生薬詳細

生薬名

クコシ

生薬英名

Lycium Fruit

生薬ラテン名

LYCII FRUCTUS

生薬和名

枸杞子

基原植物

Lycium chinense Mill.(クコ) 植物詳細

植物名

クコ

ラテン名

Lycium chinense Mill.

科名

Solanaceae

和科名

ナス科

一般名

クコ

一般英名

Chinese matrimony vine, Chinese wolfberry

品種等

分類

多年生木本

画像

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L.chinense(クコ)は高さ12mの無毛の落葉低木で,枝は直立せず叢生し,垂れ下がる.葉腋に短枝の変化した剌針を付ける.葉はだ円形~狭長だ円形で基部が狭くなって短柄となり,長さ24cm,12cm,全縁,軟質である.夏の頃,長さ 11.5cmの花を葉腋に付け,花がくは3中裂あるいは45歯裂し,花冠は淡~濃紫紅色の漏斗状で先端はやや深く5裂し,基部には暗紫紅色の脈がある.雄ずいは抽出し,花糸は基部付近に白色毛を叢生する.果実は卵形~狭卵だ円形で長さ1.52cmの液果,紅熟し,多くの種子がある.L.barbarum(ナガバクコ)はクコに似た樹形を呈し,葉はひ針形~長だ円状ひ針形,長さ23cm,46cmでやや肉質である.花は長さ12cm,花がくは通常2中裂し,花冠は淡紫紅色の漏斗状である.果実は球形~広だ円形で長さ0.82cm,紅熟し,ときには橙黄色のものがある.種子はクコより小さい.樹形あるいは樹冠は剪定や整枝により,さらには樹齢により多様な形態を示す.栽培化により生育環境の変化や優良系統の選抜が加わるため葉形や果形が変わり,葉長は10cmを超え,葉幅はクコで4cm,ナガバクコでは葉幅2cm,果実長は2cm程度と大型化する.

形態的特徴

生態的特徴

北海道を除く全国各地に自生し,気候及び土壌環境に対する適応力は比較的高い.クコやナガバクコの国外自生種は遺伝的変異が大きいため,栽培地の環境に適した在来品種が用いられる.

生育特性 http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif

寒さの区分

IIVI                              

日照条件

IIV

暖かさの区分

65以上

土壌分類

IIIV

土壌適正

排水及び保水の良い,地下水位の低い場所に適する.壌土,砂壌土に適する.中庸地に適する.

遮光

不要

画像

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写真ライブラリー

写真ライブラリー写真ライブラリー(Lycium chinense Mill.(クコ))

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Jクコ挿し木苗.98.6.26

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J種子大chinense,barbarum.98

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Jクコ発芽.98.4.22

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Jクコ挿し木.97.6.13

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Jクコ生育期L.chinense.97.4.24

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Jナガバ生育期L.barbarum.97.4.24

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クコ花

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クコ果実

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Jクコ果実L.chinense.95.9.24

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J果実比較.95.9.24

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Jクコ果収穫物.95.9.25

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J果実乾燥温度比較.98

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クコシ 血杞 天津 No.114 06.1.31

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Jクコドロオイムシ.98.4.22

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クコ花

文献情報 http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif


Wei, X. et al., Chemical study on the root barks of Lycium chinese mill. Zhongguo Yaoke Daxue Xuebao (2002), 33(4), 271-273.
Chin, Y.-W. et al., Hepatoprotective pyrrole derivatives of Lycium chinense fruits. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters (2003), 13(1), 79-81.
Han, S.-H. et al., A new phenolic amide from Lycium chinense Miller. Archives of Pharmacal Research (2002), 25(4), 433-437.
Terauchi, M. et al., New acyclic diterpene glycosides, lyciumosides IV-IX from Lycium chinense Mill. Natural Medicines (1998), 52(2), 167-171.
Yahara, S. et al., Studies on the solanaceous plants. XXVI. Cyclic peptides, acyclic diterpene glycosides and other compounds from Lycium chinense Mill. Chemical & Pharmaceutical Bulletin (1993), 41(4), 703-9.
Noguchi, M. et al., Constituents of a Chinese drug, Ti Ku Pi. I. Isolation and structure of lyciumamide, a new dipeptide. Chemical & Pharmaceutical Bulletin (1984), 32(9), 3584-7.

生薬名

クコシ

組織培養物及び効率的増殖法

植物体栽培及び植物の効率的生産法

栽培情報 植物体栽培及び植物の効率的生産法

植物名

クコ

ラテン名

Lycium chinense Mill.

種苗および品種

国内自生種を用いる.あるいは韓国のクコ在来品種及び中国のナガバクコ栽培種を用いる.

繁殖

実生,挿し木,取り木,株分け法がある.実生法は変異の多い集団から採種すると品質がばらつくため,優良株からの挿し木と取り木が最もよく利用される.優良株の条件としては,果実が大きい,果肉が厚い,種子が少ない,果色が紅色,質が柔軟なもの,さらには耐病,耐虫性があり,収量性の高いものが良い. 挿し木:盛夏と冬期を除きいつでも可能であるが,3~6月の春と910月の秋が最も適期である.新梢枝を用い,太さは鉛筆大がよく,挿し穂の長さは15 cm 位にする.高さ30 cm, 120 cm の床に12 cm 四方間隔で,挿し穂を10cm程度地中に挿す. 取り木:挿し木の困難な7~8月に行う.枝を地中にもぐらせ発根させる.約1週間で発根する. 株分け::10月末頃,株を分割して行う. 実生:雑種1代の能力を利用する場合や品種改良の手段として利用するのが良い. 株の更新はクコでは6~7年をめどに行う.ナガバクコは変異が多く,挿し木繁殖させるのが理想的であるが,発根率が悪く,通常は実生で繁殖する.クコは通常挿し木にて繁殖する.

栽培適性

果実生産を目的とする場合,肥沃地では茎葉が過繁茂となり果実のつきが悪くなることがあるため,肥沃地の必要はない.土壌は特に選ばないが,砂質及び粘土質の強い所は避け,また地下水位の低い所が良い. 中国西北,華北のナガバクコ栽培地における年平均気温は5.612.6°Cと比較的冷涼である.

播種,定植および育苗

 晩秋または春先に行う.クコでは条間120 cm, 株間40 cm, ナガバクコでは条間300 cm, 株間150 cm を基準とする.

肥料

管理

剪定:クコでは旧年枝からの結果枝の発生が少ないため,毎年地際から地上部を切除する.作業は冬から春先の萌芽前までに行う.ナガパクコでは2年枝に多く着果するため,強度の剪定は行わず,樹形を整えるためや徒長枝を除く程度とする.クコでは過繁茂を防ぐため,茎の長さが90cmになった5月中旬頃に先端を1015 cm 切除する(摘芯).7月中旬に2回目を行う.

病害虫駆除

病虫害の発生は極めて多い.主要なものは以下のとおり.  病害   炭そ病:開花中の7月中~下旬の発病が最も多い.果梗に発病し,開花以降幼果,熟果に移行し,黒褐色の小斑点を生じる.病状が進むと落果する.   ウドンコ病:発病初期,茎葉上に白色小形斑点を生じ,蔓延後には全体が白色を呈す.甚だしいときには黄変し,落葉する.  虫害   ミバエの一種(Neoceratitis sp.):幼虫による果肉の食害.被害果実は成熟時に変色萎縮し,ひからびる.被害は甚大.   トガリキジラミの一種(Trioza sp.):葉と汁液の吸食害.被害株は樹勢が衰弱し,生産量と品質の低下を招く. アブラムシの一種(Aphis sp.:幼芽に加害し,新芽が萎縮する.開花結実が不能となる. ハムシの一種(Lema sp):成虫と幼虫による葉の食害.発生後,数日内に葉を食いつくす.

収穫・調製

クコは定植後1年目から結実するが,本格的な収穫は2年目以降からとなる.果実は8月末から紅熟し,収穫盛期は911月である.品種により果実の成熟に早晩がある. 収穫後は速やかに果実を乾燥する.自然乾燥だけでは乾燥に時間がかかり,カビが発生し品質を落とす危険性があるため,温風乾燥を併用する.温風乾燥を行う場合,乾燥温度に注意し,初期には4045°Cの低温で行い,順次4550°C, 5055°Cに移行するのがよく,60°Cを超えないようにする.当初から50°C以上の高温で行うと果実は焦げたように黒ずんでしまう.

収量

品種,栽培法あるいは樹齢により変動が大きい.クコでは10a当たり乾果収量は概ね70100 kg, ナガバクコでは幼齢期(定植後5年以内)で150230 kg, 最盛期で380450 kg である.

参考情報(生物活性)

参考情報(生物活性)ファイル

特性分類表 http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif

表題

クコの特性分類表

画像、ファイル

クコ(特性分類表).pdf

備考

栽培暦 http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif

表題

クコ栽培暦

画像、ファイル

クコ(栽培暦).pdf

備考

栽培方法関連データ http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif

栽培方法関連写真データ http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif

種子発芽情報データ http://mpdb.nibiohn.go.jp/mpdb/img/plusminus01-001.gif

備考

備考ファイル

さく葉標本情報

トランスクリプトーム・ゲノミクス情報

稀少植物情報

保有資源情報

導入年

保有研究部

導入番号

1958

種子島研究部

0031-58TN

1964

北海道研究部

1059-64HK

1989

北海道研究部

12872-89HK

部位

果実

局方収載

食薬区分

非医(根・皮は医)

生薬成分

カロチノイド:zeaxanthin(果皮の紅色色素),physalien など その他:betaine,β-sitosterollinoleic acid など

成分(化合物)

性状

先のとがった紡錘形を呈し,長さ620 mm,径38 mm,果皮は赤色暗赤色を呈し,表面に粗いしわがある.横切面をルーペ視するとき果実は2室に分かれ,内部に淡褐色淡黄褐色で径約2 mmの扁平な腎臓形の多数の種子がある.

用途

除風,補精気,益気の作用があり、虚労、心病に応用される

調製法

果実は8月末から紅熟し,収穫盛期は911月である.品種により果実の成熟に早晩がある.収穫後は速やかに果実を乾燥する.自然乾燥だけでは乾燥に時間がかかり,カビが発生し品質を落とす危険性があるため,温風乾燥を併用する.温風乾燥を行う場合,乾燥温度に注意し,初期には4045℃の低温で行い,順次4550, 5055℃に移行するのがよく,60℃を超えないようにする.当初から50℃以上の高温で行うと果実は焦げたように黒ずんでしまう.

エキス収率

文献情報

処方

一貫煎,杞菊地黄丸

モデル試料  1

遺伝子情報  

日本薬局方情報

定量法

確認試験法

確認試験法(TLC) 各種試験法詳細

生薬名

クコシ

試験名称

確認試験法(TLC)

分析条件

本品の粉末1.0gに酢酸エチル5mLを加え,15分間振り混ぜた後,ろ過し,ろ液を試料溶液とする.この液につき,薄層クロマトグラフィー〈2.03〉により試験を行う.試料溶液20μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする.次にヘキサン/酢酸エチル混液(101)を展開溶媒として約10cm展開した後,薄層板を風乾するとき,Rf0.6付近に黄色の主スポットを認める.

備考


画像データ

画像

http://mpdb.nibiohn.go.jp/CONTENTS_ROOT/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_DATA/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_FILE/thumbnail/1318.jpgモデル試料のTLC画像と比較する

備考

Merck社製とWako社製TLC plateの比較および、7cm10cm展開の比較 Merck社製 TLC plate7cm展開) Rf値:0.60 展開時間:8分 ① 中国・内蒙古 ② 中国・寧夏

 

画像

http://mpdb.nibiohn.go.jp/CONTENTS_ROOT/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_DATA/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_FILE/thumbnail/1319.jpgモデル試料のTLC画像と比較する

備考

Merck社製とWako社製TLC plateの比較および、7cm10cm展開の比較 Merck社製 TLC plate10cm展開) Rf値:0.55 展開時間:12分 ① 中国・内蒙古 ② 中国・寧夏

 

画像

http://mpdb.nibiohn.go.jp/CONTENTS_ROOT/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_DATA/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_FILE/thumbnail/1320.jpgモデル試料のTLC画像と比較する

備考

Merck社製とWako社製TLC plateの比較および、7cm10cm展開の比較 Wako社製 TLC plate7cm展開) Rf値:0.51 展開時間:6分 ① 中国・内蒙古 ② 中国・寧夏

 

画像

http://mpdb.nibiohn.go.jp/CONTENTS_ROOT/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_DATA/JP_IDENTIFICATION_PHOTO_FILE/thumbnail/1321.jpgモデル試料のTLC画像と比較する

備考

Merck社製とWako社製TLC plateの比較および、7cm10cm展開の比較 Wako社製 TLC plate10cm展開) Rf値:0.54 展開時間:9分 ① 中国・内蒙古 ② 中国・寧夏

乾燥減量

灰分 各種試験法詳細

生薬名

クコシ

試験名称

灰分

分析条件

灰分〈5.01〉 8.0%以下.

備考

酸不溶性灰分 各種試験法詳細

生薬名

クコシ

試験名称

酸不溶性灰分

分析条件

酸不溶性灰分〈5.01〉 1.0%以下.

備考

エキス含量 各種試験法詳細

生薬名

クコシ

試験名称

エキス含量

分析条件

エキス含量〈5.01〉 希エタノールエキス 35.0%以上.

備考

精油含量

純度試験 各種試験法詳細

生薬名

クコシ

試験名称

純度試験

分析条件

異物〈5.01〉 本品は果柄及びその他の異物2.0%以上を含まない.

備考

その他

NMR情報  

漢方処方情報

生物活性情報