ヤブコウジ    (ヤブコウジ科ヤブコウジ属:常緑小低木:樹高 〜20センチ:花期 〜8月)

薬効
気管支炎(気管支カタル) せき・たん 湿疹(くさ) はれもの・できもの
分布生育場所

科名:ヤブコウジ科/属名:ヤブコウジ属
和名:藪柑子/生薬名:紫金牛(しきんぎゅう)/紫金牛根(しきんぎゅうこん)/学名:Ardisia japonica
日本全土の山野、山すその木陰に自生する常緑の小低木
朝鮮半島、中国に分布

新潟県聖籠町山王森史跡公園のヤブコウジ

ヤブコウジ科ヤブコウジ属マンリョウ
ヤブコウジ科ヤブコウジ属カラタチバナ

見分け方・特徴

山野の木陰に群生する常緑の小低木で、高さ10〜20センチくらい。
地下茎を伸ばして群生します。
茎は、直立し葉は、上部に1〜2段輪生して、長楕円形、葉縁にこまかい鋸歯があり、表面に光沢があります。
花は、7〜8月ころ葉の脇に白色の小花を下向きにつけます。
果実は、球形で直径約6ミリ、秋に赤く熟します。

栽培:繁殖は実生(みしょう)で、秋に果実を採取して春に播種(はしゅ)します。
発芽したら植え替えますが、鉢植えの場合には、赤玉土や鹿沼土などと腐葉土を混ぜます。
乾燥しないように、夏には充分灌水(かんすい)して、冬は乾かない程度にし、直射日光の当たらない半日陰の場所で栽培します。
また、露地植えの場合には、植え込みの下などの湿り気がある場所が良く生育します。
採集と調整
晩秋11月ころ、根茎(こんけい)と根を掘り取り、水洗いして細かく刻んで天日で乾燥させます。根は浅く伸びているので根を引く抜くと簡単に採れる
これを生薬(しょうやく)で、紫金牛(しきんぎゅう)といいます。

中国では、乾燥した全草(ぜんそう)を紫金牛(しきんぎゅう)といい、乾燥した根を紫金牛根(しきんぎゅうこん)として区別しています。
薬効・用い方
有効成分は、ベンゾキノン誘導体・ラパノン(黄色結晶性物質)、ベルゲニンなど

紫金牛(しきんぎゅう)は、解毒薬、のどの腫瘍、せきなどに用い、茎葉(けいよう)や全草は、慢性気管支炎に用います。

紫金牛(しきんぎゅう)1日量、3〜6グラムを、水0.4リットルで、半量まで煎じて、1日2回朝夕の食前に服用します。

化膿性の腫れ物や小児の頭などにできる湿疹(しっしん)には、紫金牛(しきんぎゅう)20グラムを、水0.4リットルで、半量まで煎じて、この煎じ汁で患部を洗うと効果があるとされます。

また、膀胱炎には、紫金牛(しきんぎゅう)5グラム、ヘビイチゴの乾燥根5グラム、甘草(かんぞう)2グラムを1日量として、煎じて服用します。

中国では、乾燥した茎葉(けいよう)を肺がんなどの治療に用いていて、1日量30〜60グラムを煎じて服用するとされています。

晩秋〜冬に真っ赤に熟した実は、生食すると少し甘く、サラダに散らすと面白い
その他
名の由来は、赤い実を山のミカンに見立てたもので、始めはヤマミカンと呼び、ヤマタチバナになって、ヤブコウジと呼ばれるようになったという

「万葉集(まんようしゅう)」や「源氏物語(げんじものがたり)」では、ヤブコウジをヤマタチバナの名で出ている

秋から、冬にかけて赤い実をつけるので、マンリョウとともに正月用の盆栽として古くから観賞されていて、江戸時代には女の子の髪飾りに赤い実と小枝を使ったという
元禄時代には、ヤブコウジの観賞用の栽培が盛んになり、葉に斑の入ったものや葉が変形したものなどの品種が栽培されて高額の値で取引された記録が残っている