生理痛の辛い症状を和らげる鍼灸治療

§  生理周期と女性ホルモンの関係

§  生理痛の原因

§  東洋医学で考える生理痛

§  生理痛の鍼灸治療

生理痛とは

生理の時には、多くの女性が少なからず、下腹部の痛み腰の重だるさなどの症状を感じていますが、そのなかでも、日常生活に支障をきたすほどのものを「月経困難症」といいます。 生理中の時の代表的な症状は、下腹部痛・腰痛などがありますが、他にも強い痛みによる吐き気や食欲不振、下痢、頭痛、眠気といった症状が同時に表れることも多くあります。これらの症状は、生理期間の間ずっと同じ状態が続くことは少なく、例えば、「生理前に下腹部痛があるが、3日目位には痛みはなくなっている・・」と か、「生理の終わりごろに頭痛がする・・」など、個人差がとても大きく、また月毎で生理痛があったり・なかったりとその症状が変化する方も多いようです。

生理痛の2つ原因

生理痛の種類

生理痛の原因

器質性

子宮・卵巣などに腫瘍・炎症などの病気があることが原因。

子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫など。

機能性

プロスタグランジンというホルモン、体質や冷え、ストレスなどが原因。

子宮・卵巣などの臓器に原因となる病気はない。

まずは婦人科の検査を受けましょう

生理痛が気になる場合、まず婦人科を受診されて必要な検査を受けることが大切です。 身体の状態を知るには、西洋医学による検査が有効です。
痛みの原因を正しく知ることで、原因に対しての最良の治療法を考えることができるようになりますし、「何か、深刻な病気かもしれない・・・。」という不安を抱えたままでは、精神的にも負担が大きいからです。「重大な病気ではない」と分かることで、何よりも心が安心できます。

鍼灸治療の効果

鍼灸治療では、東洋医学(中国伝統医学)に基づき、問診(お話を聞く)・脈診(脈をみる)・舌診(舌をみる)などによって、生理痛の症状がどのような原因から起こっているのかを読み取ります。

当院では、生理周期にあわせた治療内容で、生理痛の辛い症状を改善する治療と、生理痛を起きにくくする為の根本的治療を同時に行っていきます。 

女性の生理機能は、ホルモンバランスによる影響が大きく、そのため生理周期のリズムに女性の身体と心はゆらいぎがちです。下腹部痛・腰痛・むくみ・冷え・頭痛・食欲増進・胃腸の張り・便秘・下痢などの身体の症状や、気持ちがふさぐ・イライラしやすいなどの心の状態もホルモンの働きが影響しているといえます。

 

生理周期と女性ホルモンの関係

女性の身体は妊娠・出産に対応するように、子宮・卵巣といった女性特有の構造を持っています。 およそ25日~35日を一つのサイクルとして、周期的なリズムを作りだしているのが女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)です。この二つのホルモンは、卵巣で作られています。

生理が始まった日を一日目とし、およそ14日目頃ホルモンの分泌により排卵が起こり、子宮では受精卵の着床・生育のための準備が進められます。その後、受精卵の着床(妊娠)が行われない場合、子宮内で準備していた子宮内膜が血液と共に排出されます。

生理周期(生理周期を28日とした場合)

卵胞期

(生理1日目~14日目頃)

脳の視床下部からの指令を受け、脳の下垂体では卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が増えます。それにより、卵巣でいくつかの卵胞が成熟し始め、やがてその 内の一つが成長して卵細胞(卵子卵子)となります。卵胞の成熟と共に卵巣からはエストロゲンが分泌され、これにより子宮内膜を厚くします。

排卵

14日目頃)

血液中のエストロゲン濃度が急激に増加することで、脳の視床下部に作用して、脳下垂体からの黄体形成ホルモン(LHの一時的で急激な分泌増加を引き起こし、その結果、成熟した卵子が卵巣の外に飛び出します。(排卵

黄体期

(14日~28日頃)

排卵した後の卵巣では、黄体形成ホルモンの作用で黄体が作られ、その黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌される。このプロゲストロンの作用により、子宮内膜の腺分泌や体温の上昇が促されるなど、妊娠の準備を整えます。

月経

妊娠しなかった場合、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンというホルモンの働きにより、子宮が収縮し、不要となった子宮内膜が血液と共に体外へ排出されます。

生理痛の原因

機能性(重大な病気が原因でない)の生理痛についてお話を進めていきます。生理痛は、生理(月経)の時に子宮内膜から「プロスタグランジン」というホルモンが多量に分泌されるために、生理痛が起こると考えられています。

 

プロスタグランジンは、不要となった子宮内膜を排出するため子宮の収縮を起こし、外に押し出す働きを持っていますが、何らかの原因でプロスタグランジンが過剰に分泌されてしまい、子宮が必要以上に強く収縮してしまい痛みを引き起こすと考えられています。また、プロスタグランジンには、痛み・炎症・発熱の時、その不快な神経のシグナルを増強する働きがあります。

生理痛の強さは、ストレスや冷えも関係します

生理痛の原因として、他に考えられているものに、ストレス・冷え・体質などがあげられます。ストレスや冷えは、常に一定ではありません。特に、冷えは本質的なものと、四季のある日本では季節も関係が深いようです。一時的要因としては、夏場のクーラー・アイスクリームや冷たい飲み物・食べ物の 摂りすぎ、シャワーだけでお風呂を済ませる・プールに通ったなど、いろいろな場面で身体を冷やしてしまうことがあります。生活習慣によって、生理痛の状態も違ってくるといえます。

 

§  ストレス

例えば、就職や引越し等環境の変化が合った時に、予定より生理が遅れてきたり、生理痛がいつもよりひどかった・・・。という様なことは多いようです。

また、「また今月もつらい生理が来るのか・・・」というような、痛みに対する不安感や恐怖感が知らず知らずのうちにストレスになっている場合もあります。 外出や旅行などの計画も立てづらい・・・。と困っている方も多いのではないでしょうか?また、肉体的な疲労もストレスになります。身体の疲れも生理に影響があります。

§  冷え

「生理の時は腰とお腹にカイロを貼っています」という声をよく聞きます。腰や下腹部を温めると何となく気持ちも落ち着いて痛みも和らぐ気がします。低温や けどには気を付けてカイロを活用してみましょう。ただし、普段から手足が冷たい、身体全体に冷えを感じるという方は身体が冷えている又は身体を温める力が 弱いと考えられます。冷えは血流を悪くするため、スムーズに子宮から血液(内膜)を排出したい生理の時は、子宮がより強く収縮してしまい、痛みを強くする原因にもなりかねません。

 

東洋医学で考える生理痛

東洋医学(中医学)では、生理(月経)の中心となるものを血(けつ)と考えます。中医学での血とは、人間の身体を作り生きるための構成要素である気・血・津液(き・けつ・しんえき)の中の血です。血は全身を順行し、臓腑・器官などを栄養している身体にとって必要不可欠な栄養物質です。その血によって栄養された胞宮(ほうきゅう=子宮のこと)に受胎が行われなかった場合、充満した気・血が胞宮から溢れ出されます。(=生理・月経)

 

§  不栄則痛】(ふえいそくつう)

生理の中心となる血は、気の作用によって流れていますが、この血や気が足りずに胞宮が充分に栄養できない場合、「不栄則痛」(栄養できなければ、すなわち痛む)と、痛みが起こります。

§  不通則痛】(ふつうそくつう)

生理の中心となる血が気の作用によってその流れが順調であれば、異常な痛みは起こさないのですが、血の流れが気の乱れによってスムースでなくなった場合、「不通則痛」(通じなければ、すなわち痛む)と、痛みが起こります。

東洋医学で考える生理周期

行経期

(生理1日目~7日目)

生理期間のこと。気血で充満した胞宮から気血が溢れ出て、胞宮は空になります。

経後期

7日目~14日目)

空になった胞宮が気・血により栄養され始めます。

経間期

14日目ころ)

胞宮は気・血が旺盛になり、排卵が起きます。

経前期

14日目~28日目ころ)

胞宮は気・血で満たされ、生殖機能を持つ天発(てんき)という物質や腎気が旺盛となる。

生理の前日

受胎胎児の栄養

未受胎生理(月経)

受胎した場合胎児への栄養供給

未受胎の場合生理(月経)

生理痛の鍼灸治療

東洋医学に基づいて、生理痛の状態・体質等を問診でお聞きし、脈の状態・舌の状態と合わせて総合的にお身体の状態・生理痛の原因を見極めて治療を始めます。

 東洋医学では、女性の生理(月経)の中心となっているのは「血」と、「血」をサポートする「気」の働きです。この「」と「」の調整を中心に鍼やお灸の治療を行います。具体的には、「血」の滞り(瘀血:おけつ)・気の滞り(気帯:きたい)や子宮周り・身体の冷えを取り除いたり、「血」が足りてない状態(血虚:けっきょ)・「気」が足りてない状態(気虚:ききょ)であれば補う治療を行います。

「血」や「気」が滞る原因

§  血の流れをサポートする気の働きが弱い

§  ストレスを感じやすい

§  体力が低下している

「血」や「気」が不足する原因

§  胃腸の働きが弱い

§  長期にわたる病を患っている

§  体質的に気が不足している

女性のための女性鍼灸師による安心の治療

痛みの緩和

(瘀血・気帯・血虚・気虚等の治療)

  & 

体質の改善

(於血・気帯・血虚・気虚が起きる根本的な原因の治療)

  

生理痛の改善。生理痛の起きにくい体質へ

 

生理痛の鍼灸治療では、同じ方でも日によって治療内容が変わることがあります。それは、女性の生理周期を考えた治療では、周期のいつかによって必要な治療が変わってくるからです。

当院では、患者さんにとって最善の治療を女性鍼灸師が治療を担当しておりますので、安心して治療をお受けいただけます。

生理痛は女性の生理周期というリズムの中で起きる不快な症状で、私も長い間重い生理痛で悩んできました。鍼灸師になる前でしたので、生理に関係するあらゆる本を研究して、冷えを取ったり、体操やストレッチなど良いと思われるものは積極的に取り入れ、なんとか生理痛を改善したいと努力を続けてきました。そんな中で、身体に良い変化をもらたらしてくれたのが、鍼とお灸の治療です。

生理は女性にとって大切な身体の働きです。時には鎮痛剤を飲んで一時的に痛みをおさえることもあるかと思いますが、生理の度に痛みが気になっているようでしたら、その原因から身体のことを考えてみてはいかがでしょうか?

鍼灸治療や東洋医学(中国伝統医学)がお役に立つと思います。