健康保険

日本における健康保険(けんこうほけん、英語: Employee Health Insurance)とは、雇用者福利厚生を目的に社会保険方式で運営される医療保険(被用者保険、職域保険)のうち、健康保険法に基づくもの。医療保険事務上の略称は社保(しゃほ)と言われ、国保(こくほ)と呼ばれる地域保険と区別される。なお、公務員などの共済組合加入者の被用者保険については、健康保険法ではなく国家公務員共済組合法などに基づく共済組合でカバーされる。

日本の国民医療費(制度区別、平成25年度)[1]

公費負担医療給付

2兆9792億円(7.4%)

後期高齢者医療給付

13兆821億円 (32.7%)

医療保険等給付
18兆8109億円
(47.0%)

被用者保険
8兆8815億円
(22.2%)

協会けんぽ

4兆4926億円 (11.2%)

健保組合

3兆3238億円 (8.3%)

船員保険

189億円 (0.0%)

共済組合

1兆461億円 (2.6%)

国民健康保険

9兆5331億円 (24.0%)

その他労災など

2981億円 (0.7%)

患者等負担

4兆9918億円 (12.5%)

軽減特例措置

1970億円 (0.5%)

総額

40兆610億円

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ae/HealthInsuranceCard.jpg/250px-HealthInsuranceCard.jpg

 

健康保険被保険者証カード型)。いわゆる保険証。
当時の政府管掌健康保険のもの。同保険の後継である、全国健康保険協会各支部が発行する現行のカードは水色カードとなっている。
(上:表、下:裏)

目次

1 概略

1.1 保険者

1.2 保険医療機関

2 適用事業所

3 被保険者

3.1 一般の被保険者

3.1.1 適用除外

3.1.2 非正規労働者

3.2 被扶養者

3.3 任意継続被保険者

3.4 特例退職被保険者

4 保険料

4.1 標準報酬月額

4.2 標準賞与額

4.3 保険料率

4.4 保険料の免除

4.5 滞納に対する措置

4.6 国庫の負担・補助

5 保険給付

5.1 被保険者本人

5.2 被扶養者

5.3 自己負担金軽減のための支給

5.4 受給権の保護

5.5 給付制限・不正利得の徴収

6 不服申立て

7 時効

8 他の医療保険制度と健康保険の関係

8.1 第三者行為との関係

9 課題

9.1 健保組合の財政悪化

9.2 医療機関による健康保険の不正受給

10 脚注

11 出典

12 参考文献

13 関連項目

14 外部リンク

 

 

 

概略

健康保険法については以下では条数のみ記す。

健康保険制度は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする(第1条)。業務上の疾病等については労災保険の対象となる。業務上か業務外かはっきりしない場合は、一応業務上として取り扱い、最終的に業務外と判断された場合はさかのぼって健康保険を適用する(昭和28年4月9日保分発2014号)。健康保険と労災保険のどちらの給付も受けられないケースがあったことから[* 1]、平成25年に第1条を改正し、広く医療を保障する観点から、労災保険の給付が受けられない場合には、原則として健康保険の給付が受けられることとするものである。

健康保険制度については、これが医療保険制度の基本をなすものであることにかんがみ、高齢化の進展、疾病構造の変化、社会経済情勢の変化等に対応し、その他の医療保険制度及び後期高齢者医療制度並びにこれらに密接に関連する制度と併せてその在り方に関して常に検討が加えられ、その結果に基づき、医療保険の運営の効率化、給付の内容及び費用の負担の適正化並びに国民が受ける医療の質の向上を総合的に図りつつ、実施されなければならない(第2条)。

健康保険法の規定上は厚生労働大臣が幅広い権限を有しているが、実際の事務(次にあげる事務)は日本年金機構(1,2)、地方厚生局長又は地方厚生支局長(3)に委任・委託されている。

被保険者の適用除外の承認、任意適用事業に係る認可、被保険者資格得喪の確認、標準報酬月額・標準賞与額の決定、滞納処分の事務

現物給与の価額の決定、保険料等の徴収・督促に係る事務について、その事前・事後の事務処理

保険医療機関等及び指定訪問看護事業者に係る指定・指定取り消し、保険医に係る登録等の権限

保険者

保険者(保険事業の経営主体として保険給付等の業務を行う者)は、全国健康保険協会及び健康保険組合とされる。ただし、日雇特例被保険者については全国健康保険協会のみが保険者となり、健康保険組合が保険者となることはない。

健康保険法に基づく保険者 (平成25)[2]

保険者

加入者数

組合数

 

加入者計

本人(被保険者)

家族(被扶養者)

 

全国健康保険協会

34877千人

19631千人

15246千人

N/A

 

健康保険組合

29504千人

15533千人

13951千人

1443組合

 

日雇特例被保険者

18千人

12千人

6千人

N/A

 

保険医療機関[編集]

健康保険法をはじめとする医療保険各法の規定により療養の給付等を行う病院診療所薬局として厚生労働大臣の指定を受けると、「保険医療機関」「保険薬局」と呼ばれる。指定を受けようとする医療機関等は、その開設者が厚生労働大臣に申請を行い、厚生労働大臣は地方社会保険医療協議会に諮問の上、当該指定を行う。指定の効力は、指定の日から6年間である。なお厚生労働大臣は、指定の取消の日から5年を経過しないときや、保険医療機関等として著しく不適当な場合等は、地方社会保険医療協議会の議を経たうえで、その指定をしない、あるいは申請に係る病床の全部または一部を除いてその指定を行うことができる。

保険医療機関において診療に従事する医師歯科医師、保険薬局において調剤に従事する薬剤師は、全員が厚生労働大臣の登録を受けた医師・歯科医師(保険医)・薬剤師(保険薬剤師)でなければならない(第64条)。保険医等の登録に有効期間の定めはないので、原則として終身有効である。なお、個人開業の保険医等で、かつ当該開設者たる医師等のみが診療又は調剤に従事している場合、当該保険医等に登録があった場合は、その診療所又は薬局についても保険医療機関等の指定があったものとみなされる。

保険医療機関として指定を受けた病院は、保険者を2,3に限定してその被保険者・被扶養者のみを診療することはできない。なお、健康保険組合直営病院等は、当該健康保険組合の被保険者のみを診療している場合は保険医療機関又は保険薬局の指定を受ける必要はない(医師・薬剤師の全員が保険医・保険薬剤師である必要はない)が、指定を受けると組合員以外の者にも開放しなければならない(全員が保険医・保険薬剤師でなければならない)。

個人開業の保険医療機関(病院及び病床を有する診療所を除く)は、その指定の効力を失う日前6ヶ月から同日前3ヶ月の間に、別段の申出をしないときは、保険医療機関等の指定の申請(更新申請)があったものとみなされる(指定申請手続きの簡素化)。

保険医療機関又は保険薬局が保険医療機関又は保険薬局であることを辞退する場合、保険医又は保険薬剤師がその登録の抹消を求めるときは、1月以上の予告期間を設けなければならない(第79条)。

保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間、患者の診療録にあってはその完結の日から5年間保存しなければならない。

適用事業所

加入は原則として事業所単位(本社、支社、工場など)で行われる[* 2]。健康保険が適用となる事業所は、加入が義務付けられている事業所(強制適用事業所)と、厚生労働大臣の認可を受けて加入する事業所(任意適用事業所)がある。適用事業所は健康保険と厚生年金とで共通である[* 3]

強制適用事業所

国・地方公共団体・法人事業所(法人の種類は問わない)で、常時従業員を使用するもの(第3条3項2号)

個人事業所のうち、適用業種である事業の事業所で、かつ常時5人以上の従業員を使用する事業所(第3条3項1号)

「5人」の算定に当たっては、被保険者となるべき者だけでなく、適用除外の規定によって被保険者とすることができない者であってもその事業所に常時使用されている者であればこれを算入する。

任意適用事業所

強制適用事業所に該当しない事業所であって、任意適用の申請をし、厚生労働大臣の認可を受けた事業所(第31条)

「強制適用事業所に該当しない事業所」とは、すなわち、個人事業所のうち、非適用業種(農林・水産・畜産業、理美容業、映画の製作その他興行の事業、接客娯楽業、法務の事業、宗教の事業、等々)の事業所、あるいは適用業種の事業所であっても常時5人未満の従業員を使用する事業所、を指す。

任意適用の認可を受けようとするときは、当該事業所に使用される者の2分の1以上の同意が必要である。「2分の1」の算定に当たっては被保険者となるべき者に限られる。

強制適用事業所がその要件に該当しなくなった場合、任意適用事業所の認可があったものとみなされる。

「適用業種」とされるのは、以下の業種である。

物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業

土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業

鉱物の採掘又は採取の事業

電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業

貨物又は旅客の運送の事業

貨物積卸しの事業

焼却、清掃又はとさつの事業

物の販売又は配給の事業

金融又は保険の事業

物の保管又は賃貸の事業

媒介周旋の事業

集金、案内又は広告の事業

教育、研究又は調査の事業

疾病の治療、助産その他医療の事業

通信又は報道の事業

社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業

労災保険や雇用保険とは異なり、適用事業所でない事業所が、被保険者となるべき者からの希望があっても適用事業所とする義務はない。

2以上の事業主が同一である場合は、厚生労働大臣の承認を受けて当該2以上の事業所を一の適用事業所とでき(一括適用事業所、第34条。一般的には法人一括の単位で適用されている)、承認にあたっては以下の要件をすべて満たすことが必要となる。

一の適用事業所にしようとする複数の事業所に使用されるすべての者の人事、労務及び給与に関する事務が電子計算組織により集中的に管理されており、適用事業所の事業主が行うべき事務が所定の期間内に適正に行われること。

一括適用の承認により指定を受けようとする事業所において、1.の管理が行われており、かつ、当該事業所が一括適用の承認申請を行う事業主の主たる事業所(本社)であること。

承認申請にかかる適用事業所について健康保険の保険者が同一であること。

協会けんぽの適用となる場合は、健康保険・厚生年金の一括適用の承認申請を合わせて行うこと。

一括適用の承認によって厚生年金保険事業及び健康保険事業の運営が著しく阻害されないこと。

もっとも中小の事業所では人事・設備等の面で一括適用事業所の承認を受けるための要件を満たせない場合も多いことから[* 4]、人事や給与等の管理が本社で行われている被保険者については、その者が勤務する事業所にかかわらず、健康保険・厚生年金の手続きを本社において行う(本社における被保険者として取り扱う)ことが認められている(本社管理、平成18年3月15日庁保険発第0315002号)。これらの場合、被保険者が本社・支社間で転勤したとしても、その都度の被保険者資格の取得・喪失の手続きは不要となる。

事業主は、健康保険に関する書類を、その完結の日から2年間保存しなければならない(規則第34条)。初めて適用事業所となった事業主、事業の廃止等により適用事業所に該当しなくなった事業主、事業主の変更があった場合[* 5]は、当該事実のあった日から5日以内に所定の届出をしなければならない。

被保険者

被保険者には、適用事業所に使用される者である「被保険者」(以下、「一般の被保険者」と表記[* 6])、及び「日雇特例被保険者」、適用事業所に使用されなくなった後に任意で加入する「任意継続被保険者」及び「特例退職被保険者」(後述の「退職後の健康保険」を参照)との4種類がある(第3条1項、2項、4項)。被保険者資格の取得・喪失は、原則として保険者等の確認によってその効力を生じ、事業主が資格取得の届出を行う前に生じた事故であっても、さかのぼって資格取得の確認が行われれば、保険事故となる。

一般の被保険者

一般の被保険者は、以下のいずれかに該当するに至った日から、被保険者の資格を取得する。事業主は、一般の被保険者資格を取得した者があるときは、5日以内に日本年金機構または健康保険組合に被保険者資格取得届(当該被保険者が被扶養者を有する場合は被扶養者届も併せて)を提出しなければならない。

適用事業所に使用されるに至ったとき

「使用されるに至ったとき」とは、事実上の使用関係の発生した日をいう。資格取得届のもれがあった場合でもすべて事実の日にさかのぼって資格取得させるべきものである。また、臨時や試用期間などの理由で雇用者の出入りが頻繁で永続するか不明といった理由で資格取得を遅延させることは出来ない。

使用されている事業所が適用事業所になったとき

適用除外に該当しなくなったとき

同時に2以上の事業所に使用される被保険者(日雇特例被保険者を除く)は、2以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内に、その被保険者が、その保険者(いずれも協会けんぽで業務が2以上の年金事務所に分掌されているときは、その年金事務所)を選択する。

事業所が適用事業所となった場合、労災保険雇用保険とは異なり、法人から労働の対償として報酬を受け取っていれば、法人の代表者・役員も含むすべての被用者は原則として被保険者となる(昭和24年7月28日保発74号)。外国人であっても適法に就労していれば一般の被保険者となる。ただし個人事業主は「使用される者」とはみなされないので、被保険者とならない。また、被保険者・被扶養者が法人の役員(取締役、業務執行社員、執行役、ほか名称を問わずこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有すると認められるものを含む)である場合に、その業務上の負傷については、使用者側の責めに帰すべきものであるため、労使折半の健康保険から保険給付を行うことは適当でなく、原則として保険給付の対象外とされる(第53条の2)。

被保険者が5人未満である小規模な適用事業所に所属する法人の代表者であって一般の労働者と著しく異ならないような労務に従事している者については業務上の事由による疾病等であっても健康保険による保険給付の対象とする(第53条の2、規則第52条の2)。従来、当面の暫定措置とされていて(平成15年7月1日保発0701002号)、さらに傷病手当金は当措置の対象外とされてきたが、平成25年の改正により第53条の2が追加され前述の通知が廃止されたことで、傷病手当金も含めて措置が恒久化された。

休職者については、休職期間中に給与の支給がなされているか、一時的に給与の支払いが停止されているにすぎない場合は、被保険者資格を存続させる。しかし休職中に給与が全く支給されず、実質的に使用関係が消滅している場合は、被保険者資格を喪失させる。

被保険者が解雇された場合においてその解雇の効力を争う場合、解雇行為が明らかに労働法規や労働協約に違反している場合を除き、事業主から資格喪失届の提出があったときは、たとえ当該事件が係争中であったとしても一応資格を喪失したものとして受理する扱いになっている(昭和25年10月9日保発68号)。

労働組合専従者については、従前の事業主との関係では被保険者資格を喪失するが、労働組合に使用される者として一般の被保険者となる(昭和24年7月7日職発921号)。なお、共済組合の組合員については、一般の被保険者であっても原則として健康保険法による保険給付は行わず、保険料も徴収しない。

適用除外

以下のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合(原則として1〜4。詳細は、日雇健康保険を参照)を除いて、被保険者となることができない(適用除外、第3条1項但書)。1~5は厚生年金と共通である。

臨時に使用される者で、日々雇い入れられる者

ただし、その者が1月を超えて引き続き使用されるに至ったときは、その超えた日から一般の被保険者となる。

臨時に使用される者で、2月以内の期間を定めて使用される者

ただし、その者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至ったときは、その超えた日から一般の被保険者となる。

季節的業務に使用される者

ただし、その者が当初から継続して4月を超えて使用される予定である場合は、その当初から(使用されるに至った日から)一般の被保険者となる。業務の都合等によりたまたま継続して4月を超えて使用されるに至ったとしても一般の被保険者とはならない。

需要の関係で季節により繁閑の差がある事業は、「季節的事業」とはならないので、当該事業に使用される者は一般の被保険者となる。

臨時的事業の事業所に使用される者

ただし、その者が当初から継続して6月を超えて使用される予定である場合は、その当初から(使用されるに至った日から)一般の被保険者となる。業務の都合等によりたまたま継続して6月を超えて使用されるに至ったとしても一般の被保険者とはならない。

事務所で所在地が一定しないものに使用される者

この場合、その者はたとえその事業所に長期にわたって使用されたとしても被保険者とはならない。

船員保険の強制被保険者

この者は船員保険から給付を受けることができるため、健康保険の適用は除外される。船員保険の疾病任意継続被保険者(健康保険における任意継続被保険者に相当)については、健康保険の適用を除外されない(健康保険の適用事業所に使用されれば、健康保険の被保険者となり、疾病任意継続被保険者の資格を喪失する)。

国民健康保険組合の事業所に使用される者

この者は国民健康保険から給付を受けることができるため、健康保険の適用は除外される。

後期高齢者医療の被保険者

この者は後期高齢者医療から給付を受けることができるため、健康保険の適用は除外される。

厚生労働大臣、健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者

国民健康保険の事業運営上必要な人物については、当該承認により、国民健康保険の被保険者に移行することができる(国民健康保険の被保険者であるべき期間に限られる)。

非正規労働者

短時間就労者(パートタイマー)として使用される者の加入については、身分関係ではなく、職務内容を総合的に勘案して常用的雇用関係が認められるかにより判断される。具体的な取扱い基準については、次のいずれにも該当する場合、一般の被保険者となる。

1日又は1週間の勤務時間が、その会社で働いている一般の従業員の勤務時間の概ね4分の3以上であること。

1ヶ月の所定勤務日数が、その会社で働いている一般の従業員の概ね4分の3以上であること。

短時間正社員(フルタイムの正社員と比してその所定労働時間が短い正規型の労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結しているもの)については、次のいずれにも該当する場合、一般の被保険者となる。

労働協約、就業規則及び給与規定等に、当該短時間正社員に係る規定があること。

期間の定めのない労働契約が締結されていること。

給与規定等における、時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同一事業所に雇用される同種フルタイムの正規型の労働者と同等であって、かつ就業実態も当該諸規定に即したものになっていること。

派遣労働者は、派遣元の事業所における被保険者となる。

同一の事業所において雇用契約上いったん退職した者が1日の空白もなく引き続き再雇用された場合には、事実上の使用関係は継続しているので、被保険者資格も継続する。有期の雇用契約又は任用が1日ないし数日の間を空けて再度行われる場合においても、雇用契約又は任用の終了時にあらかじめ、事業主と被保険者との間で次の雇用契約又は任用の予定が明らかであるような事実が認められるなど、事実上の使用関係が中断することなく存続していると、就労の実態に照らして判断される場合には、被保険者資格を喪失させることなく取り扱う必要がある(就労の実態に照らして個別具体的に判断する。平成26年1月17日保保発0117第2号)。ただし、60歳以上の者の再雇用については、使用関係をいったん中断したものとみなして取扱っても差し支えない(平成25年5月31日保発0531第1号)。そうすることで、再雇用に伴う給与の低下に即応して在職老齢年金の支給停止額を減額改定できる(特別支給の老齢厚生年金の受給額を多くできる)ため等である。

登録型派遣労働者の就業と就業の間の待機期間が、1月を超えないと確実に見込まれる場合は、待機期間中も引き続き被保険者資格を存続させて差し支えない。1月以内に次回の雇用契約(1月以上のものに限る)が締結されなかった場合には、その雇用契約が締結されないことが確実になった日又は当該1月が経過した日のいづれか早い日をもって使用関係が終了したものとして資格喪失する。

2009年にOECDは日本に対し、非正規労働者に対しても現在の国民健康保険ではなく被用者保険に加入させるべきと勧告した[3]。2012年に被用者保険の適用拡大法案が成立し、2016年10月に施行される見込みとなった[4]。該当者は「1週間の所定労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上、勤務期間1年以上、従業員501人以上の事業主に使用される者、学生以外」これらすべて該当する者であり、約45万人が対象となる見込み[5]

被扶養者

被保険者によって生計を維持されている者で所定の要件を満たす者は、保険者の認定を受けることにより被扶養者としてその保険の適用を受けることができる。保険料免除の一類型(特約)であり、被扶養者に保険料の負担はなく、被扶養者の有無、増減で被保険者の保険料に変動はない。元来は収入を得られない子供や障害者、長期入院者、専業主婦、年老いた親などが想定されていたが、家族や社会環境の変化などにより、その態様は変化している(専業主夫、リストラされた夫、資格試験受験生、いわゆるフリーターなど)。20歳以上60歳未満の配偶者は、被扶養者認定があったときは国民年金第3号被保険者として取り扱うこととされる(昭和61年4月1日庁保険発18号)。事業主は、その使用する一般の被保険者が被扶養者を有するに至ったときは、5日以内に被扶養者異動届を機構又は健康保険組合に提出しなければならない。なお任意被保険者が被扶養者を有するに至った場合は、被保険者自らが提出する。

被扶養者として認定される要件としては、以下のように定められている(第3条7項)。ただし後期高齢者医療の被保険者等でないことが必要である。

被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下同じ)の直系尊属配偶者、子、孫及び弟妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの

「生計維持」が認定されるためには、認定対象者が被保険者と同一世帯の場合は、認定対象者の年収が130万円未満(認定対象者が60歳以上の者や障害者(障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害であること)である場合については年収180万円未満)で、かつ被保険者の年収の1/2未満であること。なお、この要件に該当しない場合であっても、認定対象者の年収が130万円未満であって、かつ被保険者の年収を上回らない場合においては、被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められれば、被扶養者として認定される。

認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合は、年収130万円未満、かつ年収が被保険者からの援助による収入額より少ないこと。

「年収」とは、給与、年金、失業等給付、恩給、不動産収入等、定期的な収入である。給与の場合は、勤労の対価として支払われているものすべてが対象であり、諸手当・交通費込み、税引前の額である(被保険者の保険料算定における報酬と同様)。預貯金、相続による一時的な収入、負債などは収入条件の判定から除外される。

「同一世帯」に属する者とは、被保険者と住居及び家計を共同にする者をいう(昭和27年6月23日保文発3533号)。戸籍が同一であるか、また被保険者が世帯主であるかは問われない。また病気や就学等で一時的に別居している場合でも同一世帯と認められる。

夫婦共同扶養の場合(共働き夫婦など)、原則として年収の多いほうの被扶養者とする。夫婦双方の年収が同程度の場合は、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。

被保険者の3親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

「被保険者の父母」であれば同一世帯要件は不要であるが、「被保険者の配偶者の父母」であれば同一世帯要件が必要となる。

被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

届出上の配偶者の父母・子であれば「同一世帯」要件は不要であるが、届出ない配偶者の父母・子の場合は「同一世帯」要件が必要となるのである。

届出上の配偶者とは異なり、届出ない配偶者の祖父母、孫、弟妹は、「同一世帯・生計維持」であっても被扶養者とは認定されない。

前号の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

被扶養者の申請の際に通常必要な物は被保険者及び事業主の印鑑のみである(被扶養配偶者が国民年金の第3号被保険者になる場合は被扶養配偶者分の印鑑も必要となる)。というのも、被扶養者の収入については、所得税法上の被扶養配偶者・被扶養親族であることを事業主が確認した場合には、その旨の記載または確認欄に丸印を付ければ添付書類を省略できるからである。なお、被扶養者等に非課税の収入等がある場合には、当該事業主による確認ができないため添付書類が必要となる。また、被保険者と同一世帯に属することが認定の要件となる被扶養者等の場合のみ住民票が、被扶養者等が仕送りを受けている場合には仕送りが確認できる書類が必要となる。その他、事例により添付書類が異なるため、事前に年金事務所等に確認をすることが必要である。

扶養状況を確認するために、保険者は被扶養者に係る確認(扶養現況調査)を行うことができるとされる(規則第50条)。調査票に回答と収入や居住状態の立証書類を添付して保険者に提出する。収入が多いなど上記法定の認定条件を満たさない場合、調査票の提出がない場合、勤務先の社会保険に加入していた場合は被扶養者資格がなくなる(国民健康保険などに加入する)。扶養現況調査は健康保険の適正な適用に関し重要な役割を果たしている(不当な社会保険料免除を防ぐ)が、膨大な数の被扶養者について確認を行うため、対応に苦慮している保険者も多い。厚生労働省は1年に1回以上(毎年一定の期日を定めて)実施するように保険者に指導している

任意継続被保険者

以下のすべての要件を満たす者は、保険者(協会、健保組合)に申し出ることによって、被保険者資格喪失後も継続して当該保険者の被保険者となる(「任意継続被保険者」、「任意継続加入員」、「任意継続組合員」などと呼ばれるが、以下、本項では「任意継続被保険者」で統一する)。任意継続被保険者は一般の被保険者資格を喪失した日に、その資格を取得する。家族等も被扶養者として加入する事ができ、要件は基本的に在職中の被扶養者認定の場合と同様である。

適用事業所に使用されなくなったため、又は適用除外の規定に該当するに至ったため一般の被保険者資格を喪失した者であること。

任意適用事業所の取消によって資格を喪失した場合は任意継続被保険者となることはできない。

資格喪失の日の前日まで継続して2月以上一般の被保険者(共済組合の組合員である被保険者を除く)であったこと

共済組合の組合員は、共済組合の任意継続組合員制度の適用を受けるため、任意継続被保険者となることはできない。なお、共済組合等は「2月以上」が「1年と1日以上」となる場合が多い。

「2月以上」は、継続して2月以上であって、通算して2月以上でよいわけではない。原則として同一保険者であるが、加入していた健康保険組合が解散した場合には、保険者が自動的に全国健康保険協会に引き継がれるので「解散前後合わせて継続して2ヶ月以上」ということになる。

船員保険の被保険者又は後期高齢者医療の被保険者等でないこと

それぞれ当該制度がら給付を受けることができる者については、任意継続被保険者となることはできない。

資格喪失日(退職日の翌日)より20日以内に申し出ること

初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付したこと

初めて納付すべき保険料をその納付期日までに納付しなければ、その者は任意継続被保険者とならなかったものとみなされる。

保険者は、正当な理由があると認めるときは、期間経過後の申出・納付の遅延であっても受理することができる。

しかし、原則地震等により金融機関の機能が麻痺した場合など、天災地変等を理由[* 7]とした未納以外は許容されないので、法律の不知[6]、単純な払い忘れ、勘違い、口座振替の場合の残高不足、最寄の金融機関のATMが故障した、などの理由では被保険者資格の復活はありえないものとされる。これは、任意継続制度があくまでも任意による継続であるため、保険料納付の他各種届出等の事務を自ら行い、その結果(保険料の納付忘れ等の結果)はすべて自己に帰属するという一種の自己責任の法律論による。自己の責任または意思において資格が喪失したので、審査請求等法的な不服申し立ては正義に反し認められない。なお、総務省に対しあっせんの申し立てがあったため、1回目についてに資格の復活を認めやすくしている保険者もあるが、だからといって必ず認められるものではないことに留意すべきである。

任意継続被保険者は、以下のいずれかに該当するに至った日の翌日(太字文の場合は当日)にその資格を喪失する。

任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき

つまり、退職後も引き続き健康保険に加入することができるのは、「最高2年間」ということになる。

死亡したとき

保険料(初めて納付ずべき保険料を除く)を納付期日までに納付しなかったとき

保険料滞納喪失後の保険料納付はできず、一度資格を喪失すると再度任意継続被保険者となることはできないが、保険者が未納について相当な理由があると認めた場合にはこの限りでない。協会けんぽの場合、保険料は初回を除き毎月10日(土日祝の場合は翌営業日)が納付期限となる。

一般の被保険者となったとき

船員保険の被保険者となったとき

後期高齢者医療の被保険者等となったとき

任意継続の保険料については、事業主負担がなくなるため、被保険者の全額負担となり、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。基本的に天引きの金額の約2倍から2.5倍になる(徴収する保険料の上限を設定している保険者もある)。各種の届出も事業主経由ではなく自ら行わなければならない。

被扶養者として他の保険に加入したり、国民健康保険の保険料が安いからといって任意に切り替えることはできないが、実際のところは保険料の納付を故意に行わないことによって被保険者資格を喪失して国民健康保険に切り替える人も多い(特に4月)[* 8]。なお、健康保険組合や共済組合によっては任意に資格喪失をすることが可能なところも存在する。将来の一定期間(6月又は1年)分の保険料を前納することもでき、この場合年4分の利率による利息相当額が割引される。

納付後、同月内に健康保険(協会けんぽ、共済組合、健康保険組合、国民健康保険組合(厚生年金適用事業所に限る))の被保険者となった場合には後日還付される(ただし資格取得月を除く)。

特例退職被保険者

厚生労働大臣の認可を受けて、「特例退職被保険者」制度を設けている健康保険組合(特定健康保険組合)がある。厚生年金受給権がある者で、被保険者期間が20年以上または40歳以降10年以上ある者が継続加入できる(任意継続被保険者と異なり、「2年間」といった期間制限はない)。なろうとする者は、年金証書等が到達した日の翌日から起算して3月以内に申し出なければならない(健保組合が新たに特定健保組合の認可を受けた場合はこの限りではない。規則第168条4項)。任意継続被保険者である者は特例退職被保険者となることはできない。任意性の保険であるため、保険料納付や資格喪失等に関しては任意継続被保険者と共通している。但し、この制度を持つ健康保険組合は全国約1,500組合のうち70弱の比較的大規模な組合だけである。現役世代を圧迫するとして廃止や廃止の検討をしている組合が出てきている。

保険料

健康保険の保険料は、厚生年金保険料と同様、事業主と被保険者とで保険料を折半して負担する。被保険者に支払うべき報酬がなくても、事業主は被保険者分も含めた全額の支払い義務を負う(第161条)。支払期日は翌月末日である。ただし、任意継続被保険者の場合は、本人が全額負担しなければならず、支払期日はその月の10日(初めて納付すべき保険料については、保険者が指定する日)である。事業主は原則として被保険者の負担すべき前月分(月の末日に退職し、報酬もその月に支払われる場合については前月分及び当月分)の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。なお、任意継続被保険者は将来の一定期間の保険料を前納することができるが、一般の被保険者を使用する事業主は前納不可である。

ここでの「報酬」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」(第3条5項)。また「賞与」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう」(第3条6項)。1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される賃金が分割して毎月支払われる場合は「賞与」として扱う。「賞与」に該当するかどうかは、毎年7月1日現在における支給実態によって定め、年度途中で給与規定の改定があっても、7~9月に随時改定を行わない限り、次の定時決定まで扱いを変更しない。

報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合(現物給与)においては、その価額は、その地方(被保険者の勤務地(本社管理の場合も本社ではなく勤務地)。派遣労働者については派遣元の所在地)の時価によって、厚生労働大臣が定める。ただし健康保険組合の場合は、規約で別段の定めをすることができる(第46条)。 なお、解雇予告手当(労働基準法第20条)や傷病手当金・出産手当金は「報酬」には含まれないので、これらから保険料を控除することはできない。退職金は原則として報酬や賞与には該当しないが、被保険者の在職時にその全部又は一部が給与や賞与に上乗せされて前払いされる場合には該当する。

組合健保は、規約で定めるところにより、一般保険料、介護保険料とも事業主の負担割合を増加させることができ(第162条)、協会けんぽに比べ保険料率が低い組合が多いが、中には協会けんぽの保険料率を超える財政基盤の脆弱な組合が存在する。なお事業主が負担割合を増加させた場合、その増加割合相当額は「報酬」には含まれない。

保険料は被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率を乗ずることにより計算される(第156条)。

一般保険料額 = 標準報酬月額 × 一般保険料率
(介護保険第2号被保険者については、これに介護保険料額(標準報酬月額 × 介護保険料率)が加算され、あわせて徴収される)

保険料は原則として被保険者資格取得月から資格喪失月の前月まで徴収されるが、資格取得月にその資格を喪失した場合は、その月の保険料は徴収される。同一月に2回以上の資格の得喪があった場合は、1月につき2月分以上の保険料の徴収がありうる。

保険料は、以下の場合は納期前であってもすべて徴収することができる(繰上徴収、第172条)。

納付義務者が以下のいずれかに該当する場合

国税、地方税その他の公課の滞納によって、滞納処分を受けるとき

強制執行を受けるとき

破産手続き開始の決定を受けたとき

企業担保権の実行手続の開始があったとき

競売の開始があったとき

法人である納付義務者が、解散をした場合

被保険者(日雇特例被保険者を含む)の使用される事業所が廃止された場合(事業主の変更があった場合を含む)

標準報酬月額

2016年4月現在、第1級58,000円(報酬月額が63,000円以下)〜第50級1,390,000円(報酬月額が1,355,000円以上)の50等級。被保険者の報酬の月額を等級区分に当てはめることによって決定する(第40条)。同時に2以上の事業所で報酬を受ける被保険者については、各事業所から受ける報酬について報酬月額を算定し、その各報酬月額の合算額をその者の報酬月額として、標準報酬月額を決定する(第44条3項)。

毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が1.5%を超えその状態が継続すると認められるときは、厚生労働大臣は社会保障審議会の意見を聞いて、その年の9月1日から政令により最高等級該当者の割合が0.5%未満にならない限度で、当該最高等級の上にさらに等級を加える等級区分の改定を行うことができる(第44条1項)。

定時決定

毎年7月1日現在使用される事業所において、同日前3ヶ月間(その事業所に継続して使用された期間に限り、かつ報酬支払基礎日数が17日未満である月があるときはその月を除く)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額(報酬月額)に基づき、標準報酬月額等級表の等級区分によって定められる。つまり、通常は4~6月に実際に支払われた賃金(何月分であるかではなく)を用いて算定する。

3ヶ月とも報酬支払基礎日数が17日未満である場合や報酬を受けられなかった場合は、引き続き従前の報酬月額を用いる(従前の標準報酬月額のままとなる)。

定時決定の対象月に一時帰休が行われ通常より低額の休業手当が支払われた場合は、原則としてその休業手当をもって算定する。ただし、決定の際にすでに一時帰休の状態が解消している場合は、当該定時決定を行う年の9月以降に受けるべき報酬をもって算定する。決定後に一時帰休が解消した場合は随時改定の対象となる。

介護休業期間中の場合は、休業開始直前の報酬月額を用いて算定する(休業開始直前の標準報酬月額のままとなる)。

短時間就労者については、4~6月の報酬支払基礎日数により、以下のようにする。

3ヶ月間とも17日以上であれば、3ヶ月間の報酬月額の平均額をもとに決定する。

1ヶ月でも17日以上の月があれば、17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定する。

3ヶ月とも15日以上17日未満であれば、3ヶ月間の報酬月額の平均額をもとに決定する。

1ヶ月でも15日以上17日未満の月があれば、15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定する。

3ヶ月とも15日未満であれば、従前の標準報酬月額で決定する。

6月1日から7月1日までの間に被保険者資格を取得した者、7月~9月に随時改定、育児休業等終了時改定、産前産後休業終了時改定を予定している者については、定時決定の対象としない。

この方法で算出することが著しく不当なときは、保険者等が報酬月額を算定する(保険者等算定)。具体的には次のとおりである。なお健康保険組合の場合は、保険者等算定の方法は規約に定めなければならない。

4~6月に、3月分以前の給与の遅配・遡及昇給がありその差額を一括して受ける場合、その差額分を差し引いて算定する。

4~6月に、低額の休職給・ストライキによる賃金カットがあった場合、その月を除いて算定する。3月ともあった場合は、引き続き従前の報酬月額を用いる(従前の標準報酬月額のままとなる)。

4~6月の3月間の報酬の月平均額から算出した標準報酬月額と、前年7月~当年6月までの報酬の月平均額から算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合で、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合、年間報酬の平均で算定する。

定時決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで有効である。

事業主は、毎年7月1日現に使用する被保険者(定時決定の対象とされない者を除く)の報酬月額について、7月10日までに機構又は健康保険組合に届け出なければならない(規則第25条)。

資格取得時決定

新規採用時等、被保険者の資格を取得した段階で決定する標準報酬月額は、一定期間(月給・週給制等)によって報酬が定められている場合はその報酬の額をその期間の総日数で除した額の30倍を報酬月額とする。日給制、時給制、出来高、請負によって報酬が定められている場合は、被保険者資格取得時前1月間において同様の業務に従事した者が受ける同様の報酬を平均した額となる。これらの方法で算定することが困難であるものについては、被保険者の資格を取得した月前1月間に、その地方で同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を報酬月額とする。

資格取得時決定による標準報酬月額は、1月から5月に決定があったときはその年の8月まで、6月から12月までに決定があった場合は翌年の8月まで有効である。

会社都合により採用当初より自宅待機となり休業手当が支払われるとき、その休業手当に基づいて報酬月額を算定する。その後に自宅待機が解消したときは、随時改定の対象となる。

事業主は、被保険者の資格を取得した日から5日以内に、被保険者資格取得届を機構又は組合に提出することで、報酬月額を届け出る(規則第24条)。

随時改定

報酬月額に大幅な変動があったときは、年の途中でも標準報酬月額を改定できる。ただし固定的賃金の変動のみが対象で、超過手当等の変動的賃金の大幅な変動があっても随時改定は行わない。継続した3月間に受けた報酬の総額を3で除して得た額を随時改定後の報酬月額とする(報酬支払基礎日数が17日未満である月があるときは随時改定は行わない)。

「大幅な変動」とは、おもに2等級以上に相当する差が生じたときをいうが、以下の場合は「大幅な変動」として扱う。

49級の者の報酬平均月額が1,415,000円以上となったために50級となった場合

報酬月額1,415,000円以上の50級の者が、報酬平均月額1,355,000円以下となったために49級となった場合

報酬月額53,000円以下の1級の者が、報酬平均月額63,000円以上となったために2級となった場合

2級の者の報酬平均月額が53,000円以下となったために1級となった場合

決定された標準報酬月額は、1月から6月までに改定があった場合はその年8月まで、7月から12月までに改定があった場合は翌年の8月まで有効である。

事業主は、要件に該当したときは速やかに報酬月額変更届を機構又は組合に提出しなければならない。

育児休業等終了時改定

3歳未満の子を養育する被保険者が、育児休業等を終了し、職場復帰したときの報酬に低下がみられるような場合は、申出により標準報酬月額を改定する。随時改定の場合と異なり、2等級以上の変動や固定的賃金の変動は必ずしも必要ではない。育児休業等終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌月から、標準報酬月額を改定する。育児休業等終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間(その事業所に継続して使用された期間に限り、かつ報酬支払基礎日数が17日未満である月があるときはその月を除く)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額とする。

決定された標準報酬月額は、1月から6月までに改定があった場合はその年8月まで、7月から12月までに改定があった場合は翌年の8月まで有効である。

育児休業等終了日の翌日に次に述べる産前産後休業を開始している被保険者は対象とならない。

事業主は、要件に該当したときは速やかに報酬月額変更届を機構又は組合に提出しなければならない。

産前産後休業終了時改定

労働基準法上の産前産後休業の終了日が平成26年4月1日以降の被保険者を対象に、職場復帰したときの報酬に低下がみられるような場合は、申出により標準報酬月額を改定する。随時改定の場合と異なり、2等級以上の変動や固定的賃金の変動は必ずしも必要ではない。産前産後休業終了日の翌日から起算して2月を経過した日の属する月の翌月から、標準報酬月額を改定する。産前産後休業終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間(産前産後休業終了日の翌日において使用される事業所で継続して使用された期間に限り、かつ報酬支払基礎日数が17日未満である月があるときはその月を除く)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額とする。

決定された標準報酬月額は、1月から6月までに改定があった場合はその年8月まで、7月から12月までに改定があった場合は翌年の8月まで有効である。

産前産後休業終了日の翌日に前に述べた育児休業等を開始している被保険者は対象とならない。

事業主は、要件に該当したときは速やかに報酬月額変更届を機構又は組合に提出しなければならない。

任意継続被保険者

「当該任意継続被保険者の資格喪失時の標準報酬月額」と「前年9月30日現在の当該任意継続被保険者の属する全被保険者の標準報酬月額を平均した額(組合の場合、規約で定めた額があるときは、その規約で定めた額)を報酬月額とみなした場合の標準報酬月額」のいずれか少ない額とする。原則として任意継続被保険者である期間中、改定はされない。

平成27年9月30日現在、協会けんぽにおける標準報酬月額の平均額は、28万円となっている。

特例退職被保険者

当該特定健康保険組合が管掌する、前年(1~3月の標準報酬月額については前々年)の9月30日における、特例退職被保険者以外の全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額の範囲内において、規約で定めた額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額、とされる[* 9]

標準賞与額

被保険者の賞与に基づき、1,000円未満の端数を切り捨てて決定する。全てを報酬と扱う反面、上限を設定し、賞与額が年度累計額573万円[* 10]を超えた場合は、超過分について保険料賦課の対象にせず、当該年度の翌月分以降に受ける賞与の標準賞与額はゼロとなる(第45条)。全給与が賞与として支払われる場合は、年度累計額が573万円を超過した部分については保険料賦課の対象とならない。なお累計は保険者単位で行われるので、年度途中で管掌する保険者が変わった場合、それまでの賞与額は新保険者の下では累計されない。

被保険者資格喪失月において、資格喪失前に支払われた賞与については、保険料賦課の対象とならない。ただし、年度の累計額には算入される。

事業主は、賞与を支払った日から5日以内に、賞与支払届を機構又は組合に提出しなければならない。同一月に2回以上賞与を支払った場合は、最後の賞与支払日に一括して提出する。

保険料率[編集]

一般保険料率:特定保険料率と基本保険料率との合算。

特定保険料率:高齢者医療を支えるために使われる費用に充てる保険料(協会けんぽでは全国一律4.15%)。

基本保険料率:高齢者医療以外の健康保険事業に要する費用に充てる保険料(協会けんぽでは都道府県ごとに設定)。

介護保険料率:保険者が納付すべき介護納付金に基づいて設定する(協会けんぽでは2016年度は1.58%)。

調整保険料率:組合健保の財源の不均衡を調整するため、組合が連合会に拠出する費用に充てる保険料。

政管健保が2008年10月より全国健康保険協会に移管され、それに伴い全国一律だった一般保険料率も医療費に応じて各都道府県を単位に3.0%~13.0%(当初は3.0%~10.0%、平成28年3月までは3.0%~12.0%)の範囲内で協会が決定することとなった[7]。ただ、地域の医療格差のみが反映されるようになっていて、年齢構成や所得水準の違いに起因する都道府県ごとの財政力の差については都道府県間で調整されるので保険料率には反映されない。協会が保険料率を変更するには厚生労働大臣の認可が必要で、大臣は保険料率が不適当であり事業の健全な運営に支障があると認めるときは協会に変更の認可を申請するよう命ずることができる(第160条)。

実際には2009年9月より各都道府県別の保険料率となり、8.26%(北海道)〜8.15%(長野県)と定められた。更にその半年後の2010年3月には全国平均で1.14%の大幅な保険料率引き上げが行われ、9.42%(北海道)〜9.26%(長野県)となり、その後も保険料率の引き上げが続いている。2015年4月以降については、10.21%(佐賀県)〜9.86%(新潟県)となっている[8]

組合健保の場合も、一般保険料率は3.0〜13.0%の範囲内で組合ごとに決定し、変更に際しては原則として厚生労働大臣の認可を受けなければならない[* 11]。合併によって設立された組合健保においては、合併の翌5年度に限り、厚生労働大臣の認可を受けて不均一の一般保険料率を設定することができる。

保険料の免除

前月から引き続き一般の被保険者である者が少年院刑事施設労役場その他これらに準ずる施設に収容・拘禁された場合、その月以降該当しなくなる月の前月までの保険料は徴収されない(第158条)。ただし同月中に収容等されなくなった場合は保険料は徴収される。事業主は、被保険者がこれらに該当する(しなくなった)場合は、「第118条1項該当届(非該当届)」[* 12]を5日以内に機構又は組合に提出しなければならない。

育児休業等をしている一般の被保険者が使用される事業所の事業主が保険者等に申し出たときは、育児休業等開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料は徴収されない(第159条)。被保険者が育児休業等期間を変更したとき、または育児休業等終了予定日の前日までに育児休業等を終了したときは、速やかに機構又は組合に届出なければならない。なお労使協定により子が3歳に達する日以降の育児休業を定めている場合であっても、免除は3歳未満の子を養育するための育児休業に限られる。

平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了となる一般の被保険者が使用される事業所の事業主が保険者等に申し出たときは、産前産後休業開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料は徴収されない(第159条の3)。被保険者が産前産後休業期間を変更したとき、または産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了したときは、速やかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を機構又は組合へ提出する。

免除は事業主負担分、被保険者負担分双方について行われる。なお、任意継続被保険者、特例退職被保険者については免除は行われない(これらに該当しても保険料は徴収される)。

滞納に対する措置

保険料その他健康保険法の規定による徴収金を滞納する者があるときは、保険者等は期限を指定して督促しなければならない。督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上経過した日でなければならない(第180条1項~3項)。なお督促は規則に定められた様式の督促状(様式第20号)で行われ、口頭、電話または普通の書面で行われることはない(規則第153条)。繰上徴収に該当する場合であっても、既に納期の過ぎた分の保険料については督促しなければならない(この場合延滞金は徴収されない)。

保険者等は督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、国税滞納処分の例によってこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村に対して、その処分を請求することができる(第180条5項)。市町村は市町村税の例によりこれを処分したときは徴収金の4%相当額が厚生労働大臣から当該市町村に交付される(第180条6項)。機構・協会・組合が滞納処分を行う場合は、あらかじめ厚生労働大臣の認可を受けなければならない。また滞納者が悪質な場合には当該権限を財務大臣を通して国税庁長官に委任することができる。「悪質な場合」とは、以下のいずれの要件も満たす場合とされる。

納付義務者が24月以上保険料を滞納している。

納付義務者が執行を免れる目的でその財産を隠蔽しているおそれがある。

納付義務者が滞納している保険料その他の徴収金の額がが5,000万円以上。

納付義務者が納付について誠実な意思を有すると認められない。

督促したときは、やむを得ない事情がある場合、公示送達による督促の場合等を除き、保険者等は、徴収金額(1,000円未満の端数は切り捨て)に、納期限の翌日から徴収金完納または財産差し押さえの日の前日までの期間の日数に応じて、年14.6%(督促が保険料に係るものである場合は、納期限の翌日から3月を経過する日までの期間については年7.3%)の割合を乗じて計算した額の延滞金(100円未満の端数は切り捨て)を徴収する(第181条)。なお現在の低金利の状況では年14.6%の延滞金は高すぎるとの問題意識から、事業主の負担軽減等を図るべく、当分の間特例が設けられ、各年の特例基準割合租税特別措置法第93項2項の規定に基づき、「前々年10月から前年9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合」として財務大臣が告示した割合に年1%の割合を加算)が年7.3%に満たない場合は、

「年7.3%の割合」とされる期間については、特例基準割合に年1%を加算した割合(加算した割合が年7.3%を超える場合は、年7.3%)

「年14.6%の割合」とされる期間については、特例基準割合に年7.3%を加算した割合

とされる。平成27年、28年の場合、特例基準割合は年1.8%(告示割合年0.8%に年1%を加算)とされたので[9]、実際には以下のようになる。

「年7.3%の割合」とされる期間については、年2.8%の割合

「年14.6%の割合」とされる期間については、年9.1%の割合

保険料等の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする(第182条)。

国庫の負担・補助

国庫は、毎年度、予算の範囲内において、健康保険事業の事務の執行に要する費用を負担する(第151条)。したがって事務費は全額国庫負担である。また、健康保険組合に対して交付する国庫負担金は、各健康保険組合における被保険者数を基準として、厚生労働大臣が算定することとされ、この国庫負担金については、概算払をすることができる(第152条)。

協会けんぽに対しては、主な保険給付の支給に要する額に給付費割合を乗じて得た額の合算額の13~20%を国庫が補助することとされ(第153条1項)、当面の間国庫補助率は16.4%とされる(附則第5条)[* 13]。また協会が拠出すべき後期高齢者支援金及び介護納付金の納付に要する費用の額の16.4%についても国庫が補助する。

これらのほか、国庫は、予算の範囲内において、健康保険事業の執行に要する費用のうち、特定健康診査及び特定保健指導の実施に要する費用の一部を補助することができる(第154条の2)。

保険給付[下記に掲げるもののほか、健康保険組合の場合は規約に定めることで付加給付を行うことができる(第53条)。被保険者の資格取得が適正である限り、その資格取得前の疾病、負傷等に対しても、保険給付は行われる。

被保険者本人

療養の給付

被保険者が疾病、負傷したとき、自ら選定する保険医療機関等で、保険者から発行された被保険者証(70歳以上の者は、一部負担割合の記載された高齢受給者証も併せて)を提出し、一部負担金を支払うことで、診療を受けることができる(第63条)。

一部負担の割合(第74条)は、

被保険者が70歳未満の者もしくは70歳以上で標準報酬月額が28万円以上の者である場合は3割。

被保険者が70歳以上で標準報酬月額が28万円未満の者である場合は、70歳到達月の翌月より2割(2014年3月31日以前に70歳に達した者は1割)。

ただし70歳以上で3割とされる者であっても、当該70歳以上の被保険者及びその70歳以上の被扶養者[* 14]の年収が合計520万円(70歳以上の被扶養者等がいない場合は383万円。70歳未満の被扶養者がいても考慮しない)に満たない場合であって、その旨を保険者に申請した場合には、2割となる。

災害等特別の事情があるときは、保険者等は一部負担金の減額、免除、支払猶予(6ヶ月以内に限る)の措置が行われる。保険医療機関等は、減免された一部負担金相当額については、審査支払機関に請求する。いっぽう、特別の事情がない場合に、一般の保険医療機関が特定の被保険者に関して一部負担金の徴収を行わない取扱いは認められない(昭和32年9月2日保険発123号)。

給付の範囲は以下のとおりである。診察を受けたものの何ら疾病と認めるべき兆候がなかった場合でも、給付の対象となる。

診察

薬剤又は治療材料の支給

処置、手術その他の治療

居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護

病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

いっぽう、美容整形予防接種、定期的健康診断(集団検診の結果疾病の疑いがあると判断された者が受ける精密検査は、あらかじめ計画されたものでない限り給付の対象)、正常出産における医師の手当(帝王切開などの異常出産の場合は給付の対象)、往診の際の医師の交通費等は療養の給付の対象とはならない。

入院時食事療養費

被保険者(特定長期入院被保険者を除く)の入院時、保険医療機関等から受ける食事の提供については、食事療養標準負担額を被保険者が窓口負担し、残余の額について保険給付(現物給付)が行われる(第85条)。

食事療養標準負担額は、平均的な家計における食費の状況及び特定介護保険施設等における食事の提供に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定めるとされ、平成28年4月現在、1食につき360円(平成30年4月より460円)であるが、指定難病患者及び小児慢性特定疾病患者については260円とされ、低所得者については、あらかじめ保険者に申請して減額認定証の交付を受けておき、これを保険医療機関等に提出することで減免措置がとられる。すなわち、市町村民税の非課税者・免除者・減額を受けなければ生活保護が必要な者については、直近12月以内の入院日数が90日以内の場合は1食につき210円、90日超の場合は1食につき160円となる。また70歳以上で判定基準所得がない者については1食につき100円となる。

なお、点滴栄養のみを受けている入院患者からは、食事療養標準負担額は徴収されない(点滴栄養は療養の給付に当たる)。

入院時生活療養費

特定長期入院被保険者(療養病床に入院する65歳以上の被保険者)が、保険医療機関等のうち自己の選定するものから療養の給付と併せて受けた以下の療養に要した費用については、生活療養標準負担額を被保険者が窓口負担し、残余の額について、保険給付(現物給付)される(第85条の2)。

食事の提供である療養

温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養

生活療養標準負担額は、食費分と居住費分とに分かれ、入院医療の必要性の高い者や指定難病患者等については、食費分は食事療養標準負担額と同額、居住費分は無料である。その他の者については、所得や保険医療機関等により、食費分は1食につき130円〜460円、居住費分は一律1日につき320円である。

保険外併用療養費

被保険者が評価療養、選定療養や患者申出療養を受けた場合に、その療養に要した費用については、特別料金部分については全額自己負担であるが、基礎部分については、一部負担金相当額を被保険者が窓口負担し、残余の額について保険給付(現物給付)される(第86条)。

詳細は「保険外併用療養費」を参照

療養費

やむをえない事情(旅先で被保険者証を持っていなかった場合、僻地で近くに保険医療機関がないとき、病状が切迫して保険医療機関等を探す余裕がないとき、事業主が資格取得届を怠った場合等)により上記の現物給付が受けられない場合、被保険者がいったん医療費を窓口で全額支払うが、後で申請することにより、本来療養の給付等として現物給付されるべきであった額を現金給付(償還払い)で受けることができる(第87条)。その額は保険者が定めるものであって、一律に定められているものではない。

ほかにも、柔道整復師の施術を受けたとき(現に医師が診療中の骨折脱臼については、応急措置の場合を除き医師の同意が必要)、生血を購入した場合(保存血は療養の給付に該当)、コルセット義眼義手義足等を購入した場合等にも療養費が支給される。

海外の病院等で診療を受けた場合でも支給される(海外療養費)が、現に海外にある被保険者からの支給申請は、原則として事業主を経由して行い、療養費は事業主が代理して受領する。また海外療養費の支給額の算定に用いる為替レートは、療養を受けた日ではなく支給決定日の為替レートを用いる。手続には診療内容明細書(診療の内容、病名・病状等が記載された医師の証明書)と領収明細書(内訳が記載された医療機関発行の領収書)およびこれらの和訳文、さらに旅券等の海外渡航の事実が確認できる書類の写しと当該海外療養担当者へ照会する旨の同意書が必要である。

訪問看護療養費

被保険者が、自己の選定する指定訪問看護事業者から、看護師保健師助産師理学療法士等(医師は含まない)による指定訪問看護(その治療の必要程度において、所定の基準に適合していると主治医が認めたものに限る)を受けたときは、保険者が必要と認める場合に限り、一部負担金に相当する額(基本利用料)及び交通費等の実費を業者に支払い、残余の額について保険給付(現物給付)される(第88条)。

指定訪問看護は、厚生労働大臣が定める疾病等の場合を除き、利用者一人につき週3回が限度である。

保険医療機関等、あるいは介護老人保健施設から居宅において療養上の世話を受けた場合は、療養の給付又は介護保険法の保険給付の対象となり、訪問看護療養費の支給対象とはならない。

移送費

被保険者が療養の給付(保険外併用療養費に係る療養を含む)を受けるために、病院または診療所に移送されたときは、保険者が必要と認める場合に限り、支給される(第97条)。支給を受けようとするときは、申請書に費用の額を証明する書類及び医師等の意見書等を添付して保険者に提出する。単なる通院等、一時的、緊急的とは認められないときや、私費で医療を受けたときは、支給されない。また、支給される額は最も経済的な通常の経路呼び方法により移送された場合の金額により算定するが、現に移送に要した費用の額を超えることはできない。なお、移送費には定率の一部負担はない。

医師や看護師等の付添人については、医学的管理が必要であると医師が判断する場合に限り、原則1人分の交通費が支給される。

「保険者が必要と認める場合」とは、以下のいずれにも該当する場合をいう。

移送により法に基づく適切な療養を受けたこと

移送の原因となる疾病又は負傷により移動をすることが著しく困難であったこと

緊急その他やむを得なかったこと

傷病手当金

被保険者(任意継続被保険者を除く)が療養のため労務に服することができない場合の生活保障として、所定の計算による金額を支給する(第99条)。

詳細は「傷病手当金」を参照

埋葬料・埋葬費[* 15]

被保険者が死亡したときは、その者によって生計を維持されていた者(生計の一部でも維持されていれば足り、同一世帯である必要もない)であって埋葬を行うもの(実際に埋葬を行った者ではなく、社会通念上埋葬を行うべき者。必ずしも親族や遺族に限られない)に対し、埋葬料として5万円を支給する(第100条)。

以下のいずれかに該当する場合は、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものは、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。

資格喪失後の傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受ける者が死亡したとき(死亡の事由がその継続給付の支給事由が原因である必要はない。以下同じ)

資格喪失後の傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後3月以内に死亡したとき

その他の被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後3月以内に死亡したとき(被保険者期間の長短は問わない)

被保険者が死亡したときに埋葬料の支給を受けるべき者がいない場合は、埋葬を行った者に対し、埋葬費として5万円以内でその埋葬に要した費用に相当する金額を支給する。「埋葬に要した費用」とは、具体的には霊柩代、霊柩車代、火葬料、葬式の際の供物代、僧侶への謝礼などが含まれる。

自殺による死亡の場合であっても、埋葬料(埋葬費)は支給される。

出産育児一時金

被保険者が出産妊娠4月以上の分娩)した場合、1児につき404,000円(在胎週数22週以降で、かつ産科医療補償制度加入の医療機関等による医学的管理のもとによる出産の場合は16,000円[* 16]を加算)が支給される(第101条)。

1年以上被保険者であった者は、被保険者の資格喪失後6月以内に出産した場合であっても支給される(第106条)。ただし出産予定日ではなく実際の出産日が「6月以内」の期間内でなければならない。

業務上の事故により流産し、労災保険の療養補償給付を受けた場合であっても、支給される。

出産手当金

被保険者(任意継続被保険者を除く)が出産のため労務に服さなかった期間(「労務不能」である必要はない)の生活保障として出産日(出産の日が予定日後であるときはその出産予定日)の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から出産後56日の期間、所定の計算による金額が支給される(第102条)。

詳細は「出産手当金」を参照

被扶養者[編集]

被扶養者に関する保険給付(家族給付)は、あくまで保険料を負担している被保険者に対してなされるものである。したがって、被保険者が死亡した場合、その翌日から家族給付は打ち切られる。また、被保険者の資格喪失後の継続給付は、被扶養者に対しては行われない。

家族療養費

療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費及び療養費に相当する給付は、被扶養者についてはすべて家族療養費として支給される(第110条)。なお、小学校就学前の者の窓口負担は2割である。

家族訪問看護療養費

家族移送費

家族埋葬料

家族出産育児一時金

被保険者と同様の給付がなされる(第111~114条)。ただし、家族埋葬料は、死産児に対しては支給されない。

退職によって被扶養者となった者が、自らの被保険者資格による出産育児一時金と被扶養者としての家族出産育児一時金と両方の受給資格がある場合、請求者の選択によりいずれか一方を選択して受給する。

自己負担金軽減のための支給[編集]

日本の医療#医療費負担の補助制度」も参照

高額療養費

同一月に、療養の給付等の自己負担金が、自己負担限度額を超えたときに、その超えた額について支給される(第115条)。

詳細は「高額療養費」を参照

高額介護合算療養費

一年間の、健康保険の自己負担額と介護保険の自己負担金の合計額が、自己負担限度額を超えたときに、その超えた額について支給される(第115条の2)。

詳細は「高額療養費#高額介護合算療養費」を参照

受給権の保護[編集]

保険給付を受ける権利は、譲り渡し担保に供し、又は差し押さえることができない(第61条)。租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することができない(第62条)。

なお、健康保険法には未支給の給付についての規定がないので、被保険者が未支給給付を残して死亡した場合は、民法の原則に従い、受給権者の相続人が未支給給付の請求権者となる。

給付制限・不正利得の徴収[編集]

被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は行われない(絶対的給付制限、第116条)。ただしこの場合であっても、埋葬料(埋葬費)については支給する扱いとなっている。

絶対的給付制限を行うには、行為の遂行中に事故が発生したという関係のみでは不十分で、その行為が事故発生の主たる原因であると考える相当因果関係が両者の間にあることが必要である(昭和35年4月27日保分発3030号)。

自殺未遂の場合は、保険給付は行わないが、精神疾患等に起因する自殺未遂については、「故意」にあたらないとして保険給付は行われる。

被保険者が被扶養者を「自己の故意の犯罪行為」によって負傷させた場合、原則として被扶養者は保険給付の対象とならない。ただし配偶者たる被保険者の暴力により負傷した被扶養者が申し出たときは、被扶養者から外れるまでの間に緊急的に受診した場合は保険給付の対象となる。

被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付はその全部又は一部を行わないことができる(相対的給付制限、第117条)。保険給付を受ける者が正当な理由なく文書その他の物件の提出若しくは提出命令に従わず、又は職員の質問若しくは診断に対し答弁もしくは受診を拒んだときも同様である。

被保険者又は被保険者であった者が、正当な理由なく療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる(一部制限、第119条)。

保険者は、偽りその他不正行為により、保険給付を受け、または受けようとした者に対し、6月以内の期間を定め、その者に支給すべき傷病手当金又は出産手当金の全部または一部を支給しない旨の決定をすることができる。ただし、偽りその他不正行為があった日から1年を経過したときは、当該給付制限を行うことはできない(第120条)。

偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、保険者は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる(第58条1項)。この場合において、事業主が虚偽の報告若しくは証明をし、又は保険医若しくは主治医が、保険者に提出されるべき診断書に虚偽の記載をしたため、その保険給付が行われたものであるときは、保険者は、当該事業主、保険医又は主治医に対し、保険給付を受けた者に連帯して前項の徴収金を納付すべきことを命ずることができる(第58条2項)。

保険者は、保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者が偽りその他不正の行為によって療養の給付等に関する費用の支払を受けたときは、当該保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者に対し、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額の40%を支払わせることができる(第58条3項)。

不服申立て[編集]

健康保険における被保険者の資格、保険料については厚生年金とセットになっていることから、不服申立てについても厚生年金と手続が一元化されている。

被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、各地方厚生局に置かれる社会保険審査官に対して審査請求をすることができる(第189条)。この審査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内にしなければならない(社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条)。また、被保険者の資格または標準報酬に関する処分に対する審査請求は、原処分のあった日の翌日から起算して2年を経過したときは、することができない。以上の処分については、当該審査請求に対する社会保険審査官の裁決を経た後でなければ、取消の訴えを提起することはできない(審査請求前置主義、第192条、行政事件訴訟法第8条1項但書)。

社会保険審査官の決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる(二審制)。この再審査請求は、社会保険審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2ヶ月以内にしなければならない(社会保険審査官及び社会保険審査会法第32条)。また、審査請求をした日から2ヶ月以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に再審査請求をすることができる。いずれの場合であっても、当該再審査請求は口頭で行うことができる。2016年の法改正により、再審査請求と処分の取消の訴えの提起のいずれを選択するかは申立人の任意となった。

保険料の賦課もしくは徴収の処分又は滞納処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができる(一審制、第190条)。この場合は2016年の法改正により、審査請求前置主義は適用されなくなったので、審査請求をせずに処分の取消の訴えを提起することが可能である。

審査請求・再審査請求は、時効の中断に関しては裁判上の請求とみなされる。

時効[編集]

保険料を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、2年を経過したときは時効により消滅する(第193条)。これは金銭の徴収・給付にかかる規定であるので、療養の給付のような現物給付については消滅時効の適用はない。保険料の納入の告知又は督促は、時効中断の効力を有する。

事業主から被保険者に還付すべき保険料過納分の被保険者の返還請求権については、健康保険法の適用はなく、民法の一般原則に従って10年の消滅時効にかかる(民法第167条)。

他の医療保険制度と健康保険の関係[編集]

労働者災害補償保険」も参照

疾病や負傷が業務や通勤を原因とするために労働者災害補償保険(労災保険)または公務災害の補償が適用される場合、および介護保険の適用により支給がなされる場合には、同一の疾病・負傷については健康保険が適用されずその支給が全額カットされる場合がある。例えば傷病手当金はその全額が支給されない(第55条)。

少年院、刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に収容・拘禁された被保険者又は被保険者であった者については、疾病、負傷、出産につき、原則として保険給付は行われない(公費治療との調整、第118条)。ただしこの場合でも、死亡に関する給付及び被扶養者に係る保険給付は行われる。なお、未決勾留者については傷病手当金・出産手当金は支給される。また、結核精神病原爆症等、公費負担治療の対象となる疾病、負傷については、公費負担の範囲内で健康保険の保険給付は行わないこととされている。ただ、健康保険と公費負担が競合する場合、一般的には健康保険を優先して給付し、自己負担分について公費負担が行われている。

健康保険と、その他の保険・医療制度(労災、公務災害、介護保険、公費治療、公費負担治療)との関係については、いずれかの制度を選択したり、支給調整が行われると言った性格のものではなく、その他の保険の一からの給付を受けなければならない。例えば労災であるにも関わらず健康保険での給付を受けると、その給付相当額を一旦保険者に返納した上で労災の申請をしなければならなくなる(労災は申請してもすぐには支給されない)ので、二度手間でありかつ一時的にでも療養費等の自己負担をすることになる。なお、「労災隠し」の問題については労働災害の項目を参照のこと。

第三者行為との関係[編集]

疾病や負傷が交通事故などの第三者行為を原因とする場合、ただちに健康保険が適用できないと言うわけではない。第三者行為であった場合には、その給付した金額を限度として、第三者行為の相手方に対する損害賠償請求権を保険者が代位取得することになる(第95条)。この場合、被保険者は第三者行為災害届を遅滞なく提出しなければならない。

第三者行為の場合には、疾病等の完治や症状固定などにより保険給付が終結するまでは、相手方との示談等を行うべきではなく、その旨、保険者からも指導がある。それは、被害者と相手方との示談等(口約束を含む)を先に行なうことにより、被害者の持つ損害賠償請求権が確定(限定)されてしまい、健康保険が代位取得できる賠償請求権も限定されてしまうからである。訴訟外の先行賠償により(自動車保険の人身傷害など)賠償額を受領し、または訴訟等により賠償額が確定しその受領を受けた場合には、その受領額を限度として健康保険からの給付に対して支給調整が行われる(第57条)。なお、第三者行為と各種保険との関係については、労災保険、公務災害による保険、介護保険においても同様である。

医療機関によっては交通事故など(第三者行為)による負傷等の場合に健康保険での受診の拒否を主張する場合があるが、その拒否には法的根拠はない。健康保険を適用せずに自由診療とすれば、医療機関にとっては同じ診療等であっても診療報酬が比較的自由に決められるため(自賠責または自動車保険に請求する場合、健康保険適用の場合の200%程度になる)、そのような主張は、単に医療機関の収入と経営上の問題である。ただし、労災保険、公務災害に関する保険、介護保険が適用可能な場合には健康保険適用の拒否には法律上の根拠があることになる。

課題[編集]

日本の医療#医療制度改革」も参照

健保組合の財政悪化[編集]

詳細は「健康保険組合#財政問題」および「全国健康保険協会#健保組合の財政悪化」を参照

被用者保険は、小規模な健康保険組合が多数存在する状況で財政が悪化しており[7]、さらに後期高齢者医療制度拠出金が負担を重くしている。保険者の効率性を高めるため、保険者を統合し総数を減らすようOECDは勧告している[7]

− 健保組合(健康保険の運営者)等により医療費節約という趣旨で被保険者に対し「医療機関を頻繁に変えない」「時間外や夜間・日祝日の受診を避ける」といった、緊急の場合を含む医療機関への受診機会の喪失や医療選択の自由に関わる記述が行われている。[10]

また保険者では「医療機関を頻繁に変えない」「時間外や夜間・日祝日の受診を避ける」などのコンビニ受診について言及し、医療費を減らす方法を提案している[11]

医療機関による健康保険の不正受給[編集]

医療詐欺」、「療養費詐欺」、および「療養費の不正請求」も参照

健康保険証不正使用による診療費詐欺問題がある。例えば、病院・医院の関係者(従業員・医療従事者)や現在来院していない患者の健康保険証を使用しての患者数水増しである。1つの病院で診療報酬20億円を不正受給といった事件となる。[12]

脚注[編集]

^ 被保険者が副業として行う請負業務中に負傷した場合や、被扶養者が請負業務やインターンシップ中に負傷した場合などが考えられる。

^ 都道府県を越えて事業所所在地が移転した場合には管轄の全国健康保険協会の支部が変わるので保険証を交換する。その他、同一都道府県内での事業所所在地の移転や、被保険者が(都道府県を越えるか否かに関係なく)転勤する場合には、基本的には保険証は交換しない。

^ 厚生年金ではさらに、「船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶」も強制適用事業所とされる。

^ 平成18年の時点で、一括適用事業所の承認を受けている企業は約440社にとどまる。

^ 変更後の事業主が届出る。従来は変更前・変更後の両事業主が連署で届出ることとされていたが、法改正により変更後の事業主のみに届出義務が課されることになった。

^ 単に「被保険者」といった場合、健康保険法の条文上では4種類すべての被保険者を指すため、条文上「被保険者(日雇特例被保険者、任意継続被保険者及び特例退職被保険者を除く)」という表記を簡略化してある。

^ 大きな被害が発生した地震などの際に厚生労働省から、被保険者からの申し出により、その資格の復活を認めるよう通知が保険者に出される。最近では新潟県中越沖地震2007年)、岩手・宮城内陸地震2008年)、宮崎県における口蹄疫の流行2010年)の際に出された。

^ 国民健康保険は市区町村ごとに保険料の計算方法が異なるため、任意継続といずれが有利であるかは一概に言えない。必ず両者の保険料や給付内容を事前に比較すべきである。

^ 2016年3月までは、当該特定健康保険組合が管掌する、「前年(1~3月の標準報酬月額については前々年)の9月30日における、特例退職被保険者以外の全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額」と、「前年の全被保険者の標準賞与額を平均した額の1/12に相当する額」との合算額の1/2に相当する額の範囲内において、規約で定めた額、とされていた。

^ 2016年3月まで540万円。

^ 例外として、一般保険料率と調整保険料率とを合算した率の変更が生じない一般保険料率の変更については、組合は変更後の一般保険料率を厚生労働大臣に届け出ることで足りる。

^ >これらの者は第118条1項により、保険給付が制限されるため、このような名称となる。

^ 協会けんぽへの財政支援措置の一つとして、協会けんぽの財政基盤の強化・安定化のため平成22年度から3年間の時限措置として行われたものであるが、2年間延長され、さらに法改正により期限の定めなく実施されることとなった。

^ 後期高齢者医療制度の被保険者等に該当するために健康保険の被扶養者とされない者のうち、該当するに至った日の属する月以後5年を経過する月までの間にあり、かつ同日以後継続して後期高齢者医療制度の被保険者等に該当する者を含む。

^ 「埋葬費」は実務上の用語であり、法文上は「埋葬に要した費用に相当する金額」。

^ 条文上は「3万円を超えない範囲内で保険者が定める」となっているが、平成27年1月1日以降の出産については一律16,000円となっている。

出典[編集]

^ 平成25年度 国民医療費の概況 (Report). 厚生労働省. (2012-10-08). http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/13/index.html. 

^ 平成25年版 厚生労働白書 (Report). 厚生労働省. 資料編 p26. 

^ OECD 2009, pp. 126-128.

^ 平成24年版厚生労働白書 (Report). 厚生労働省. (2012). pp. 363. http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/. 

^パート主婦が消える? パート労働者への社会保険適用拡大の是非」、『東洋経済』2012年4月24日。

^ 最高裁判所判決昭和36年2月24日

^ a b c OECD 2009, p. 118.

^ 都道府県毎の保険料率は、全国健康保険協会公式サイト内にてPDFファイルで告知している。

^ 平成26年12月12日財務省告示第386号、平成27年12月11日財務省告示第394号

^ http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat540/20130224001

^医療機関のかかり方で上手に節約!”. 協会けんぽ (2013年2月25日). 2013年12月29日閲覧。

^ http://skyteam.iza.ne.jp/blog/entry/2595240/

参考文献[編集]

健康保険法

OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). OECD. (2009-08-13). Chapt.3. doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561. 

関連項目[編集]

福利厚生

国民健康保険 - 国民健康保険法 - 国民健康保険税

医療経済学

診療報酬 - レセプト

健康保険証

外部リンク[編集]

健康保険組合連合会

全国健康保険協会

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就業

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