背骨の仕組み

背骨(脊柱)は椎骨が積み重なり,頸椎,胸椎,腰椎,仙骨,尾骨を構成している;
椎骨と椎骨は椎間板,靭帯,椎間関節で繋がっている;
椎骨は前方(腹側)の円柱形の椎体と後方(背側)の複雑な形をした椎弓からなる;
椎体と椎弓の間には椎孔があり,首から腰まで縦に連なり脊柱管を形成する;
脊柱管中には,脳から続く脊髄,馬尾及び神経根が通っている;
椎弓には関節面,上関節突起,下関節突起,横突起,棘突起がある;
隣接する椎弓の間には椎間孔が左右に二つあり,脊髄神経が通っている;
脊髄神経は頸神経(頸神経叢腕神経叢),胸神経腰神経,仙骨神経に分類される;
脊柱 

 

前面:重い体重を支えるため,椎骨は頸椎から腰椎に行くほど大きくなっている;
側面生理的弯曲
頚椎と腰椎は前弯,胸椎と仙椎は後弯となり,緩やかなS字カーブを描いている;
胸椎と仙椎の後弯:胎児期から見られる;
頚椎の前弯:首が座る時期(生後3か月~4か月頃)にできる;
腰椎の前弯:立って歩き出す時期(生後10か月~12か月頃)にできる;
役割:体にかかる振動や衝撃を和らげ,直立した際のバランスを保つ;
後面
頚椎の棘突起はほぼ水平であり,棘突起の尖端は第7頸椎の他は二分してある;
第7頚椎の棘突起は長大で,皮膚の上から容易に触知できるので隆椎と呼ばれる;
第1胸椎から第8胸椎までは下位になるほど傾斜が強くなる;
第9胸椎からは傾斜が次第に弱まり,第12胸椎ではほとんど水平である;
腰椎の棘突起はほぼ水平に後方へ突出している;

環椎   
環椎:リング状で椎体,棘突起と関節突起が無い。
上関節面は後頭骨の後頭顆環椎後頭関節を形成し,頭部を屈曲や伸展させる。
軸椎 
軸椎:椎体上面から垂直に伸びる歯突起をもっている;
環軸関節:車軸関節で,頭部を左右に回転させる;
環軸関節
歯突起の前関節面は環椎の歯突起窩と接し,後関節面は環椎横靱帯と接する;
環椎・軸椎にずれが生じると,小脳・脳幹(中脳・橋・延髄)へ栄養を送る動脈が圧迫され 
  椎骨・脳底動脈循環不全になり,めまい,手足のシビレ等の症状を引き起こす;
環椎後頭関節&環軸関節
環椎・軸椎が破壊され頭蓋に入り,延髄を圧迫すると【呼吸が苦しい,ドキドキする】等の
  症状が現れる:

下位頸椎:横突起に横突孔というかなり大きな孔が貫通しており,椎骨動脈が通っている。
下位頸椎 
胸椎&腰椎: 
胸椎・腰椎  
胸椎:肋骨と接しているため,椎体に肋骨との関節面がある。
12個の胸椎は12対の肋骨と連結し,前方で胸骨に連結して胸郭を形成する;
腰椎:背骨のなかでも最も大きな動きを担い,体重の多くを支えている;
体重の負荷が大きいため,骨粗鬆症による椎骨圧迫骨折などの障害が起こりやすい;
関節突起の関節面は矢状位をとる;
横突起は本来腰部の肋骨が癒合したもので肋骨突起と呼ぶ;
本来の横突起は上関節突起の外側から後方に向かう小さな隆起で乳頭突起と呼ぶ;
副突起も本来の横突起の一部が変形したものである。
仙骨:第1~5仙椎が癒合してできた三角形の骨で,骨盤の後壁を作る。
上端面(第1仙椎椎体の上面)は第5腰椎と結合し,腰仙関節を形成する。
上端面の前縁は前方に突出しており,これを岬角という。

仙骨-前面
 
前面の正中部には4本の横線があり,5つの仙椎椎体の癒着部に当たる。
各横線の両端には4対の前仙骨孔があり,仙骨神経前枝(S1~S4)が通る。
第5仙骨神経は第5仙椎と第1尾椎との間から外に出る()。
外側部の上部は仙骨翼という。

仙骨-後面 

後面の正中線上には正中仙骨稜(棘突起)があり,その外側には更に中間仙骨稜
 (関節突起)と外側仙骨稜(横突起)という2条の縦の隆起がある。
中間仙骨稜の外側には4対の後仙骨孔があり,仙骨神経後枝(S1~S4)が通る。
仙骨管は仙椎の椎孔が縦に連なってできており,馬尾を入れている。
第5仙椎の椎弓板は正中で癒合しておらず仙骨裂孔となり,仙骨管の末端を成す。
仙骨裂孔の両側には下方に伸びた第5仙椎の下関節突起があり,仙骨角という。
仙骨角は尾骨角と接しており,仙尾関節靱帯によって補強されている。


仙骨-側面 

外側部の上部には耳状面があり,腸骨の耳状面と結合し,仙腸関節を形成する。
耳状面の後縁と外側仙骨稜に囲まれた凹凸不平な骨面を仙骨粗面という。

椎間関節:嚢(滑膜)性関節;

椎間関節 

関節包は緩く,上・下関節突起の関節軟骨の間で滑動が起こる;
関節包靭帯は薄いが強い;


椎間板&靭帯
椎間板&靭帯 

脊柱の靭帯:詳しくは脊柱靭帯骨化症
椎間板は中心部にゼリー状の髄核があり,周囲を繊維輪という丈夫な組織が囲んでいる;
脊柱の運動を補助したり,背骨に加わる衝撃や体重を和らげるクッションの働きをする;
繊維輪は前方部分(腹側)で厚く,後方部分(背側)は薄い(後ろの方が破れ易い);
椎間板の厚さは椎間孔の高さに近く,その高さに於いて脊柱管の前壁を成す;
椎間板の弾力が低下し,厚さが薄くなると椎骨や椎間関節にかかる負担が大きくなる;
椎間板には血管が通ってないため,組織の劣化や損傷が起こっても再生できない。

脊柱の動き
屈曲:脊柱が全体として前方へ曲がる動きを表す;
伸展:脊柱が屈曲位から元へ戻ったり後方へ曲がる動きを表す;
左右側屈:頸椎・頭が肩の方へ傾く,腰・胸部が骨盤の方へ傾く動きを表す;
左右回旋:脊柱が水平面において左右へ回る動きを表す;
復元:脊柱が左右に側屈している状態から元へ戻る動きを表す。