トネリコ              (モクセイ科トネリコ属:落葉高木:樹高 〜15メートル:花期 〜 月)

薬効
下痢 眼の充血 解熱
 
分布生育場所

科名:モクセイ科/属名:トネリコ属
和名:梣/別名:ササトネリコ/タモノキ/タモ/生薬名:秦皮(しんぴ)/学名:Fraxinus japonica
本州の中部以北の山地の湿地に自生する日本固有種
田の畦(あぜ)に刈り取った稲(いね)を干す稲架木(はさぎ)として植栽される

モクセイ科トネリコ属アオダモ(コバノトネリコ)

見分け方・特徴

本州の中部以北の山地の湿地に自生する落葉高木で高さ約15メートル、幹の太さ直径約60センチになる雌雄異株で日本固有種
樹皮は暗褐色、縦に割れ目がはいる
葉は奇数羽状複葉、対生、長さ18〜35センチ、小葉の長さ5〜15センチ、幅3〜6センチ、2〜3対の広卵形〜長楕円形、先端は急に尖り、葉縁に浅い鋸歯がある
花は4〜5月、新枝の先端や葉腋に、葉の展開とほぼ同時に円錐花序につける
花には花弁が無く、雄花には雄しべ2本、雌しべは無し、雌花は雌しべだけのものと、仮雄しべ2本がつくものがある
果実は、翼果、倒披針形、長さ3〜4センチ、幅0.6〜0.7センチ
採集と調整
春から夏に、樹皮を採取して天日で乾燥させたものを、生薬名(しょうやく)で、秦皮(しんぴ)と呼ぶ
薬効・用い方
秦皮(しんぴ)は、消炎、収斂(しゅうれん)薬として用い、下痢(げり)止めや解熱などには、1回量3グラム、水0.3リットルを半量まで煎じて服用する

痛風には、尿酸排泄作用が認められ、1日量3〜6グラム、水0.3リットルで半量まで煎じて服用する

また、洗眼剤として用いる場合には、結膜炎などの洗眼に、秦皮(しんぴ)10グラム、水0.4リットルで半量まで煎じた液で洗眼する

トネリコの仲間には、アオダモ(コバノトネリコ/小葉のトネリコ)があり、北海道、本州、四国、九州と全国に分布
これは、アオダモの枝を切って水に入れておくと、殺菌性の強い、クマリン配糖体・エクスクリンが水に溶け出して、水が藍色の蛍光を出すことからアオダモと呼ばれている

「広川薬用植物大事典」に、「樹皮を乾かした生薬を従来日本で秦皮(しんぴ)に当てている。秦皮の煎剤は消炎、収斂薬であり、また熱性下痢に用いられる(1回3グラム)。植物各部に mannitol を含み、また、樹皮に aesculetin とそのグリコシド aesculin とを含有する」という記述がある。
その他
名の由来は、「樹木大図説」には、「枝に介殻虫(かいがらむし)がつき白蝋(はくろう)を分泌し、この蝋を「トネリ」といい戸の溝に塗ると戸滑りがよくなる。トヌリキ(戸塗木)より転じてトネリキ、次にトネリコとなる。皮を秦皮と称し浸出液は眼病の薬となる。」と、トネリコの名の由来を説明している

中国の古書、神農本草経(しんのうほんぞうきょう)には、トネリコの樹皮を乾燥した、秦皮(しんぴ)を、「久しく服すると頭髪は白くならず、不老である」という記述がある

また、日本の古書の本草綱目(ほんぞうこうもく)では、「目を明にし、目の赤腫や疼痛(とうつう)、涙のやまぬときに用いる」という記述があり、古くから目の薬として用いていたことがわかります

トネリコ、アオダモ(コバノトネリコ)の材は、野球のバット材、各種器具材として用いられてる

また、樹形が直立して、湿地に向く性質から、越後名寄の田の畦(あぜ)に刈り取った稲(いね)を干す稲架木(はさぎ)として植栽される
低湿地に向くということで、東京・江戸川区の7,000本の並木の半数はトネリコだという