経穴学考察です。

 腸の構造

◆大腸:消化管の最終部で,右腸骨窩で回腸に続いて始まり,空腸と回腸の周りを
  囲むように走り,直腸に終わる。
大腸は全長約1.5mあり,盲腸,結腸及び直腸の3部に分けられる()。
直腸と虫垂を除く大腸の表面には肉眼的に結腸ヒモ,結腸膨起及び腹膜垂の3つの
  特徴的な構造が見られる。
大腸は小腸から送られて来た食べ物(カス)から水分(1日約2L)と電解質(主にNa+
  を吸収し,糞便を形成する。
回盲部 
盲腸:大腸の起始部であり,左後壁に回盲口があり,回腸の末端が開口する。
回盲口より下方の盲管になっている袋状の部分(約6~8Cm)を盲腸という。
回盲口には回盲弁があり,大腸内容の回腸への逆流を防止している。
盲腸の後内側壁(回盲弁の下約2.5Cm)からミミズの様な形をした虫垂が
  突出する。
虫垂にはリンパ組織が豊富で(腹部の扁桃),三角形の虫垂間膜によって
  腸間膜の下部に連結されている。
虫垂間膜の中を虫垂動静脈,神経及びリンパ管が行走する。
盲腸&虫垂 
結腸:上行結腸,横行結腸,下行結腸及びS状結腸に分けられる。
左側の結腸(下行結腸とS状結腸)は右側(盲腸や上行結腸)より細く,癌などの
  病気が多い。
✤上行結腸:右腸骨窩で盲腸の上端(回盲弁の上唇の高さ)に続いて始まり,
  腰方形筋と右腎の前を上行し,肝臓右葉の下面に至り,右結腸曲をなして
  左前方に曲がり,横行結腸に移行する(長さ約15Cm)。
上行結腸の前面と両側面は腹膜に覆われ(半腹膜内臓器),後面は
  疎性結合組織によって直接後腹壁に固定されており,可動性が少ない。
✤横行結腸:右結腸曲に続く長さ約50Cmの部分で,胃の大弯に沿って左方に走り,
  脾臓臓側面の下端に至り,左結腸曲をなして下方に曲がり,下行結腸に移行する。
横行結腸は全表面が腹膜に包まれ,横行結腸間膜によって後腹壁に付いており,
  可動性が大きい。
大腸
✤下行結腸:左結腸曲に続く長さ約20Cmの部分で,左腎の外側縁及び腰方形筋の
  前を下行し,左腸骨窩に達し,S状結腸に移行する。
上行結腸と同様に前面と両側面が腹膜に覆われ(半腹膜内臓器),後面は
  疎性結合組織によって直接後腹壁に固定されており,可動性が少ない。
✤S状結腸:ほぼ腸骨稜の高さで,下行結腸に続いて始まり,左腸骨窩から仙骨の
  前をS状に走行し,第2仙椎下縁の高さで直腸に移行する(長さ約45Cm)。
S状結腸は全表面が腹膜に包まれ,長くて広いS状結腸間膜によって後骨盤壁に
  付いており,可動性に富み,位置の異動が大きい。
岬角の高さより第2仙椎下縁の高さまでのS状結腸は直腸S状部と呼ばれ,
  上部直腸と同じく上直腸動脈により栄養されるため,外科的には直腸の一部
  として扱われている。
大腸壁は内側から粘膜,粘膜下層,筋層,外膜の4つの層に分かれている。
大腸壁 
粘膜:小腸の輪状ヒダの代わりに半月ヒダがあり,粘膜の表面は平滑で
  絨毛を欠いている。
①粘膜上皮小腸と同じく単層円柱上皮で構成されており,円柱上皮細胞の
  内腔面には刷子縁がある。
小腸に比べて吸収細胞の間に多数の杯細胞があり,下方ほど多く分布している。
②粘膜固有層には腸腺(リーバーキューン腺)が発達しており,密に並んで存在する。
腸腺は吸収細胞,杯細胞,再生細胞,及び内分泌細胞などで構成されている。
多数の孤立リンパ小節があり,粘膜下層にまではみ出している。
③粘膜筋板:内輪・外縦の2層平滑筋からなっている。
大腸腺 
✤粘膜下層:疎性結合組織で,太い血管やリンパ管,神経叢の他に脂肪細胞を
  多く含んでいる。
✤筋層:内輪状筋,外縦走筋の2層平滑筋で構成されており,縦走筋の線維は
  3ヶ所に集り,結腸ヒモを形成する。
✤外膜:上下行結腸の後壁と下部直腸を除く大腸の大部分は漿膜に覆われている。
自由・大網ヒモに沿った漿膜中皮の下層には多量の脂肪細胞があり,局所的に
  集積した脂肪組織は漿膜を持ち上げ,小葉状の漿膜ヒダ(腹膜垂)を形成する。

直腸:大腸の最後の部分で,第2仙椎下縁の高さで,S状結腸に続いて始まり,
  仙骨と尾骨の前を下行し,骨盤隔膜を貫いて,会陰の肛門に終わる。
第2仙椎下縁の高さより,恥骨直腸筋付着部上縁まで(骨盤隔膜より上の部分)
  を直腸骨盤部という。
恥骨直腸筋付着部上縁から肛門縁までを直腸肛門部という。
直腸は矢状面上に仙骨曲と会陰曲の2つの弯曲を形成する。
仙骨曲:仙骨前面(骨盤面)の弯曲に沿って,後方凸に弯曲している。
会陰曲:骨盤隔膜を通過する際,恥骨直腸筋によって前方に引っ張られて
  形成されており,尾骨尖をまわって,前方凸に弯曲している。
直腸骨部盤:腹膜反転部のよって上部直腸と下部直腸に分けられる。
直腸壁の粘膜には輪状筋と粘膜が内腔に突出して形成された3本の
  半月形をした横走するヒダがあり,直腸横ヒダという。
3本の横ヒダのうちの中間にあるヒダは最も大きく恒常的で,右側の直腸壁に
  位置しており,コールラウシュヒダという。
腹膜反転部は直腸内腔ではほぼコールラウシュヒダの位置に相当する。
骨盤部の下部は内腔が広く,直腸膨大部といい,排便まで糞便を一時的に
  貯蔵する。
直腸-冠状断面 
直腸肛門部:肛門管ともいい,長さ3~4Cmある。
上部の粘膜には6~10条の縦走ヒダがあり,これを肛門柱という。
肛門柱の下端は半月状の粘膜横ヒダ(肛門弁)によって互いに結合されている。
肛門弁と隣り合う肛門柱の下端で形成される小さな袋状の凹みを肛門隠窩
  (肛門洞)という。
肛門隠窩の底部には肛門腺が開口しており,ここに感染が発生し進展すると
  炎症が肛門周囲組織に波及して膿瘍となる。
肛門柱の下端と肛門弁の下縁(基部)を結んだ鋸歯状の輪状線を歯状線
  (櫛状線)という。
歯状線は直腸粘膜と肛門上皮との境界線であり,歯状線の上部と下部は
  上皮の様相,血管の供給,リンパの流れ,神経支配などが異なる。
歯状線の下方には長さ1~1.5Cmの輪状の高まりがあり,痔帯(痔輪)という。
痔帯は単層円柱上皮から重層扁平上皮に移行する移行帯であり,ちょうど
  内肛門括約筋に囲まれているため,いくらかその他の部分より突出している。
痔帯の下縁にはあまり明瞭ではない白色の輪状線があり,ヒルトンの白線
  (肛皮線)という。
ヒルトンの白線は内肛門括約筋と外肛門括約筋の皮下部との境界線に当たり,
  肛門の上方約1Cmの所にある。
ヒルトン白線から肛門までの部分は皮膚と同じ性状を持っており,皮膚帯という。
肛門括約筋-冠状断面  
◆肛門括約筋:内肛門括約筋と外肛門括約筋の間には肛門腺があり,肛門導管を
  介して肛門隠窩に開口する。
直腸壁の輪状筋層は肛門管の所で肥厚して,内肛門括約筋を形成する。
直腸壁の縦走筋層は恥骨直腸筋から来る線維と合して,内肛門括約筋と
  外肛門括約筋との間に連合縦走筋を形成する。
肛門粘膜下筋:内肛門括約筋の下端を迂回し,内面へ反転上昇した連合縦走筋の
  線維と粘膜筋板から下行した線維が合して形成されている。
連合縦走筋の線維は内外肛門括約筋を貫き走行し,末梢では外肛門括約筋の
  皮下部を貫通して肛門皮膚にまで達している(肛門皺皮筋)。
連合縦走筋の一部である横中隔は,主に外括約筋の皮部と浅部の間から出て
  肛門管周辺に広がり,肛門管を骨盤に固定する。
外肛門括約筋-前面 
外肛門括約筋:横紋筋(随意筋)で,内肛門括約筋の外下方と肛門の周囲を
  取り囲んでいる。
外肛門括約筋は連合縦走筋の一部である線維中隔によって深部,浅部,皮部に
  分けられている。
皮下部:肛門周囲の真皮と皮下結合組織中に放散している輪状筋束で,前方は
  会陰腱中心に,後方は肛門尾骨靭帯に付着している。
皮下部の上縁は内肛門括約筋の下縁に接しており,その間には連合縦走筋が
  走っており,肛門括約筋間溝 (Hilton白線)に当たる。
浅部:肛門管の下端を取り巻く卵円形の筋束で,前方は会陰腱中心に,後方は
  肛門尾骨靭帯となり尾骨尖に付着する。
深部:浅部の上方にある輪状筋束で,上方で恥骨直腸筋と癒合している。
✤会陰腱中心:会陰部の皮下にある厚さ約3~4Cmの強靭な腱様組織である。
大腸の動脈:上腸間膜動脈,下腸間膜動脈及び内腸骨動脈から来る。
虫垂,盲腸,上行結腸,横行結腸は上腸間膜動脈の分枝である回結腸動脈,
  右結腸動脈及び中結腸動脈などによって栄養される。
下行結腸,S状結腸,直腸の上部は下腸間膜動脈の分枝である左結腸動脈,
  S状結腸動脈及び上直腸動脈などによって栄養される。
直腸の下部及び歯状線以下の肛門管下部は内腸骨動脈の分枝である
  中直腸動脈と内陰部動脈(下直腸動脈)によって栄養される。
大腸の動脈
◆大腸の静脈:最終的に門脈下大静脈に流入する。
虫垂,盲腸,上行結腸,横行結腸の静脈は同名の動脈に伴行し,上腸間膜静脈を
  経由して門脈に流入する。
下行結腸,S状結腸,直腸の上部の静脈は同名の動脈に伴行し,下腸間膜静脈を
  経由して門脈に流入する。
直腸の下部及び歯状線以下の肛門管下部の静脈は同名の動脈に伴行し,
  内腸骨静脈を経由して下大静脈に流入する(側副循環-上直腸静脈路)。
大腸の静脈
◆大腸のリンパ:上腸間膜リンパ節,下腸間膜リンパ節,内腸骨リンパ節及び
  浅鼠径リンパ節に流入する。
虫垂,盲腸,上行結腸,横行結腸のリンパ管は上腸間膜リンパ節に流入する。
下行結腸,S状結腸,直腸の上部のリンパ管は下腸間膜リンパ節に流入する。
直腸の下部及び歯状線以下の肛門管下部のリンパ管は内腸骨リンパ節
  浅鼠径リパ節に流入する。
◆大腸の神経:交感神経と副交感神経は上腸間膜神経叢下腸間膜神経叢
  骨盤神経叢などを介して歯状線以上の大腸に分布する。
歯状線以下の肛門管下部は陰部神経(体性神経)の分枝である下直腸神経
  (肛門神経)の支配を受ける。