カタクリ            (ユリ科カタクリ属:多年草 :草丈 10〜20センチ:花期 3〜5月)

薬効
かぜ 下痢 外傷(がいしょう) はれもの・できもの 湿疹(くさ)
分布生育場所

科名:ユリ科/属名:カタクリ属
和名:片栗/片籠/学名:Erythronium japonicum
九州を除く、日本各地の寒冷地の丘陵地、山野に自生。
新潟県入広瀬村のカタクリ、北米の亜高山帯のキバナカタクリ
新潟県朝日近辺のカタクリ

(←拡大画像はクリックします)-下段は、オオミスミソウ(雪割草)、角田山のオオミスミソウ(雪割草)/新潟県の花に指定
新潟県の佐渡、岩船地方、角田山などの海岸に近い砂地の斜面などに自生するスハマソウスハマソウ

見分け方・特徴

カタクリは、日本各地の山野や山すそに自生する多年草で、鱗茎(りんけい)は、地下に埋もれていて、数個の白色で肉質の鱗片(りんぺん)が重なっています。
早春に鱗茎(りんけい)より1本の茎を出して、葉は1〜2枚で対生(たいせい)して、長柄がありますが地中にあり、地上部に見える部分は楕円形の葉の部分です。
葉は、厚くて上面には淡緑色で紫色の斑紋(はんもん)があって、2枚の葉の間から20センチくらいの花茎(かけい)が伸びます。
早春に、この花茎(かけい)の先端に直径4〜5センチの淡紫色の花を少し下向きにつけます。
花の花被片(かひへん)は、6枚で開花後徐々にシクラメンのように外側に反転します。
カタクリの花被片(かひへん)の睡眠運動
採集と調整
カタクリは、5〜6月に鱗茎(りんけい)を掘り取り、外皮を除いて砕き、すり鉢でさらにこまかく砕いて水を加えて、木綿袋でこして、白く濁った水をそのまま放置して、デンプンが下に沈んだら、うえの澄んだ水を捨てます。
この作業を数回繰り返して、乾燥したものが良質のカタクリデンプン(片栗粉(かたくりこ))になります。

現在の片栗粉(かたくりこ)は、ジャガイモから採ったデンプンを使用しています。
薬効・用い方
外用には、すり傷、できもの、湿疹(しっしん)にはデンプンを患部にふりかけます。
かぜ、下痢、腹痛の後の滋養には、カタクリデンプンと水と砂糖を適量加えて、よくこねて、熱湯をいれて、くず湯にして飲みます。
この葛湯(くずゆ)の、薬効効果は、嘔吐、下痢、胃腸炎、滋養などで、病後などには効果があります。

食べ方:カタクリの全草を採取して、よく洗い、さっと茹でてから、おひたし、天ぷら、油いため、汁の実、あえもの、酢の物、煮びたしなどにします。
カタクリは、食べ過ぎると、下痢をおこす場合がありますので、旬の味を楽しむ程度が適量です。


その他
名の由来は、万葉集にもカタクリを、堅香子(かたかご)と呼んでいた
堅香子(かたかご)とは、カタクリは、種子から発芽して花を付けるまで、約8年が必要で、毎年少しづつ葉が1枚だけ大きくなり、葉に鹿の子模様があることから、片葉の鹿の子から「片葉の鹿の子」が転訛(てんか)して、堅香子(かたかご)の名になった
また、カタクリの果実は、イガにはいっている数個の栗の実のひとつに似ていることから、「片栗(かたくり)」の名になったという

大伴家持「万葉集」巻十九には、「もののふの やそ娘子らが汲みまがふ 寺井の上の堅香子(かたかご)の花」  堅香子(かたかご)の名は、カタクリでは無く、コバイモも言う説もあるという


江戸時代には、奈良県の宇陀地方で採取したカタクリは、上質のカタクリ粉として幕府に献上されてきましたが、時代とともに少しずつその量は減少してしまいましたが、今では、宇陀地方は、クズ粉の生産地となっています。

カタクリ粉の名前は今でも残っていますが、現在のカタクリ粉は、カタクリからとったものではなく、ジャガイモデンプンからとったもので、「片栗粉(かたくりこ)」という名前だけが残っているものです。

なお、当時のカタクリの生産の状況を伝える史跡として、奈良県の宇陀にある森野旧薬園では早春に独特の可憐な花を楽しむことができます。

カタクリは、夏緑林下(かりょくりんか)に非常に多く自生します。
早春に、暖かい日差しがあるころになって、まだ雪のにおいの残っている丘陵地を散策すると、まだ、芽のふかないコナラやクリ、ミズナラなどの落葉広葉樹の木の下では、柔らかい日射しの日溜りの中で、カタクリ、イチリンソウ、ニリンソウ、などの草花がいっせいに花を咲かせます。
その中でも、紫紅色のカタクリの花は美しいものです。

カタクリの、上層のクリなどの木本類が葉を出して、十分に生葉になるころには、林下の場所には陽光が少なくなってきて、その下層のカタクリ、イチリンソウなどは、開花、結実を終わって、翌年の生育のためのエネルギーを貯えたあとになります