カリン                  (バラ科ボケ属:落葉性高木:樹高 〜10メートル:花期 〜5月)

薬効
せき・たん 薬用酒
分布生育場所

科名:バラ科/属名:ボケ属
和名:花梨/花櫚/学名:Chaenomeles sinensis
中国原産の落葉性高木で日本全国で広く植栽されている。

バラ科マルメロ属マルメロ(榲桲)
カリンの花カリンの果実

見分け方・特徴

カリンは、落葉性の高木で高さが8メートルくらいにもなり、棘(とげ)状の小枝があって樹皮は緑褐色で鱗片状にはがれて雲紋状になります。
幹からのでる枝は細く四方に広がります。
葉は、有柄で倒卵形(とうらんけい)から楕円形で互生(ごせい)して、葉縁には鋸歯(きょし)が葉柄(ようへい)まであります。
若葉の裏面には綿毛がありますが、だんだん脱落して無毛になり、堅い葉になります。
花は、4〜5月ころに短枝の頂上に1個咲きます。花弁(かべん)は5枚で淡紅色の楕円形で、花径は2〜3センチで、花弁の基部は短柄様となっています。
雄ずいは多数で、果実は初め淡緑色ですが黄色に熟し、大きく長い西洋梨形をして大きさは10〜15センチです。
果実面は、少しでこぼこがあって、ろう質が分泌されて光沢があります。
暗黄色に熟してきて果実の重みで枝が湾曲して、強い芳香がり、落葉後も果実は枝に残ります。
果肉は堅く酸味が強く、生では食べることができませんが、籠(かご)に盛って室内に置いて香気を楽しむことができます。
採集と調整
カリンは、落葉後の10〜11月に、樹上に残って暗黄色に熟したものを採取して、10分程度湯通しして縦割りにして乾燥させます。
これを生薬(しょうやく)で、木瓜(もっか)といいます。

栽培
カリンは、挿し木により殖やすことができます。挿し木には、春ざしと夏ざしがあって、春ざしは、前年に伸びた枝を10〜15センチに切って、鹿沼土(かぬまつち)と川砂の混合土に挿し木をします。
また、夏ざしは、6〜7月上旬に、その年に伸びた枝を10〜15センチの長さに切って、春ざしと同様に挿し木をします。
半日日陰に置いて、葉水を与えるようにします。発根したら、鉢植えか、庭などに定植します。
薬効・用い方
有効成分:果実にリンゴ酸、クエン酸などの有機酸

鎮咳(ちんがい)薬として、木瓜(もっか)をさらに細かく刻んで、1日量5〜10グラムを適量の水で煎じて服用します。

カリン酒  
疲労回復の薬用酒として、果実(未熟果でも完熟果でも良い)
冬期に採取した果実5〜6個を、縦横6〜8個くらいに刻んで、ホワイトリカー1.8リットルに漬け込み砂糖300〜400グラムを入れます。
完全に熟成するまでには半年以上かかりますが、漬けてから2ヶ月程度で美しい淡黄色になり、芳香が出てくるので飲むことができます。
カリン酒の味は苦味(にがみ)がありますが、鎮咳(ちんがい)薬として効き目があります。
その他
カリンは、榠摣(べいさ)とも呼ばれていて、中国中部の原産です。古くに日本には渡来しましたが年代はわかっていないようです

カリンの材は、辺材が淡赤色で心材は暗紅褐色をしていて、非常に堅硬緻密でしかも粘りが強く、色調光沢ともに美しいので床柱、造作の装飾部分、家具、玉突台、杖、額縁、彫刻材料、バイオリンの弓などに用いられています

マルメロは、中央アジア原産、カリンは、中国原産で、マルメロ、カリン共に近縁種で落葉高木

カリンは、中国から古い時代に渡来して庭木や盆栽などに植栽されていた
マルメロは、寛永11年ころに、長崎に渡来したという記録が残っていて、現在は長野県を中心に栽培されている