手の筋肉&腱

伸筋支帯(背側手根靱帯):前腕の深筋膜が手根部の背側で肥厚して出来ている。
橈骨の掌側縁の下端から斜めに尺骨の茎状突起,三角骨及び豆状骨に着く。
伸筋支帯の下には6個のトンネルがあり,前腕伸筋の腱が腱鞘に包まれて通る。
橈側から)トンネル長母指外転筋及び短母指伸筋の腱が通る。
トンネル:長・短橈側手根伸筋の腱が通る。
トンネル長母指伸筋の腱が通る。 
トンネル総指伸筋及び示指伸筋の腱が通る。
トンネル小指伸筋の腱が通る。
トンネル尺側手根伸筋の腱が通る。
   伸筋支帯
背側中手動脈
第1背側中手動脈は橈骨動脈の枝であり,母指背面の両側と示指背面の橈側を養う。
その他の背側中手動脈は背側手根動脈網から出る。
背側手根動脈網:橈・尺骨動脈の背側手根枝と前・後骨間動脈の終枝で形成される。
手掌腱膜
肥厚した手掌深筋膜(浅層)の線維に長掌筋腱から移行する線維が加わって出来ている。
近位では屈筋支帯及び長掌筋腱と癒着している。
両側では母指球と小指球の筋群の筋膜と皮膚の中に放散して終る。
遠位では4つの線維束に分れ,第2~5指の線維鞘,Mp関節の側副靭帯に付着する。
手掌深筋膜の深層は骨間筋の掌側面を被っている。
   手掌腱膜
手根管屈筋支帯手根溝(大・小菱形骨,有頭骨,有鈎骨)に囲まれて構成される。
豆状骨の橈側面と横手根靱帯の掌側面及び掌側手根靭帯は尺骨神経管を形成する。
尺骨神経管の中には尺骨神経尺骨動脈が通る。
橈側で屈筋支帯の表層部は大菱形骨結節に,深層部は舟状骨結節に付着し,
  橈側手根屈筋腱管を形成する。
橈側手根屈筋腱管の中には橈側手根屈筋腱が通る。
橈側手根屈筋腱を手根管の中を通ると見なすかどうかについては議論がある。
   手根管
手根管症候群:圧倒的に女性に多く,特に妊娠出産期と更年期に多く発症する。
原因:何らかの原因で手根管が狭くなり,正中神経が圧迫され発症する。
手関節の使いすぎによる腱鞘炎;
女性のホルモンの乱れによる滑膜性の腱鞘のむくみ;
骨折や脱臼,腫瘤などによる手根管の圧迫;
血液透析により手根管の腱鞘や靭帯にアミロイドというたんぱく質が沈着。
その他:リウマチ性屈筋腱腱鞘炎,糖尿病,甲状腺機能低下(粘液水腫)等。
症状正中神経の支配領域,特に中指にシビレや感覚異常,痛みが出る
シビレは朝方に強く,手首から先に痛みを伴ったり,夜間に痛むこともある。
進行すると親指の付け根の筋肉が萎縮し,OKサインがうまくできなくなる。
浅掌動脈弓:尺骨動脈の終枝と橈骨動脈の浅掌枝が吻合して作られる。
浅掌動脈弓の凸側縁からは3本の総掌側指動脈と1本の小指尺側動脈が出る。
   浅掌動脈弓
母指球:短母指外転筋,短母指屈筋,母指対立筋,母指内転筋により構成される。
短母指外転筋:舟状骨及び屈筋支帯から起こり,母指基節骨と橈側種子骨に停止する。
神経支配:正中神経(C6~C7)。
短母指屈筋:浅頭と深頭があり,その間を長母指屈筋の腱が通る。
浅頭:屈筋支帯から起こり,第1中手指節関節の橈側の種子骨に停止する。
深頭:大・小菱形骨及び有頭骨から起こり,橈側の種子骨に停止する。
神経支配:浅頭─正中神経(C6~C7); 深頭─尺骨神経(C8~T1)。
母指対立筋:大多角骨結節と屈筋支帯から起こり,第1中手骨の橈側縁に停止する。
神経支配:正中神経(C6~C7)。
母指内転筋:第3中手骨の掌面及び有頭骨,有鈎骨から起こり,尺側の種子骨に停止。
神経支配:尺骨神経(C8~T1)。
小指球:短掌筋,小指外転筋,短小指屈筋,小指対立筋により構成される。
神経支配:尺骨神経(C8~T1)。
短掌筋:手掌腱膜の尺側縁から起こり,手の尺側縁の皮膚に停止する。
小指外転筋:豆状骨と屈筋支帯から起り,第5指の基節骨の底の尺側縁に停止する。
短小指屈筋:有鈎骨鈎と屈筋支帯から起り,小指外転筋の終腱と合する。
小指対立筋:有鈎骨鈎と屈筋支帯から起り,第5中手骨の尺側縁に停止する。
   深掌動脈弓
深掌動脈弓:橈骨動脈の終枝と尺骨動脈の深掌枝が吻合して作られる。
深掌動脈弓の凸側縁からは掌側中手動脈が出て,総掌側指動脈と合流する。