。

極めて分子活性の高い酵素に炭酸脱水酵素があるが、この酵素は1秒当たり百万個の二酸化炭素炭酸イオンに変化させる (kcat = 106s1)

阻害様式と酵素反応速度

酵素の反応速度曲線を、阻害剤のない原系を青線、阻害剤の存在する系を赤線で示す

詳細は「酵素反応#阻害様式と酵素反応速度」を参照

酵素の反応速度は、基質と構造の似た分子の存在や、後述のアロステリック効果によって影響を受ける(阻害される)。阻害作用の種類によって、酵素の反応速度の応答の様式(阻害様式)が変わる。そこで、反応速度や反応速度パラメータを解析して阻害様式を調べることで、逆にどのような阻害作用を受けているかを識別することができる。どのような阻害様式であるかを調べることによって、酵素がどのような調節作用を受けているか類推することができる。医薬品開発では、調節作用を研究することは、酵素作用を制御することによって症状を改善する新たな治療薬の開発に応用されている。

阻害様式は大きく分けると次のように分類される:

酵素反応の活性化エネルギー

触媒の活性化エネルギー比較[19]

反応名

触媒/酵素

エネルギー値
(
cal/mol)[20]

H2O2の分解

(なし)

18,000

白金コロイド

11,000

カタラーゼ
Catalase;

5,000

ショ糖の加水分解

H+

26,500

サッカラーゼ
(酵母)

11,500

カゼイン
の加水分解

HCl aq.

20,000

キモトリプシン
Trypsin

12,000

酢酸エチル
加水分解

H+

13,200

リパーゼ
Lipase;

4,200

一般に化学反応の進行する方向は化学ポテンシャルが小さくなる方向(エネルギーを消費する方向)に進行し、反応速度は反応の活性化エネルギーが高いか否かに大きく左右される(化学平衡反応速度論を参照)。

酵素反応は触媒反応で、化学反応の一種なので、その性質は同様である。ただし、一般に触媒反応は化学反応の中でも活性化エネルギーが低いのが通常であるが、酵素反応の活性化エネルギーは特に低いものが多い。

一般に活性エネルギーが 15,000cal/mol から 10,000cal/mol に低下すると、反応速度定数はおよそ 4.5 × 107 倍になる。

反応機構モデル

詳細は「酵素反応#反応機構モデル」を参照

酵素の基質特異性はなぜ発揮されるのか、活性化エネルギーをいかにして下げるのかなど、無機触媒や塩基触媒などと違う基本的特性を生み出す酵素反応の機構については、いまだ統一的な解答が得られたとはいえない。しかし今日では、構造生物学の発展や組み換えタンパク質作成による変異導入などのテクニックを用いることによって、その片鱗が明らかにされつつある。

タンパク質分解酵素セリンプロテアーゼを例にあげると、基質が酵素に結合することで反応系のエントロピーが減少する働き(エントロピー・トラップ)によって、酵素複合体を形成する。

キモトリプシンの酸塩基触媒部位

結合した基質は、誘導適合によって活性中心に反応に適した状態で固定され生成物へと反応が進行する。ここでは、セリンプロテアーゼの一種であるキモトリプシンの例を示す。

  1. His57 プロトンを負に荷電した Asp102 に譲渡する。
  2. His57 が塩基となり、活性中心の Ser195 からプロトンを奪う。
  3. Ser195 が活性化されて(負に荷電して)基質を攻撃する。
  4. His57 がプロトンを基質に譲渡する
  5. Asp102 から His57 がプロトンを奪い 1. の状態に戻る。

遷移状態と抗体酵素

詳細は「酵素反応#遷移状態と抗体酵素」を参照

酵素反応において、酵素基質複合体から生成物へと変化する過程では、原子間の結合距離や角度などが変形した分子構造となる遷移状態反応中間体を経由する。

言い換えると、化学反応がしやすい分子の形状が遷移状態であり、酵素は酵素基質複合体が誘導適合することでその状態を作り出している。遷移状態は活性ポテンシャルの高い状態に相当するので、少ないエネルギーで反応中間体の状態を乗り越えて生成物へと変化する。

遷移状態を作ることが酵素タンパクの主たる役割だとすれば、結合によって遷移状態を作り出すことができれば酵素になるとも考えられる。

実際に酵素と同じように分子構造を識別し、その分子と結合する生体物質に抗体がある。1986アメリカのトラモンタノらは、酵素と同じ働きをするように意図して製造した抗体が意図どおりの酵素作用を示すことを発見し、抗体酵素 (abzyme) と名づけた。

超分子化合物によって、人工酵素を作り出す研究も成果を上げている。

酵素反応の調節機構

詳細は「酵素反応#酵素反応の調節機構」を参照

生体が酵素活性の大小を制御するには、酵素の量を制御する場合と、酵素の性質を変化させる場合とがある。それらは次のように分類される[21]

  1. 酵素タンパク質の合成量制御による酵素量の増大
  2. 酵素タンパク質が他の生体分子と可逆的に作用することによる酵素活性の変化
  3. 酵素タンパク質が修飾されることによる酵素活性の変化

1.の調整は遺伝子の発現量の転写調節によって実現し、2.3.については酵素の質的な変化であり、1.の転写制御より素早い応答を示す。

2.3.の調節の例として「フィードバック阻害」が挙げられる。フィードバック阻害によって生産物が過剰になると酵素活性が低減し、生産物が減ると酵素活性は復元する。

酵素が働く条件

次の4つに分けられる。

  1. 最適pH
  1. 最適温度
  1. 基質の濃度

酵素の濃度

最適pH

あるpHで酵素の活動が激しくなる。このpH最適pH(optimal pH)という。至適PHともいう。ほとんどの酵素はpH7で活動が最も激しくなる。例外として、胃液の中に含まれるペプシンの最適pH1.5で、トリプシンの最適pHは約8で、アルキナーゼ(en:Arginase)の最適pH9.5である。

最適温度

最適pHと同じように、酵素の活動がもっとも激しくなる温度が存在する。これを最適温度(optimal temperature)という。至適温度ともいう。普通は35Cから40Cである。

基質の濃度

酵素の濃度

利用

酵素は実生活の色々な場面で応用されている。1つは酵素自体を利用するもので、代表的な分野として食品加工業が挙げられる。もう1つは生体がもつ酵素を観測・制御するもので、代表的な分野として医療・製薬業が挙げられる。

食品

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/82/Production_of_cheese_1.jpg/220px-Production_of_cheese_1.jpg

チーズの製造にはレンネットが利用される

人間は有史以前から、保存食などを作り出すために発酵を利用してきた。たとえば、味噌醤油などの発酵食品の製造には、伝統的に麦芽などの生物を利用してきた。

蒸米や蒸麦に種麹を与え、40時間ほどおくと麹菌が増殖し、米麹や麦麹となるが、こうした麹には各種の酵素、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどが蓄積される[22]。発酵とは、これらの酵素が、食品中のタンパク質をペプチドやアミノ酸へと分解して旨味となり、炭水化物を乳酸菌や酵母が利用できる糖へと分解し甘味となり、独特の風味となっていく[22]

今日では、酵素の実体や機能の詳細が判明したので、発酵食品であっても生物を使わずに酵素自体を作用させて製造することもあり、酵素を使って食品の性質を意図したように変化させることが可能になっている。

酵素反応は、一般に流通している加工食品の多くにおいて製造工程中に利用されているほか、でん粉を原料とした各種糖類の製造にも用いられている。また、果汁の清澄化や苦味除去、肉の軟化といった品質改良や、リゾチームによる日持ち向上などにも用いられている。最初に発見された酵素であるジアスターゼはアミラーゼの一種であり、消化剤として用いられる。

酵素の工業利用

目的

たんぱく質
分解

でんぷん類を
分解

セルロース
木質
を分解

成分を変換

その他

酵素名

プロテアーゼ類

アミラーゼ類

セルラーゼ類

イソメラーゼ類

化粧品日用品

アルカリプロテアーゼ
セリンプロテアーゼ

デキストラナーゼ

 

 

 

食品工業

グルタミナーゼ

α-アミラーゼ
β-アミラーゼ
アミロプルラナーゼ
グルコアミラーゼ

ヘミセルラーゼ
アラバナーゼ

イソメラーゼ全般
グルコースイソメラーゼ(転化糖)

 

醸造工業

プロテアーゼ全般

α-アミラーゼ
β-グルカナーゼ

セルラーゼ全般
ヘミセルラーゼ

 

 

飼料

 

α-アミラーゼ

セルラーゼ全般
ヘミセルラーゼ
ペクチナーゼ
フィターゼ

 

 

洗剤
繊維
加工用

アルカリプロテアーゼ

アミロプルラナーゼ

セルラーゼ全般
プロトペクチナーゼ
ペクチナーゼ

 

リパーゼ
(
分分解)
ペルオキシダーゼ
(漂白)

パルプ関連

 

 

キシラナーゼ

 

リパーゼ
(エステル
交換)

以下に挙げるような分野で酵素が使われている。

これらの酵素は生物由来の天然物とされるので、食品関連法規で求められる原材料表示では省略されていることが多い。また、発酵食品を除く加工食品では、酵素は加工助剤として利用するので、製造工程中に失活または除去されて、完成した食品中には存在しない。したがって、これらの酵素は食品添加物とは異なる扱いになっている。

健康食品を標榜する製品

「酵素を含む」として健康効果を謳う製品が多く販売されているが、経口で酵素を摂取した場合に酵素活性に基づく効能が得られる、という科学的根拠はない[23]。肉や魚などのタンパク質を食べると、胃と小腸の管腔内で消化分解され、そのアミノ酸のつながり(タンパク質)が切断される。さらに、小腸粘膜上皮細胞の細胞膜の一部である微絨毛へと移行をし、膜消化を受けなければならない。この微絨毛とは、小腸上皮粘膜細胞1個あたり約600本密生しており、管腔内消化を終えた栄養素は、この部分に存在する膜消化酵素によりアミノ酸一個から、二、三個までの小ささに、細かく切断されてのち、はじめて、小腸上皮細胞内に取り込まれる。それと同じように、タンパク質である酵素も、食べれば体内でアミノ酸単位に分解されないと、吸収されない。つまり、経口で酵素を摂取した場合、「酵素」の形のまま体の中で働くことはない。

日用品

今日では、洗剤化粧品などの日用品に高い付加価値を付けるために酵素が利用される場合が多い。

たとえば洗濯の場合、汗しみや食べ物しみは石鹸だけでは落としにくい。単純な油しみと違って固形物であるタンパク質を含んでおり、しみ成分が固形分と絡まって衣類の繊維に強く接着しているので、界面活性剤だけで洗濯しても汚れを落としきれない。そこで、タンパク質を分解する酵素であるプロテアーゼを含んだ酵素入り洗剤が広く利用されている。

ただし、通常のプロテアーゼは石鹸が溶けたアルカリ性領域では作用しないので、アルカリ性領域で良好に作用する(至適pH を持つ)アルカリプロテアーゼが利用されている。

アルカリプロテアーゼは、1947年にオッテセン (M. Ottesen) らが好アルカリ菌から発見した。今日ではアルカリプロテアーゼは酵素入り洗剤用に大量生産されており、工業製品として生産されるプロテアーゼの60%以上を占めるようになっている[14]

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/06/Papain_cartoon.png/220px-Papain_cartoon.png

パパイヤから得るパパイン(リボン図)

プロテアーゼ以外には、衣類のセルロース繊維を部分的に分解して汚れが拡散しやすいようにするために、セルラーゼを添加している洗剤もある。

同じような例として、食器の洗剤に酵素であるプロテアーゼ(タンパク質汚れ)やリパーゼ(油汚れ)を添加することで汚れ落ちを増強したり、アミラーゼ(澱粉質の糊)を添加することで流水だけで洗浄する自動食器洗浄機でも汚れが落ちるように工夫している例が挙げられる。なお、洗剤用酵素の安全性はよく調べられており、環境中で容易かつ究極的に分解する。[2]

化粧品への酵素の応用例としては、脱毛剤にケラチンを分解する酵素パパインプロテアーゼの一種)を添加することで、皮膚から突出したむだ毛を分解切断する例などがある。

歯磨きへの酵素の応用例として、歯垢に含まれるデキストランを分解する酵素デキストラナーゼを添加している製品がある。

医療

20世紀に入って増大した酵素に対する知見は、医療や治療薬に劇的な改革をもたらした。ヒトの体内で生じている代謝には酵素が関与しているので、酵素の存在量を測定する臨床検査によって疾病を診断することが可能になっている(サブユニットとアイソザイム節の乳酸デヒドロゲナーゼの例を参照)。

また酵素による調節〈ホメオスタシス〉の失調が病気の原因である場合は、酵素活性を抑制する治療薬によって症状を治療することができる。(例:高血圧におけるアンジオテンシン変換酵素阻害薬、糖尿病におけるインクレチン分解酵素を阻害する DPP4 阻害薬など。)

逆に、酵素が欠損する先天性の代謝異常疾患が知られているが、発病前に酵素の量を検査して、発症を抑える治療を行うことができる〈記事 遺伝子疾患に詳しい〉。(例:ゴーシェ病

工業利用の技術(固定化酵素)

製品には含まれなくても、食品工業から香料・医薬品原料などファインケミカルの分野まで多方面の食品原料や化成品の製造に酵素が利用されている。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/37/Two_chemostats.png/220px-Two_chemostats.png

バイオリアクター装置(小型)

たとえば、生体から抽出された酵素を工業化学で利用する際の技術として、酵素の固定化が一般化している。固定化とは、工業用酵素を土台となる物質(担体)に固定して用いる方法である。経済的に生産するためには、逆反応が起こらないように反応系から生成物を効率よく除去する必要がある。しかし、このとき同時に酵素も除去してしまうと、本来は再生・再利用可能な触媒である酵素も使い捨てになってしまう。固定化は、この問題を解決する方法である。

今日では、固定化酵素は、バイオリアクター技術として食品工業から香料・医薬品原料などファインケミカルの分野まで多方面の化成品の製造に利用されている。バイオリアクターは、ポンプで基質(原料)を注入すると同時に生成物を流出させる生産装置であり、酵素を担体とともに柱状の反応装置内に固定することによって、酵素のリサイクルの問題や連続生産による経済性の向上などの問題点を解決している。バイオリアクター用の酵素あるいは酵素を含む微生物の固定化には、紅藻類から単離される多糖類のκ-カラギーナン(食品・化粧品のゲル化剤にも利用される)が汎用される。

世界で初めて固定化酵素を使った工業化に成功したのは千畑一郎、土佐哲也らであり、1967 DEAE-Sepadex担体に固定化したアミノアシラーゼ (E.C. 3.5.1.14) を使って、ラセミ体である N-アシル-DL-アミノ酸の混合物から目的の L-アミノ酸だけを不斉加水分解して光学活性なアミノ酸を得る方法を開発した[14]

バイオセンサー

詳細は「バイオセンサー」を参照

酵素の基質特異性と反応性を利用して化学物質を検出するセンサーが実用化されている。これらは生体由来の機能を利用することからバイオセンサーと呼ばれ、1960年代に研究が始まり1976年にアメリカでグルコースセンサーが市販されて以来、医療診断や環境測定などの場面で用いられてきた[24]。酵素を用いるバイオセンサーは特に酵素センサーと呼ばれる。

電気化学と酵素の化学が組み合わせられたグルコースセンサーでは、電極の上にグルコースオキシダーゼが固定化されている。検体中にグルコースが存在してグルコースオキシダーゼが作用すると酸化還元反応によって電極に電流が流れ、グルコースを定量することができる。糖尿病患者が自身の血糖値を調べるために用いる市販の血糖値測定器では、このグルコースセンサーが利用されている。

このほか、蛍光発光、水晶振動子表面プラズモン共鳴などの原理と酵素とを組み合わせたバイオセンサーが研究されている。

生命の起源と酵素

生命の起源」も参照

現存するすべての生物種において、酵素を含むすべてのタンパク質の設計図は DNA 上の遺伝情報であるゲノムに基づいている。一方、DNA 自身の複製や合成にも酵素を必要としている。つまり、酵素の存在は DNA の存在が前提であり、一方で DNA の存在は酵素の存在が前提であるから、ゲノムの起源において DNA の確立が先か酵素の確立が先かというパラドックスが存在していた。最近の研究では、このパラドックスについて、いまだ確証はないものの以下のように説明している。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a9/Ribozyme.jpg/220px-Ribozyme.jpg

リボザイムの作用機序
リボザイムは配列を認識して mRNA を特定部位で切断する

1986アメリカトーマス・チェックらによって発見されたリボザイムは、触媒作用を持つ RNA であり、次の3種類の反応を触媒することが知られている[25]

  1. 自分自身に作用して RNA を切断する。(グループ I, II, III イントロンの自己スプライシング)
  2. 他の RNA に作用して RNA を切断する。(リボヌクレアーゼP
  3. ペプチド結合の形成。(リボゾーム23S rRNA

特性1.および2.からは、RNA は自己複製していた段階の存在があるとも考えられる。また、特性3.からは、RNA が酵素の役割も担う場合があることがわかる。このことから、仮説ではあるが、現在のゲノムの発現機構(セントラルドグマと言い表される)が確立する前段階において、遺伝子と酵素との役割を同じ RNA が担っている RNAワールドという段階が存在したと考えられている。

なお、特性3.の例として挙げた 23S rRNA は、大腸菌のタンパク質を合成するリボゾーム内に存在する。大腸菌のリボゾームにおいては、アミノアシルtRNA から合成されるペプチドにアミノ酸を転位・結合させる酵素の活性中心の主役が、タンパク質ではなく 23S rRNA となっている[26]。さらに、この場合の酵素作用(ペプチジルトランスフェラーゼ活性)は、23S rRNA のドメインV に依存することも判明している[27]

また、リボザイムが自己切断する際にはイオンが関与する例が判明している。このことから、RNA もタンパク質酵素の補因子と共通の仕組みを持っているという可能性が示唆されている[28]

RNAワールド説によると、ゲノムを保持する役割は DNA へ、酵素機能はタンパク質へと淘汰が進んで、RNAワールドが今日のセントラルドグマへと進化したと考えられている。その段階では、次のような RNA の特性が進化の要因として寄与したと推定されている[29]

遺伝子の保管庫が DNA ではなく RNA であったと仮定した場合、RNA には不利な特性がある。それは、リボース2'位の水酸基が存在するので、エステル交換によって環状ヌクレオシド(環状AMPなど)を形成してヌクレオチドが切断されやすいという性質である。これに対して DNA は、リボース2'位の水酸基を欠くので環状リン酸エステルを形成せず、RNA の場合より安定なヌクレオチドを形成する。

また、立体構造の多様性について考察すると、RNA の立体構造はタンパク質に比べて高次構造が単純になることが判明している。したがって、RNA から構成される酵素に比べ、タンパク質から構成される酵素の方が立体構造の多様性が大きく、基質特異性の面や遷移状態モデルを形成する上でより性能の良い酵素になると考えられる[30]

人工酵素

分子構造が分子認識と遷移状態の形成に関与していることが判明して以来、酵素の構造を変化させることで人工的な酵素(人工酵素)を作り出す試みがなされている。そのアプローチ方法としては

  1. 酵素たんぱく質の設計を変える方法
  2. 超分子化合物を設計する方法

が挙げられる。

前者は1980年代頃から試みられており、アミノ酸配列を変異させて酵素の特性がどのように変化するのか、試行錯誤的に研究がなされた。異種の生物間でゲノムを比較できるようになり、異なる生物に由来する同一酵素について共通性の高い部分とそうでない部分とが明確なったので、それを踏まえて配列を変化させるのである(いわゆるバイオテクノロジー技術の一環)。1990年代以降にはコンピュータの大幅な速度向上とデータの大容量化が進行し、実際のタンパク質を測定することなく、コンピュータシミュレーションによって一次配列からタンパク質の立体構造を設計し、物性を予測することができつつある。また、2000年代に入るとゲノムの完全解読が色々な生物種で完了し、遺伝子情報から分子生物学上の問題を解決しようとする試み(バイオインフォマティクス技術)がなされている。そして現在、バイオインフォマティクス情報からタンパク質機能を解明するプロテオミックス技術へと応用が展開されつつある。2008年には、計算科学的な手法によって設計された、実際にケンプ脱離の触媒として機能する酵素が報告されている[31]

後者の超分子化合物を設計する方法については、1980年代頃から、分子認識を行う超分子化合物(すなわち基質特異性をモデル化した化合物)の研究が開始された。当初は基質構造の細部までは認識できなかったので、分子の嵩高さを識別することから始められた。ただし早い時期から、他の分子と静電相互作用で結合する包摂化合物シクロデキストリンクラウンエーテルなど)は知られていた。そこで最初の人工酵素として、リング状の構造をもつシクロデキストリンに活性中心を模倣した側鎖構造を修飾することによって、中心空洞にはまり込む化合物に対してだけ反応する化学物質が設計された。今日では分子を認識すると蛍光を発するような超分子化合物も設計されている。

また、活性中心で生じている遷移状態を作り出す方法論は反応場理論として体系付けられている。反応場理論の1つの応用が、2001ノーベル化学賞を受賞した野依良治バリー・シャープレスらの不斉触媒として成果を挙げている。

代表的な酵素の一覧

分類についてはEC番号を、酵素記事の総覧はCategory:酵素をご覧ください。

代表的な酵素の一覧を示す。

  1. 消化・同化作用・異化作用・エネルギー代謝に関与する酵素
  2. 遺伝に関与する酵素
  3. 細胞内のシグナル伝達・分子修飾に関与する酵素

酵素に関する年表

生化学の歴史#酵素」も参照

脚注

^ "amylase", The Columbia Encyclopedia. 6th ed. Bartleby.com.

1.     ^ Theodor Schwann. Encyclopædia Britannica. 2007. Encyclopædia Britannica Online.

2.     ^ Harper, D (2001). "enzyme". Online Etymology Dictionary.

3.     ^ 徳重正信、「酵素」『世界大百科事典』(CD-ROM版、第2)、日立デジタル平凡社、1998年。

4.     ^ Fischer E (1894). “Einfluss der Configuration auf die Wirkung der Enzyme”. Ber Dt Chem Ges 27: 2985-93. http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k90736r/f364.chemindefer. 

5.     ^ 1946 Nobel prize for Chemistry laureates at http://nobelprize.org

6.     ^ 1989 Nobel prize for Chemistrylaureates at http://nobelprize.org

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8.     ^ Agarwal PK (2005). Role of protein dynamics in reaction rate enhancement by enzymes. journal=J Am Chem Soc. 127. pp. 15248-56.  PMID 16248667.

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10.  ^ "E.C." "EC." と表記される例もある。

11.  ^ EC番号は酵素の特性によって分類されるので、同じ EC番号であっても異なる配列のタンパク質の酵素が含まれる。

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18.  ^ 吉岡 政七, 遠藤 克己『新生化学ガイドブック』南江堂、1969年、89ページ。

19.  ^ 1,000cal/molが約4.2kJ/molに相当する。

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関連項目

EC番号

 

 

A

ATPアーゼ

ATPアーゼATPエース、ATPaseATPases (ion transport))とは、アデノシン三リン酸 (ATP) の末端高エネルギーリン酸結合加水分解する酵素群の総称である(EC番号 3.6.1.33.6.33.6.4)。ATP は生体内のエネルギー通貨であるから、エネルギーを要する生物活動に関連したタンパク質であれば、この酵素の活性を持っていることが多い。 日本語ではATPアーゼを「アデノシン三リン酸分解酵素」などと表現できる。なお、「ホスファターゼ」は「リン酸分解酵素」のことであるから、「アデノシン三リン酸ホスファターゼ」という呼び方は「リン酸」の重言となり、正しくない。

目次

 特徴

ATPアーゼは以下の反応を触媒する酵素の総称である。

ATP ADP + P i {\displaystyle {\ce {{ATP}-> {ADP}+ P_i}}} {\displaystyle {\ce {{ATP}-> {ADP}+ P_i}}}アデノシン三リン酸 → アデノシン二リン酸 + リン酸

この時に発生するエネルギーを利用して、エネルギーを要する生物体内作用に寄与している。通常は ATP 以外のヌクレオチド三リン酸(GTPUTPCTPなど)に作用することが知られている。しかしながら存在している部位によって少しずつ性状が異なっている。

ATPに共通する特性として、スルフヒドリル基SH基)を必要とすることと、Mg2+, Ca2+ によって活性化あるいは阻害を受けるという点が挙げられる。

役割

ATPアーゼの役割はエネルギーの関与する全ての反応に寄与していると言ってよい。

  • 細胞内物質輸送
  • 細胞外物質輸送
  • イオン濃度勾配の作成
  • 発光
  • 発電
  • 膜タンパク質の品質管理

 

種類

運動性タンパク質ATPアーゼ

ミオシンアクチン系に代表されるATPアーゼである。ATP加水分解によるコンフォメーションの変化を受けることを特徴とする。タンパク質にATPが結合することによってタンパク質の立体構造に変化が起こり、その構造変化を利用して実際にタンパク質(ひいては細胞を)を「稼動」させることに関係している。

ミオシンダイニンキネシンはそれぞれが蛍光標識を用いた一分子観測でその稼動が観察されている。

  • ミオシンATPアーゼ – アクチンミオシン系のすべりに関係
  • ダイニンATPアーゼ – 微小管上の物質輸送(マイナス端側への移動)
  • キネシンATPアーゼ – 微小管上の物質輸送(プラス端側への移動)
  • ダイナミンATPアーゼ – 唯一コンフォメーション変化は受けない、微小管の接着に関係

イオン輸送性ATPアーゼ

ATPの加水分解エネルギーを使って生体膜を透過しないイオンの輸送を行うATPアーゼの一群である。ATP合成酵素もこれに分類される。F型、A型、V型、P型が存在している。P型をのぞくものは構造がよく似ており、イオン(主にプロトン)駆動型モーター (Fo, Ao, Vo) ならびにATP駆動型モーター (F1, A1, V1) から形成される。

全てがイオン濃度勾配を用いてATP合成および逆反応のATP加水分解に伴うイオン濃度勾配の形成が可能である。しかしながら、ATP合成酵素として用いられているのはF型およびA型のみである。

ABC ATPアーゼ

ABC とは ATP Binding Cassette ATP結合カセット)の略称である。細胞への物質取り込みおよび排出に関係する。膜貫通型の ABC ATPアーゼは、常に4つの機能ドメイン2つの膜貫通ドメインと2つのABCドメイン)から構成される。これらのドメインは全てが一つの遺伝子にコードされている場合もあれば、それぞれ別々の遺伝子にコードされている場合もある。膜貫通ドメインの配列は多様であるが、ABCドメインと呼ばれるATP結合部位の配列は高度に保存されている。真核生物(主にヒト)では有害物質の排出に使用されているが、一方原核生物ではアミノ酸と言った物質の取り込みに用いられている。また、ヒトの中でもトランスポーターチャネルレセプター等、その機能は多彩である。

これら生体膜貫通型の古典的なABC ATPアーゼに加え、最近ではDNA結合型の ABC ATPアーゼが知られるようになってきている。代表的なものとして、染色体の高次構造と機能を制御するSMCタンパク質があり、これらはコンデンシンあるいはコヒーシンのコアサブユニットとして機能する。また、DNA2重鎖切断の修復に関与する Rad50 もこのカテゴリーに属する。

ABCドメインの特徴は、多くのATPアーゼが共有する Walker A Walker B モチーフに加え、Signature モチーフ(あるいはCモチーフ)と呼ばれる配列を持つことにある。すべての ABC ATPアーゼは一対のABCドメインをもち、2つのATP分子は2つのドメインに挟まれるようにして結合する。この際、ATPは一方のドメインの Walker A Walker B モチーフに結合し、もう一方のドメインのCモチーフと接触する。このCモチーフとの接触が、ATPの加水分解に必須である。すなわち、ATPの結合と加水分解のサイクルが2つのABCドメインの会合と解離のサイクルを制御し、さらにその構造変換が基質結合ドメイン(例えば、ABCトランスポーターの膜貫通ドメイン)に伝達されると考えられている。その作用メカニズムは、2ストロークエンジンに例えられることもある。

AAA ATPアーゼ

AAA とは ATPases Associated with diverse cellular Activities の略称である。タンパク質の細胞内小器官への輸送(プロテインキネシス)、膜融合、細胞内小器官の形成、DNA複製転写調節など機能は多様だが、全てがリング状オリゴマー構造を取っている。ATPの加水分解エネルギーはタンパク質のアンフォールディング(3次構造をほどく)やタンパク質分解、リゴマーの拡大などに使用されていると考えられている。

真核細胞のみならず、細菌大腸菌)、古細菌からも見つかっている。

課題

運動性タンパク質ATPアーゼを除く全てのタンパク質が生体膜に存在している。そのため構造が理解されていないことが多く、未開拓な酵素の一つである。また、ATPアーゼ活性そのものについてもよくわかっておらず、ATPのエネルギーを得た中間体などの解析から「エネルギーを持ったタンパク質」の状態を理解することへの研究もなされている。

最も研究が進んでいるであろうATPアーゼはミオシンおよびATP合成酵素であるが、その全てが理解されたとはいずれも考えられない状況であることは否めない。

関連項目

アデノシン三リン酸

加水分解酵素

生体膜

ATP合成酵素

膜タンパク質

ATP合成酵素

ATP合成酵素(—ごうせいこうそ)とは、呼吸鎖複合体によって形成されたプロトン濃度勾配と膜電位からなるプロトン駆動力を用いて、ADPリン酸からアデノシン三リン酸 (ATP) の合成を行う酵素である。別名ATPシンターゼ呼吸鎖複合体V、複合体Vなど。 なお、シンテターゼATPなどの高エネルギー化合物の分解と共役する反応を触媒する酵素を指すが、ATP合成に他のエネルギー化合物を用いることはないので、「ATPシンテターゼ」という呼称は正しくない。

目次

ATPアーゼにおける位置づけ

一部の酵素が正反応と逆反応の両方を触媒できるように、ATP合成酵素は普通ATPアーゼ活性も持ち合わせている[1]

ATPアーゼのうちイオン輸送性ATPアーゼの一群がATP合成酵素を含んでいる。イオン輸送性ATPアーゼは以下のように分類される。

  • FATPアーゼ – ほとんどの生物がATP合成に用いている
  • PATPアーゼ – イオン能動輸送に用いられる、ATP消費型
  • VATPアーゼ – 液胞 (vacuole) に存在する、能動輸送に用いられる
  • AATPアーゼ – 古細菌の用いるATP合成酵素

すべてのイオン輸送性ATPアーゼは電気化学的ポテンシャルを用いてATPを合成できる。ただし、以上のイオン輸送性ATPアーゼの中で、生物がATPの合成に普段用いているのはF型およびA型である。

FATPアーゼはほぼ全生物が所持するATP合成酵素の代表的なものであり、αプロテオバクテリアATPアーゼがその起源といわれている。AATPアーゼは古細菌に特有なATP合成酵素であり、その後真核細胞の中でVATPアーゼに変化したと言われている。AATPアーゼはそのためVATPアーゼに分類されることも多い。

ATP合成酵素の所在

ATP合成酵素は真核生物ミトコンドリア内膜、原核生物細胞膜にそれぞれ位置している。呼吸鎖複合体の近傍に位置していると考えられている。電子顕微鏡を用いると生体膜の内側(細胞内側)にキノコ状の構造体が確認できるが、この構造体がATP合成酵素である。

ATP合成酵素の構造

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/c3/ATP%E5%90%88%E6%88%90%E9%85%B5%E7%B4%A0.png/220px-ATP%E5%90%88%E6%88%90%E9%85%B5%E7%B4%A0.png

PDB ID: 1c17,1e79 PDBのデータを元にし、Molecule of the Monthモードで描写。F0モーターおよびF1モーターを表示。

現在、その構造が良くわかっているのはFATPアーゼのみである。FATPアーゼは Fo (エフオー)と F1 (エフワン)の2つの部位からなる。それぞれの部位のサブユニット名およびその数は以下の通りである(原核生物型)。

  • F1部位 – α(3個)、β(3個)、γ(1個)、δ(1個)、ε(1個)
  • Fo部位 – a1個)、b2個)、c912個、cサブユニットの数は不定)

真核生物のFATPアーゼはF1部位のサブユニット種類数は同じだが、Fo 部位は最大で8種類存在するといわれている。

F1 部位はεサブユニットを基部としてγサブユニットが幹状に結合し、その周囲をαおよびβサブユニットが囲うように交互に配置されている(γサブユニットを幹とすればα、βは葉の部分)。δサブユニットはα、βサブユニットの頂点に位置しており、F1部位の安定化に寄与していると思われる。F1部位は活性を保ったまま界面活性剤で可溶化することが可能であり、実験が行いやすい。F1部位は立体構造が1994Walkerらによって決定されており、その反応機構も明らかになっている。

Fo 部位は膜貫通型であり、cサブユニットがリング状に配置され、aサブユニットがその横に結合して、bサブユニットの基部となっている。bサブユニットは F1 部位のδサブユニットと結合し F1 部位の安定に寄与していると考えられている。Fo 部位は膜貫通型であるために活性型が得られにくく、可溶化しても元の正常を保てないことが多い。いまだ立体構造およびサブユニット構成は不定である。

ATP合成酵素の反応

F1 部位はATPの反応に寄与しており、それは以下の式で表される。

ATP {\displaystyle {\overrightarrow {\longleftarrow }}} \overrightarrow \longleftarrow ADP+Piリン酸

F1 部位ではATPの合成および消費を両方向触媒することが可能である。

一方、Fo部位はプロトンを透過させる機能があり、以下の式で表される。H + in     H + out {\displaystyle {\ce {H^{+}in\ {\overrightarrow {\longleftarrow }}\ H^{+}out}}}

プロトン電気化学的ポテンシャルを用いたATP合成の反応は以下の収支式で表される。ADP   + Pi   + 3 H + out ATP   + 3 H + in {\displaystyle {\ce {ADP\ + Pi\ + 3 H^+out -> ATP\ + 3H^+in}}}

プロトンが3分子通過するごとに、1分子のATPの合成が行われる。この反応は逆反応も可能であり、ATPの分解エネルギー(アデノシン三リン酸の項を参照)を用いて、H+ を膜外に能動輸送することも可能である。

回転触媒説

ATP合成酵素がATPの合成を生物体内で行っていることは古くから知られていたが、その反応素過程は分子生物学など生物学的発展の目覚しいごく最近に明らかになりつつある。ATP合成酵素の反応素過程に革新的な説として、ポール・ボイヤー吉田賢右による「回転触媒仮説」があげられる。

これはATP合成酵素は位相をずらしながらATPの合成を行っているのではないかとする説であり、当初ボイヤーの提案した説は「振り子運動」であった。しかしながら吉田によってβサブユニットがATP合成酵素に3個含まれることが証明されると、振り子運動ではなく「回転している」と言うイメージが強まった。

1994年、ジョン・ウォーカーらによってウシATP合成酵素 F1 部位の立体構造が決定されると回転触媒仮説を支持する結果が得られた。F1部位の3つのβサブユニットにそれぞれATPADP、カラの状態、が交互になっていることが判明した。これは回転触媒説を十分に支持する結果ではあったが、現実の回転を直視する結果とはいえなかった。

1997年、ネイチャー (vol. 386, pp. 299302) 野地吉田らの研究による "Direct observation of the rotation of F1-ATPase" という題の論文が掲載された。これはATP合成酵素の F1 部位の回転を実際に観察したという画期的な実験法を述べた論文であり、この論文を通じて「ATP合成酵素は回転している」というボイヤーの説が現実のものとなった。この観察は一分子細胞生物学の基礎となりうる歴史的なものであった。同年、ボイヤー、ウォーカー、スコウ(イオン輸送ATPアーゼの発見)が、ATP合成酵素の研究に寄与したとしてノーベル化学賞を受賞した。

ATP合成酵素の一分子観測[2]

回転触媒説を実証したこの実験は、アイディアに富んだ面白い実験である。以下にプロセスを示す。

  1. ヒスチジンタグを付けた組み換え F1 部位を作成する。
  2. ヒスチジンタグを特異的に吸着するガラス表面に タグ付きのF1 部位を固定する。
  3. F1 部位のγサブユニットに蛍光標識したアクチンフィラメントをストレプトアビジンを用いて接着する。
  4. 溶媒中にATPを添加する。
  5. 蛍光顕微鏡でガラスの表面を観察する。
  6. アクチンフィラメントの回転がATP加水分解によって引き起こされる現象が観察できる。

少々乱暴ながらも比喩的に説明すると、回転していると思われる部分に、回転方向と水平方向に顕微鏡で動画が観測できる大きさの細長い付箋を貼り付けて、その付箋が回転しているかどうかを観測したのである。この方法を用いると回転のみならず、アクチンの長さを変化させることによって発生トルクも測定することができる。この方法で測定したATP合成酵素は、生体内で毎秒100回転していることがわかった。またエネルギー変換効率 100% 近く、これほど効率の高いATP利用系は生物体内ですらこの他に見つかっていない(例えばミオシン 20%ダイニン 50% 程度)。

ATP合成ステップのモデル

ATP合成の素過程は、以下のようなモデルが提唱されている。

  1. カラ型βサブユニットは「開いた」構造をとっている。
  2. 1個目のプロトンが Fo 部位を通過する (outin)
  3. Fo 部位は細胞内側から見て 120° 左回転を行う。
  4. それに伴い、Fo 部位に結合した F1 部位も 120° の左回転を行う。
  5. そのときADPがβサブユニットに入ることにより「閉じた」構造へ変化する。
  6. 2個目のプロトンが Fo 部位を通過し、さらに左120° 回転する。
  7. 回転した F1 部位にてβサブユニットに入ったADPにリン酸化反応が起きる。
  8. 3個目のプロトンが Fo 部位を通過し、さらに左120° 回転する。
  9. βサブユニットは「開いた」構造をとり、ATPを放出してカラ型に戻る。1. に戻る。

このように、3個のプロトンが Fo 部位を outin 通過するごとに、F1 部位がADPのリン酸化を行う。現時点では F1 部位の回転は直視されており確実性はあるが、Fo 部位の回転はいまだ確認されていない。しかしながらcサブユニットの立体構造から回転子であることが提案されており、おそらく回転していると考えられている。また、逆反応については、F1 部位の右回転(細胞内側から見て)が Fo 部位に伝わり、ATP合成酵素全体が右回転する仕組みとなっていると考えられている。

120° の回転を行うことは一分子観測の実験でも確認されており、低濃度 (20 nmol/L) ATP存在下ではアクチンフィラメントが 120° ごとに回転している様子が観察されている。また、ADPがつっかえてATP合成酵素が動かなくなったり、ATP合成酵素が「間違えて逆回転する」現象も観察されている。

今後の課題

ATP合成酵素への理解は極めて進んだとされているが、いくつかの点が明らかになっていない。Fo 部位の構造解析、反応素過程が現時点での課題ともいえる。

また、こうした構造生物学的な疑問とは異なり、「なぜATP合成に使用されるATPアーゼのみが回転をしているのか」と言う疑問も残っている。上記、生体内でATP合成に用いられるのはF型およびA型であるが、F型については回転していることがほぼ確実となり、A型についてもおそらく回転しているだろう、との予測がなされている。

また、AATPアーゼを起源とするVATPアーゼもサブユニット構成から回転しているだろうと予測されている。PATPアーゼは構造が単純で(分子量10万前後)エネルギー効率も決して悪くは無いが生体内でATPの合成に用いられている例は存在しない。複雑極まりないFATPアーゼ(分子量50万以上)はほぼ全生物共通してATP合成に用いられる普遍的な酵素であり、進化の痕跡が垣間見られない。こうしたことも、現時点の課題と言える。

また、メタン菌F型およびA型の二つのATP合成酵素を所持しているが、F型はナトリウムイオン駆動型のATPアーゼであることが判明している。プロトン濃度勾配に拠らない、新規なイオン輸送型のATP合成酵素の存在も示唆されている。

歴史

ATP合成の研究の歴史はATP合成酵素の研究の歴史にほぼ重なると言っても過言ではない。

  • 1951 アルバート・レーニンジャーによって呼吸鎖複合体の電子伝達およびATPの合成は共役しているという「酸化的リン酸化」が提唱された。
  • 1961 ピーター・ミッチェルによってプロトンの電気化学的ポテンシャルがATPの合成に寄与していると言う「化学浸透圧仮説」が提唱された。
  • 1963 – モーデイ・アヴロン (Mordhay Avron) によって葉緑体チラコイド膜上に球状突起が見出され、この構造体がATP合成に関係した酵素であると推定された。
  • 1966 – アンドレイ・ヤーゲンドルフ (André T. Jagendorf) らによって葉緑体での pH ジャンプによるATP合成系のモデルが提唱された。
  • 1975 – エフレイム・ラッカー (Efraim Racker) とワルサー・ステッケニウス (Walther Stoeckenius) によって、脂質二重層を用いたATP合成酵素およびバクテリオロドプシンの実験によってATP合成が電気化学的ポテンシャルによって行われることを明らかにした。
  • 1978 – 化学浸透圧説を唱えたミッチェルがノーベル化学賞を受賞した。
  • 1981 – ボイヤーがATP合成酵素の「回転触媒仮説」を提唱した。
  • 1994 – ウォーカーらによってウシATP合成酵素の F1 サブユニットのX線結晶構造が明らかになった。
  • 1997 – ボイヤー、ウォーカーらがATP合成酵素の反応素過程を解明したことによりノーベル化学賞を受賞した。

脚注

  1. ^ 野地博行; 吉田賢右 (200011). 「ATP合成の回転モーター:ATP合成酵素」『シリーズ・バイオサイエンスの新世紀7』 (PDF). 共立出版. p. 76. 2017121日閲覧。
  2. ^ Noji, Hiroyuki; Yasuda, Ryohei; Yoshida, Masasuke; Kinosita JR, Kazuhiro (1997). Direct observation of the rotation of F1-ATPase. Nature 386: 299302. doi:10.1038/386299a0. PMID 9069291. 

関連項目

タンパク質四次構造

全般

二量体

三量体

四量体

六量体

八量体

微小繊維

複合体

機械

ウイルス

沈殿

分類方法

三次構造

D

D-アスパラギン酸リガーゼ

 

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D-アスパラギン酸リガーゼ

識別子

EC番号

6.3.1.12

データベース

IntEnz

IntEnz view

BRENDA(英語版)

BRENDA entry

ExPASy

NiceZyme view

KEGG

KEGG entry

MetaCyc

metabolic pathway

PRIAM

profile

PDB構造

RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum

[表示]

検索

D-アスパラギン酸リガーゼ(D-aspartate ligase)は、EC 6.3.1.12)は、以下の化学反応を触媒する酵素である。

ATP + D-アスパラギン酸 + [β-GlcNAc-(1->4)-Mur2Ac(oyl-L-Ala-γ-D-Glu-L-Lys-D-Ala-D- Ala)]n

⇌ {\displaystyle \rightleftharpoons }

[β-GlcNAc-(1->4)-Mur2Ac(oyl-L-Ala-γ-D-Glu-6-N-(β-D-Asp)-L- Lys-D-Ala-D-Ala)]n + ADP + リン酸

従って、基質はATPD-アスパラギン酸、[β-GlcNAc-(1->4)-Mur2Ac(oyl-L-Ala-γ-D-Glu-L-Lys-D-Ala-D-Ala)]n4つ、生成物は[β-GlcNAc-(1->4)-Mur2Ac(oyl-L-Ala-γ-D-Glu-6-N-(β-D-Asp)-L-Lys-D-Ala-D-Ala)]nADP、リン酸の4つである。

この酵素はリガーゼ、特に炭素-窒素結合を形成する酸-D-アンモニアリガーゼ(アミドシンターゼ)に分類される。系統名は、D-アスパラギン酸:[β-GlcNAc-(1->4)-Mur2Ac(oyl-L-Ala-γ-D-Glu-L-Lys-D -Ala-D-Ala)]n リガーゼ (ADP生成)(D-aspartate:[beta-GlcNAc-(1->4)-Mur2Ac(oyl-L-Ala-gamma-D-Glu-L-Lys-D -Ala-D-Ala)]n ligase (ADP-forming))である。

出典[編集]

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DNAジャイレース

DNAジャイレース (DNA gyrase)、もしくは単にジャイレース、あるいはDNAギラーゼとは細菌が持つDNAトポイソメラーゼII型の1種である (EC 5.99.1.3) [1]

II型なのでDNA二本鎖の両鎖を切断することにより鎖を回転させねじれをとる働きをする〈記事DNAトポイソメラーゼに詳しい〉。細菌のDNA複製には欠かせない酵素の1つである。

例をあげると、大腸菌のDNAジャイレースは分子量115,00095,0002種のサブユニット2組の四量体を形成している。サブユニットの前者は遺伝子gyrA、後者はgyrBの産物である。

〈ニュー〉キノロン系抗生物質は真核生物のDNAトポイソメラーゼII型は阻害せず、細菌のDNAトポイソメラーゼII型〈すなわちDNAジャイレース〉のみを選択的に阻害し、生体に影響を与えずに細菌の増殖のみを阻害する。

DNAジャイレースの阻害剤は前述のキノロン系抗生物質の他に、クーママイシン (coumermycin) とノボビオシン (novobiocin) などが知られている。

DNAジャイレースもATP依存性の反応と非依存性の反応との両方を持つが、特にクーママイシンとノボビオシンはATP依存性の反応だけを阻害する点が特徴的である。

遺伝子変異による薬剤耐性の研究より、オキソリン酸 (oxolinic acid) およびナリジクス酸はgyrA産物と、クーママイシン、ノボビオシンはgyrB産物と相互作用することが知られている[2]

 

脚注・出典[編集]

^ 真核生物はDNAジャイレースとは異なるDNAトポイソメラーゼII型酵素を持つ。

^ DNAジャイレース、『生物学辞典』、第4版、岩波書店

IUBMB entry for 1.1.1.198(英語)

BRENDA references for 1.1.1.198 (英語)

PubMed references for 1.1.1.198(英語)

PubMed Central references for 1.1.1.198(英語)

Google Scholar references for 1.1.1.198(英語)

関連項目[編集]

DNAトポイソメラーゼ

異性化酵素

抗生物質

外部リンク[編集]

IUBMB entry for 1.1.1.198(英語)

KEGG entry for 1.1.1.198(英語)

BRENDA entry for 1.1.1.198(英語)

NiceZyme view of 1.1.1.198(英語)

EC2PDB: PDB structures for 1.1.1.198(英語)

PRIAM entry for 1.1.1.198(英語)

PUMA2 entry for 1.1.1.198(英語)

IntEnz: Integrated Enzyme entry for 1.1.1.198(英語)

MetaCyc entry for 1.1.1.198(英語)

Atomic-resolution structures of enzymes belonging to this class(英語)

DNAリガーゼ

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/46/DNA_Repair.jpg/250px-DNA_Repair.jpg

DNA修復を行うDNAリガーゼI(イメージ図)

DNAリガーゼ(ディーエヌエーリガーゼ、DNA ligase)は、DNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合でつなぐ酵素である。生体内では主としてDNA複製DNA修復に寄与している。一方、遺伝子工学組換えDNAを作るために頻繁に利用されている。EC番号6.5.1.1(基質ATP)または6.5.1.2(基質NAD+)。英語での発音に倣ってDNAライゲースともいい、ポリデオキシリボヌクレオチドシンターゼポリヌクレオチドリガーゼなどとも呼ばれる。

目次

 

反応機構

DNA3'末端(アクセプター)と、DNA5'末端(ドナー)との間にリン酸ジエステル結合をつくる。よく知られている真核生物やファージの酵素では反応にATPを必要とし、以下のように進行する[1]

  1. ATPが酵素の活性中心のリジン残基に結合してAMPとなり、ピロリン酸が放出される。
  2. AMPDNA5'末端のリン酸基に転移され、ピロリン酸結合を生じる。
  3. 5'末端のリン酸基3'末端の水酸基との間にリン酸ジエステル結合を生じ、AMPが放出される。

たとえば大腸菌など真正細菌のDNAリガーゼは、ATPではなくNAD+を補酵素として要求し、ピロリン酸の代わりにニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN) が放出される。

基質

一般的なDNAリガーゼは、二重らせん構造の中で隣り合う3'-水酸基と5'-リン酸基の間をリン酸ジエステル結合でつなぐ。これ以外の組み合わせ、たとえば3'-リン酸基と5'-水酸基、3'-水酸基と5'-水酸基、3'-ダイデオキシヌクレオチドと5'-リン酸基、3'-水酸基と5'-三リン酸などでは反応しない。また通常は一本鎖DNAに対して作用することはない。

T4ファージ由来のT4 DNAリガーゼは、効率は低いもののDNA/RNAハイブリッドに対して作用することもでき、このときDNAリガーゼだけでなくRNAリガーゼとしても機能することができる[2][3]。またT4 DNAリガーゼはミスマッチ塩基を含むようなDNAに対して作用することができ、また相補部位のない独立したDNA分子2つを結合することが出来るなど、二重らせん構造という観点で許容度が高い。非常に効率は低いが、一本鎖DNAですら結合することができる[4]

ほ乳類

4種のDNAリガーゼがある。

DNAリガーゼI

DNA複製の際、ラギング鎖で新しく合成された岡崎フラグメント同士を結合する。

DNAリガーゼIII

DNA修復酵素XRCC1と複合体を形成し、塩基除去修復の過程で作用する。

DNAリガーゼIV

XRCC4と複合体を形成し、非相同末端結合による二本鎖修復の最終段階で作用する。また免疫担当細胞の多様性を生み出すVDJ組み換えに必須である。

DNA組換え

DNAリガーゼは分子生物学実験や遺伝子工学において組換えDNAを作るための道具となっている。たとえば制限酵素で切断したDNA断片をプラスミドに組み込む際や、DNA断片にアダプタ配列を結合させる際に用いられる。この目的のためにはT4ファージ由来のT4 DNAリガーゼが用いられることが多い。末端に相補的な一本鎖が突出している粘着末端の場合、対合した二本鎖に作用することで高効率に反応が進むが、T4 DNAリガーゼを用いると条件次第で突出のない平滑末端同士を結合させることもできる。

粘着末端の結合は、たとえば次のような反応である:

5'-AGTCTGATCTGACC        -3'
3'-TCAGACTAGACTGGAGCT        CCATACGATCACGA-5'

           ↓

5'-AGTCTGATCTGACCTCGAGGTATGCTAGTGCT-3'
3'-TCAGACTAGACTGGAGCTCCATACGATCACGA-5'

T4 DNAリガーゼの反応至適温度は25℃であるが、粘着末端を結合させるにはその突出部位の融解温度(Tm)と整合させることが重要になる[5]。 もし反応温度がTmを越えていると、突出部位の対合が不安定になり反応効率は低くなる。よく使われる4塩基突出のTm1216℃である。

平滑末端の結合は、たとえば次のような反応である:

5'-AGTCTGATCTGACTGAGAT        ATCTGCTAGTGCT-3'
3'-TCAGACTAGACTGACTCTA        TAGACGATCACGA-5'

           ↓

5'-AGTCTGATCTGACTGAGATATCTGCTAGTGCT-3'
3'-TCAGACTAGACTGACTCTATAGACGATCACGA-5'

平滑末端の場合にはそもそも対合が起きないのでTmを考慮する必要はないが、反応温度が高くなると溶液中の分子の運動が活発化し、DNA末端が結合出来る位置に出会う確率が低くなってしまう。そのためやはり1420℃という低温で反応を行うことが一般的になっている。

歴史

DNAリガーゼが単離され、性状解析が行われたのは1967年が初めてである[6]

参考文献

1.     ^ Lehnman, I. R. (1974). DNA Ligase: Structure, Mechanism, and Function. Science 186 (4166): 7907. doi:10.1126/science.186.4166.790. PMID 4377758. 

2.     ^ Kleppe et al. (1970). “Polynucleotide Ligase-Catalyzed Joining of Deoxyribo-oligonucleotides on Ribopolynucleotide Templates and of Ribo-oligonucleotides on Deoxyribopolynucleotide Templates (pdf). PNAS 67 (1): 68-73. http://www.pnas.org/content/67/1/68.full.pdf. 

3.     ^ Fareed et al. (1971). “Enzymatic Breakage and Joining of Deoxyribonucleic Acid VIII. Hybrids of Ribo- and Deoxyribonucleotide Homopolymers as Substrates for Polynucleotide Ligase of Bacteriophage T4 (pdf). J. Biol. Chem. 246 (4): 925-932. http://www.jbc.org/content/246/4/925.full.pdf. 

4.     ^ Kuhn and Frank-Kamenetskii (2005). “Template-independent ligation of single-stranded DNA by T4 DNA ligase. FEBS Journal 272 (23): 59916000. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1742-4658.2005.04954.x/full. 

5.     ^ Tabor, Stanley. DNA ligases. Chapter in: Current Protocols in Molecular Biology, Book 1. 2001: Wiley Interscience.[要ページ番号]

6.     ^ Weiss, B.; Richardson, CC (1967). “Enzymatic Breakage and Joining of Deoxyribonucleic Acid, I. Repair of Single-Strand Breaks in DNA by an Enzyme System from Escherichia coli Infected with T4 Bacteriophage. Proceedings of the National Academy of Sciences 57 (4): 10218. doi:10.1073/pnas.57.4.1021. PMC 224649. PMID 5340583. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=224649. 

関連項目

リガー

リガーゼ

リガーゼligase)とはEC番号6群に属する酵素であり、ATPなど高エネルギー化合物の加水分解に共役して触媒作用を発現する特徴を持つ[1][2]。英語の発音に従ってライゲースと表記される場合もある[3]。リガーゼは別名としてシンテターゼ(シンセテース[3])と呼ばれる。日本語ではリガーゼを指して合成酵素と呼ぶことがあるが、合成酵素といった場合はEC6群のシンテターゼの他にEC4群のシンターゼを含むので留意が必要である。シンテターゼはATPなどの高エネルギー化合物分解と共役しているのに対して、シンターゼ(シンセース[3])リアーゼ(ライエース[3])の一種であり高エネルギー化合物分解の共役は不要である。[4]

目次

概要

リガーゼには生合成経路上で重要な酵素が多く、代表的な酵素としては

などが挙げられる。

リガーゼの基質となる高エネルギー化合物はATPがほとんどであるが、GTPNADなどもある。リガーゼはこれらの高エネルギー化合物と他の基質とがアデニル化,リン酸化,またはピロリン酸化された活性中間体を経由するとともに、加水分解により発生する自由エネルギー変化を駆動力にして触媒反応が生成側に進行する。

シンテターゼ

リガーゼの常用命名法によりシンテターゼの語尾を持つ酵素が多い。すなわち、化合物XYとをATP加水分解に共役して結合させる酵素は系統名ではX:Yリガーゼと命名されるが、常用名ではX-Yシンテターゼと命名される[5]。例えばアシルコエンザイムAシンテターゼは脂肪酸〈アシル基〉とコエンザイムAとをATP分解のエネルギーを利用して合成する酵素である。[6]

一覧

EC.6.1.-(炭素-酸素結合を形成するもの)

EC 6.1.1.- (アミノアシル-tRNAおよび関連化合物を生成するリガーゼ)

EC 6.1.2 (-アルコールリガーゼ(エステルシンターゼ))

EC.6.2.-(炭素-硫黄結合を形成するもの)

EC.6.2.1.-(-チオールリガーゼ)

EC.6.3.-(炭素-窒素結合を形成するもの)

EC.6.3.1.-(-アンモニア(またはアミン)リガーゼ(アミドシンターゼ)

EC.6.3.2.-(-D-アミノ酸リガーゼ(ペプチドシンターゼ))

EC.6.3.3.-(シクロリガーゼ)

EC.6.3.4.-(その他の炭素-窒素リガーゼ)

EC.6.3.5.-(グルタミンがアミド-N-供与体となる炭素-窒素リガーゼ)

EC.6.4.-(炭素-炭素結合を形成するもの)

EC.6.5.-(リン酸エステル結合を形成するもの)

EC.6.6.-(窒素-金属結合を形成するもの)

EC 6.6.1 (錯体を形成するもの)

出典^ リガーゼ、『世界大百科事典』CD-ROM版、平凡社、1998

  1. ^ リガーゼ、『理化学辞典』、第5版、岩波書店
  2. ^ a b c d 文部科学省監修学術用語集の「学術語の訳字通則」に従うとリアーゼ、シンテターゼ、シンターゼが正式となる。投稿雑誌によっては英語読みのカタカナ表記であるライエース、シンセテース、シンセースは推奨されない場合がある
  3. ^ 合成酵素、『理化学辞典』、第5版、岩波書店
  4. ^ シンテターゼ、『理化学辞典』、第5版、岩波書店
  5. ^ 酵素命名法(英語)

関連項目

D-タガトース 3-エピメラーゼ

 

移動先: 案内、 検索

D-タガトース 3-エピメラーゼ (D-tagatose 3-epimerase)は、ケトースの第3位炭素の可逆的エピ化反応を触媒する酵素である。香川大学農学部の土壌中から分離された微生物シュードモナス・チコリ (Pseudomonas cichorii) が生産する[1]L-ラムノースイソメラーゼとともに「希少糖酵素」と呼び、希少糖の生産に最重要の酵素である。

香川大学の何森健らによって、D-フルクトースをD-プシコースに変換する酵素として発見された。ケトースの第3位炭素のエピ化酵素としては世界で初めての例である。希少糖研究センターを持つ、香川大学が希少糖を研究している機関として知られる。何森らは酵素による希少糖の大量生産系を確立した。

2007年に、X線結晶構造解析により立体構造が明らかにされている[2]

脚注[編集]

^ Itoh, H.; Okaya, H.; Khan, A. R.; Tajima, S.; Hayakawa, S.; Izumori, K. (1994). “Purification and characterization of D-tagatose 3-epimerase from Pseudomonas sp. ST-24”. Biosci. Biotechnol. Biochem. 58: 2168–2171. doi:10.1271/bbb.58.2168.

^ Yeshiva, H.; Yamada, M.; Nishitani, Y.; Takada, G.; Izumori, K; Kamitori, S. (2007). “Crystal Structures of D-Tagatose 3-Epimerase from Pseudomonas cichorii and its Complexes with D-Tagatose and D-Fructose”. J. Mol. Biol 374 (2): 443-353. doi:10.1016/j.jmb.2007.09.033. PMID 17936787.

外部リンク[編集]

香川大学 希少糖研究センター

G

GTPアーゼ

GTPアーゼはグアノシン三リン酸(GTP)を結合し加水分解する一群の酵素あるいはタンパク質で、非常に多数の種類がある。

GTPアーゼは正式にはグアノシン三リン酸フォスファターゼまたはグアノシントリフォスファターゼといい、加水分解酵素として分類されるが、一般の酵素のように基質であるGTPが結合後すぐに分解されるわけではなく、GTPおよびその加水分解産物であるグアノシン二リン酸(GDP)が結合した状態が比較的安定に存在し、それぞれが機能を有していろいろな細胞の調節を行う。そのため酵素という名前でなく、GTP結合タンパク質と呼ぶことも多い。EC番号3.6.5。反応の各段階(GTPの結合・GTPの加水分解・GDPの解離)が他のタンパク質、あるいはそれ自身の存在環境によって調節を受ける。

種類[編集]

次のような種類がある。

Gタンパク質(狭義のGタンパク質:ヘテロ三量体型GTPアーゼ)

低分子量GTPアーゼ(Rasスーパーファミリー)

リボソームの翻訳開始因子・伸長因子・終結因子

タンパク質分泌シグナル配列認識粒子(SRP

ダイナミンスーパーファミリー

チューブリン(細胞骨格の一種である微小管を形成する)

機能[編集]

チューブリンを除いては、GTPの結合・加水分解に関与する部分にはGドメインと呼ばれる共通性の高い構造がある。いずれもGTPの末端(γ位)のリン酸基を加水分解しGDPにする。この末端リン酸基の結合は高エネルギーリン酸結合であるが、そのエネルギーはATPアーゼのように輸送や運動(分子モーター)に直接用いられるのではなく、タンパク質のコンフォメーション変化に使われていると考えられる。機能からは次のように分けられる。

細胞内シグナル伝達:味覚・嗅覚・視覚などの感覚情報も含む。

タンパク質の生合成と輸送

細胞骨格およびその調節

細胞分裂・分化の調節

細胞内の小胞輸送

Gタンパク質と低分子量GTPアーゼは、いずれもシグナル伝達等において分子スイッチとして働き、GTP結合状態(オンまたは活性化状態)から、GTPの加水分解を経て、GDP結合状態(オフまたは不活性化状態)へ、さらにGDPからGTPへの交換を経てGTP結合状態へと、一方向的に移行する。機能的には似ているので両者を合わせてGタンパク質と呼ぶこともある。狭義のGタンパク質はヘテロ三量体として膜上の受容体に結合し、下流の伝達経路へシグナルを送る。低分子量GTPアーゼには、伝達経路の途中で働くもの(がん遺伝子rasの産物)のほか、細胞内の小胞輸送や細胞骨格の調節において機能するものがある。ダイナミンスーパーファミリーも小胞輸送に関与する。

I

IntEnz

IntEnz (Integrated relational Enzyme database) とは国際生化学・分子生物学連合による酵素EC番号と酵素命名システムの公式バージョンの構築データである[1]

脚注

1.     ^ Fleischmann A, Darsow M, Degtyarenko K, Fleischmann W, Boyce S, Axelsen KB, Bairoch A, Schomburg D, Tipton KF, Apweiler R (January 2004), IntEnz, the integrated relational enzyme database, Nucleic Acids Res. 32 (Database issue): D4347, doi:10.1093/nar/gkh119, PMC 308853, PMID 14681451

外部リンク

·         Integrated Enzyme Database (IntEnz), European Bioinformatics Institute 2009719日閲覧。

L

L-ラムノースイソメラーゼ

L-ラムノースイソメラーゼ (L-rhamnose isomeraseEC 5.3.1.14)とは、香川県の土壌中から分離された微生物であるPseudomonas stutzeriの生産する酵素であり、ケトース-アルドース間の可逆的異性化化反応を触媒する酵素である。D-タガトース3-エピメラーゼとともに希少糖酵素と呼び、希少糖の生産に最重要の酵素である。

 

目次  [非表示]

1

歴史

2

研究機関・研究者

3

出典

4

外部リンク

 

歴史[編集]

香川大学の何森健らによって、プシコースをアロースに変換する酵素として発見された。

研究機関・研究者[編集]

希少糖研究センターを持つ、香川大学が希少糖を研究している機関として知られる。何森健は酵素による希少糖の大量生産系を確立した。

出典[編集]

 

IUBMB entry for 5.3.1.14(英語)

BRENDA references for 5.3.1.14 (英語)

PubMed references for 5.3.1.14(英語)

PubMed Central references for 5.3.1.14(英語)

Google Scholar references for 5.3.1.14(英語)

外部リンク[編集]

希少糖研究センター

IUBMB entry for 5.3.1.14(英語)

KEGG entry for 5.3.1.14(英語)

BRENDA entry for 5.3.1.14(英語)

NiceZyme view of 5.3.1.14(英語)

EC2PDB: PDB structures for 5.3.1.14(英語)

PRIAM entry for 5.3.1.14(英語)

PUMA2 entry for 5.3.1.14(英語)

IntEnz: Integrated Enzyme entry for 5.3.1.14(英語)

MetaCyc entry for 5.3.1.14(英語)

Atomic-resolution structures of enzymes belonging to this class(英語)

M

MetaCyc

MetaCycは、様々な生物の代謝経路酵素に関する広範な情報を収録したデータベースである。MetaCycは、実験的に確認された代謝経路を収めている[1][2][3]

MetaCycは、ゲノム配列からその生物の代謝経路を計算で予測するための参照データセットとして用いることができ、実際にBioCyc database collectionに収録されているものも含め、数千に及ぶ生物の代謝経路の予測に用いられた。

MetaCycは、サブユニットの構造、補因子アクチベーターインヒビター基質特異性、時には速度定数等、個々の酵素の広範なデータを含む。さらに文献情報も提供される。

出典

^ Caspi R, Altman T, Dale JM, Dreher K, Fulcher CA, Gilham F, Kaipa P, Karthikeyan AS, Kothari A, Krummenacker M, Latendresse M, Mueller LA, Paley S, Popescu L, Pujar A, Shearer AG, Zhang P, Karp PD (January 2010). The MetaCyc database of metabolic pathways and enzymes and the BioCyc collection of pathway/genome databases. Nucleic Acids Res. 38 (Database issue): D4739. doi:10.1093/nar/gkp875. PMC 2808959. PMID 19850718.

1.     ^ MetaCyc Publications. 201483日閲覧。

2.     ^ Karp PD, Caspi R (September 2011). A survey of metabolic databases emphasizing the MetaCyc family. Arch. Toxicol. 85 (9): 101533. doi:10.1007/s00204-011-0705-2. PMC 3352032. PMID 21523460.

外部リンク

MetaCyc

MTOR

mTOR(日本ではエムトールと呼ばれることもあるが、正しくはエムトアである)は哺乳類などの動物で細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼ(セリン・スレオニンキナーゼ)の一種[1][2]酵母を用いたスクリーニングでラパマイシンの標的分子として発見されたため、TOR (target of rapamycin)つまり「ラパマイシン標的タンパク質」の略として命名された(TOR1TOR22種類がある)[1][3][4]。後に哺乳類のホモログが見出され、同定した研究者らによりFRAP1RAFT1などと命名されたが、一般にはmTOR (mammalia TOR:哺乳類のTOR)との呼称が普及した[5]。その後、様々な生物種でTORホモログが広く同定されたのを受け、HUGO遺伝子命名法委員会 (HGNC)2009年に本遺伝子の公式名をMTORmechanistic target of rapamycin)に決定した。なお、HGNCによる公式名称では、Mmechanistic(物理的、機械的、機構的)の略であり、当初一般的であったmammalian(哺乳類の)ではない。

mTORは、複数のタンパク質による複合体(complex)を形成し、複合体はmTORCと呼ばれる。インスリンや他の成長因子、栄養・エネルギー状態、酸化還元状態など細胞内外の環境情報を統合し、転写翻訳等を通じて、それらに応じた細胞のサイズ、分裂、生存などの調節に中心的な役割を果たすと考えられている。インスリンやアミノ酸が豊富に存在するとmTORは活性化され、リボソームにおけるmRNAの翻訳を促進しタンパク質合成を増加させるとともに、オートファジーを阻害しタンパク質の分解を抑制する[6]

酵母そのものも栄養状態等に応じた調節機能を果たすが、詳細な作用機序は異なる。さらに多くの真核生物でホモログが知られるが、これらの作用機序も必ずしも同じではない。語源となっているラパマイシンは、まずFKBP12タンパク質に結合し、このタンパク質複合体がmTORに結合してこれを阻害する。mTOR2種類の分子複合体(ラパマイシン感受性および非感受性)を形成し、それぞれにおいて触媒mTORキナーゼ)サブユニットとして働く。

目次

mTORC1

mTOR複合体1mTORC1)はmTORmLST8/GβLmammalian LST8/G-protein β-subunit like protein)、Raptorregulatory associated protein of mTOR)およびPRAS40DEPTORからなる。この複合体は、栄養・エネルギー・酸化還元状態に関する情報により、リボソームの生産とタンパク質生合成を促進し、タンパク質分解を抑え細胞成長を促す。mTORC1はラパマイシンにより阻害され[1]、また低栄養状態、成長因子の不足、還元ストレス等の刺激により抑制される。これらの刺激があるとmTORRaptorの相互作用が弱くなりmTORキナーゼが活性化される。逆にこれらがなくなると相互作用が強まることにより、mTORキナーゼは不活性化される。mTORC1の重要な標的にはp70-S6キナーゼ1 (S6K1)4E-BP1(真核生物翻訳開始因子4E[eIF4E]結合タンパク質1)がある。mTORC1S6K1リン酸化し、これにより活性化されたS6K1S6リボソームタンパク質や他の翻訳関係成分の活性化を通じてタンパク質合成を開始させる。また、リン酸化されていない4E-BP1eIF4Eに結合し、これが5'キャップ構造を持つmRNAに結合するのを妨げでいるが、mTORC14E-BP1をリン酸化すると、eIF4Eの機能が回復する。

mTORC2

mTOR複合体2mTORC2)は主にmTORGβLRictorrapamycin-insensitive companion of mTOR)、およびmSIN1mammalian stress-activated protein kinase interacting protein 1)からなる。mTORC2も成長因子や栄養状態により調節を受けるが、ラパマイシンによる阻害は受けない[1]。一方で、長時間のラパマイシン処理によって阻害されることが報告されている。TORC2は細胞の増殖や生存の調節に重要なセリン・スレオニンキナーゼであるAkt(別名タンパク質キナーゼBPKB])をリン酸化し、これによりAktの別位置のリン酸化が促進され、Aktは完全に活性化される。mTORC2細胞骨格の調節にも関与する。

創薬ターゲットとしてのmTOR

mTORは、細胞の栄養状態を反映し、蛋白合成、細胞増殖、血管新生、免疫などを制御する。mTOR阻害剤は、ステントの再狭窄防止、抗癌剤、免疫抑制剤として実用化されている。

·         エベロリムスは、臓器移植後の免疫抑制剤、腎細胞癌乳癌結節性硬化症における脳の巨細胞性星細胞腫と腎臓における血管筋脂肪腫の治療薬として認可されている。また冠動脈ステントの再狭窄防止剤として用いられている。

·         シロリムス, テムシロリムス, ゾタロリムスなども臨床応用されている。

文献

1.     ^ a b c d Bruce Alberts, Alexander Johnson et al. (2010). 細胞の分子生物学 (5 ed.). 株式会社ニュートンプレス. pp. 934-935. ISBN 978-4-315-51867-2.

2.     ^ 岡部進. mTOR 阻害薬を用いた癌治療. 日本薬理学会. 20161117日閲覧。

3.     ^ Cafferkey et al.: Mol Cell Biol. 1993; 13(10), 6012-23. Dominant missense mutations in a novel yeast protein related to mammalian phosphatidylinositol 3-kinase and VPS34 abrogate rapamycin cytotoxicity.

4.     ^ Helliwell et al.: Mol Biol Cell. 1994; 5(1), 105-18. TOR1 and TOR2 are structurally and functionally similar but not identical phosphatidylinositol kinase homologues in yeast.

5.     ^ Sabers et al.: J Biol Chem. 1995; 270(2), 815-22. Isolation of a protein target of the FKBP12-rapamycin complex in mammalian cells.

6.     ^ 水島 (2011-12-02). 細胞が自分を食べるオートファジーの謎. 株式会社PHP研究所. p. 194. ISBN 978-4-569-80071-4.

外部リンク]

·         mTOR シグナル伝達

N

Na+/K+-ATPアーゼ

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/fe/NaKExchanger.jpg/200px-NaKExchanger.jpg

イオンの流れ

Na+/K+-ATPアーゼ: Na+/K+-ATPase, NAKA)は、2種のサブユニットからなる細胞膜輸送系の膜貫通タンパク(EC 3.6.3.9)である。この酵素は、細胞内でのATPの加水分解と共役して細胞内からナトリウムイオンを汲み出し、カリウムイオンを取り込むのでナトリウム-カリウムポンプNa+/K+ポンプ)または単にナトリウムポンプNa+ポンプ)とも呼ばれ、ヒトのすべての細胞でみられる共通の構造である。

目次

Na+/K+-ATPアーゼの発見

Na+/K+-ATPアーゼは1957イェンス・スコウデンマークオーフス大学の生理学部助教授として勤務しているときに発見した。1997、彼はナトリウム-カリウムポンプの発見の功績によりポール・ボイヤージョン・E・ウォーカーとともにノーベル化学賞を受賞した。

作用

ポンプの作用を式にすると次のようになる。 3 N a + ( i n ) + 2 K + ( o u t ) + A T P + H 2 O 3 N a + ( o u t ) + 2 K + ( i n ) + A D P + P i {\displaystyle {\rm {{3Na^{+}(in)+2K^{+}(out)+ATP+H_{2}O\rightleftarrows 3Na^{+}(out)+2K^{+}(in)+ADP+Pi}\,}}}

Na+/K+-ATPアーゼは1回毎に細胞から3Na+を汲み出して2K+を汲み入れるためその都度正電荷1個細胞外に放出する電位発生的な対向輸送を行っている。脂質二分子膜を透過するため動物細胞Na+/K+ポンプによって浸透圧と含水量を調節している。Na+/K+ポンプによって作られる膜電位Em)はニューロンでは神経刺激になり、また別の細胞ではグルコースアミノ酸能動輸送自由エネルギーを供給する。すべての細胞ではNa+/K+濃度の維持に、合成したATP30%(ニューロンでは70%)を消費する。

構造

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a7/Sodium_Pump.svg/200px-Sodium_Pump.svg.png

Na+/K+-ATPアーゼの推定二量体構造。図の上が細胞の外側、下が内側。αサブユニットの上部は強心性ステロイド結合部位、下部はATP結合部位である。βサブユニット上部についているのは糖鎖。

αサブユニット

αサブユニット(約1000残基)は、酵素活性を持ち糖鎖を持たないサブユニットである。おのおのの哺乳類のαサブユニットの配列は約98%が同一で、約8本の膜貫通αヘリックス2個の大きな細胞質ドメインで構成されると推定されている。

βサブユニット

βサブユニット(約300残基)は、糖鎖を持つサブユニットで、1本の膜貫通ヘリックスと大きな細胞外ドメイン構造が推定されている。機能は不明であり、なぜ二量体構造が必要であるのかも分かっていない。

関連項目

NAD+シンターゼ

NAD+ synthase

識別子

EC番号

6.3.1.5

CAS登録番号

9032-69-3

データベース

IntEnz

IntEnz view

BRENDA(英語版)

BRENDA entry

ExPASy

NiceZyme view

KEGG

KEGG entry

MetaCyc

metabolic pathway

PRIAM

profile

PDB構造

RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum

遺伝子オントロジー

AmiGO / EGO

[表示]

検索

NAD+シンターゼ(NAD+ synthase)は、EC 6.3.1.5)は、以下の化学反応を触媒する酵素である。

ATP + デアミドNAD+ + アンモニア

⇌ {\displaystyle \rightleftharpoons }

AMP + 二リン酸 + NAD+

従って、基質はATP、デアミドNAD+、アンモニアの3つ、生成物はAMP、二リン酸、NAD+3つである。

この酵素はリガーゼ、特に炭素-窒素結合を形成する酸-D-アンモニアリガーゼ(アミドシンターゼ)に分類される。系統名は、デアミドNAD+:アンモニアリガーゼ (AMP生成)(deamido-NAD+:ammonia ligase (AMP-forming))である。この酵素は、ニコチン酸及びニコチンアミド代謝や窒素循環に関わっている。

構造

2007年末現在、11個の構造が解かれている。蛋白質構造データバンクのコードは、1WXE1WXF1WXG1WXH1WXI1XNG1XNH2E182PZ82PZA2PZBである。

出典

Spencer RL, Preiss J (1967). “Biosynthesis of diphosphopyridine nucleotide. The purification and the properties of diphospyridine nucleotide synthetase from Escherichia coli b”. J. Biol. Chem. 242 (3): 385–92. PMID 4290215.

P

PPM1D

 

PPM1D

識別子

記号

PPM1D, PP2C-DELTA, WIP1, protein phosphatase, Mg2+/Mn2+ dependent 1D, IDDGIP

外部ID

MGI: 1858214 HomoloGene: 31185 GeneCards: PPM1D

[隠す]遺伝子の位置 (ヒト)

17番染色体 (ヒト)

染色体

17番染色体 (ヒト)[1]

17番染色体 (ヒト)

PPM1D遺伝子の位置

PPM1D遺伝子の位置

バンド

データ無し

開始点

60,600,183 bp[1]

終点

60,666,280 bp[1]

[]遺伝子の位置 (マウス)

11番染色体 (マウス)

染色体

11番染色体 (マウス)[2]

11番染色体 (マウス)

PPM1D遺伝子の位置

PPM1D遺伝子の位置

バンド

データ無し

開始点

85,311,244 bp[2]

終点

85,347,066 bp[2]

オルソログ

ヒト

マウス

Entrez

8493

53892

Ensembl

ENSG00000170836

ENSMUSG00000020525

UniProt

O15297,K7EJH1

Q9QZ67

RefSeq
(mRNA)

NM_003620

NM_016910

RefSeq
(
タンパク質)

NP_003611

NP_058606

場所
(UCSC)

Chr 17: 60.6 – 60.67 Mb

Chr 17: 85.31 – 85.35 Mb

PubMed検索

[3]

[4]

ウィキデータ

Protein phosphatase 1D はヒトppm1d遺伝子によってコードされる酵素である[5][6]

PPM1DPPMファミリーに分類されるSer/Thrホスファターゼである。PPMファミリーは細胞ストレス応答経路のネガティブレギュレイターとして知られている。PPM1Dは、当初tumor suppressor protein TP53/p53依存的な様々な環境ストレスに応答して誘導されるホスファターゼとして同定された。p53p38 MAPキナーゼ (MAPK/p38) の直接的な脱リン酸化によって、それらの活性を負に制御し、細胞周期停止やアポトーシスを抑制する。このことからp53のフィードバック制御因子であると考えられている。また、細胞周期制御因子の脱リン酸化によってp53非依存的に細胞周期を制御することが知られている。この遺伝子は乳癌由来細胞株および、初期乳癌組織において増幅が報告されており、このことは癌発生におけるppm1d遺伝子の役割を示唆している[6]

相互作用

PPM1DCDC5L相互作用することが報告されている[7]

引用文献

1.     ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000170836 - Ensembl, May 2017

2.     ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000020525 - Ensembl, May 2017

3.     ^ "Human PubMed Reference:". 

4.     ^ "Mouse PubMed Reference:". 

5.     ^ Fiscella M, Zhang H, Fan S, Sakaguchi K, Shen S, Mercer WE, Vande Woude GF, O'Connor PM, Appella E (July 1997). Wip1, a novel human protein phosphatase that is induced in response to ionizing radiation in a p53-dependent manner. Proc Natl Acad Sci U S A 94 (12): 604853. doi:10.1073/pnas.94.12.6048. PMC 20998. PMID 9177166. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=20998. 

6.     ^ a b Entrez Gene: PPM1D protein phosphatase 1D magnesium-dependent, delta isoform. 201479日閲覧。

7.     ^ Ajuh, P; Kuster B, Panov K, Zomerdijk J C, Mann M, Lamond A I (December 2000). Functional analysis of the human CDC5L complex and identification of its components by mass spectrometry. EMBO J. (ENGLAND) 19 (23): 656981. doi:10.1093/emboj/19.23.6569. ISSN 0261-4189. PMC 305846. PMID 11101529. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=305846. 

参考文献

 

R

RFLP

RFLPRestriction Fragment Length Polymorphism、制限酵素断片長多型)とは、制限酵素によって切断された DNA 断片の長さが、同一内の個体間で異なる(多型を示す)ことを指し、また転じてそれを検出する手法も意味する。一塩基多型によってこの違いが現れることもある。遺伝病を持つ人と持たない人でこれが異なる場合があり、診断や遺伝病の原因遺伝子の同定に利用される。得られた断片長は、電気泳動によって既知の断片長のDNA(サイズマーカー)と比較して求める。

ゲノムプロジェクトの進行に伴ってPCRに用いるプライマーの設計が容易になったため、現在ではPCRDNAを増幅し、その反応生成物を制限酵素で切断する手法であるPCR-RFLPが一般的となった。PCR-RFLP以前はヒトを対象とした場合、

1.     生きた細胞の採取

2.     細胞の培養(数日)

3.     比較的高品質なDNAの抽出

4.     DNAの切断

5.     電気泳動

6.     ブロッティング

7.     放射性同位元素等でラベルしたプローブのハイブリダイズ

8.     X線フィルムへの感光・現像

といった手順を踏んだ。一方、PCR-RFLPでは、

1.     比較的粗雑なDNAの採取

2.     PCR2時間程度)

3.     DNAの切断

4.     電気泳動

5.     紫外線によるDNAの可視化

と、半日程度で可能となった。

断片長の差で対立遺伝子等を識別する方法

以下にサザンブロッティングを利用した原法を模式的に示す。

マーカー    
上段: ある生物種2個体のゲノムDNAと制限酵素SfaN Iによる断片長。
         個体Bにはbの位置の制限酵素認識部位が存在しない==はプローブが結合する領域。
下段: サザンブロッティングの結果。個体Aでは2 kbの、個体Bでは3 kbの位置にバンドが見える。
(簡略のため一倍体生物を想定している)

RNA依存性RNAポリメラーゼ

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曖昧さ回避

RNAポリメラーゼ」とは異なります。

 

RNA-directed RNA polymerase

 

 

RNA Replicase structure.png

RNA Replicase structure PDB 3PHU.[1]

 

 

識別子

 

 

EC番号

2.7.7.48