スイセン        (ヒガンバナ科スイセン属:多年草:草丈 〜30センチ:花期 1〜4月)

薬効
はれもの・できもの がん一般
分布生育場所

科名:ヒガンバナ科/属名:スイセン属
和名:水仙/学名:Narcissus tazetta var.chinensis
カナリー島原産からヨーロッパ、アジアから中国経由で日本に渡来
日本全土で観賞用として栽培
野生化して伊豆の爪木崎、房総白浜、淡路島、越前海岸などの比較的暖地の海岸の砂浜に群生するニホンスイセン

見分け方・特徴

スイセンは、多年草の球根植物で鱗茎(りんけい)から長さが20〜30センチの数枚の扁平(へんぺい)な線形葉を出します。
早春に叢生(そうせい)する葉の中央部から花茎(かけい)を長く出します。その花茎(かけい)の先に苞(ほう)がついていて、その中に直径3センチくらいの白色の芳香(ほうこう)のある花を横向きに数個つけます。
花には2〜3センチの柄があり横方に伸びた長い花冠(かかん)筒部に続き、筒部の先に6花被片(かひへん)があり、中央には黄色のさかずき状の副花冠(ふくかかん)があります。
雄しべは6本、雌しべは1本あります。
この花には、種子が出来ないので、増殖は鱗茎(りんけい)の株分けになります。
鱗茎(りんけい)は、卵状球形、外皮は黒色をしています。
採集と調整
スイセンは、生の鱗茎(りんけい)を、いつでも必要なときに採取して、よく水洗いしてから、外皮を取り除き、生のままで外用として用います。
薬効・用い方
スイセンの鱗茎(りんけい)は、はれもの、乳腺炎とくに乳腫(にゅうしゅ)や肩こりには、生の鱗茎(りんけい)をすりおろして、布でしぼった汁に、小麦粉を少量ずつ加えながらクリーム状によく練ってから、患部に直接塗布してから、ガーゼで押さえます。
塗布剤が乾いたら取替えますが、患部が赤く充血してきたら塗布を中止します

また、茎葉などの全草は有毒で嘔吐、下痢、けいれん、麻痺などの中毒症状を起こします。
この有毒成分は、リコリンなどのアルカロイドです。そのほかの成分は、多糖類のスイセングルコマンナン、オイゲノール、ベンズアルデヒド、桂アルコールなどの芳香性の精油を含みます。
一般の場合には、絶対に口にしてはいけません。


このスイセンの成分の数種のアルカロイドには、抗がん性があるといわれていて、総アルカロイドを分離して20〜30ミリグラム/キログラムは、ラットやマウスのそれぞれジェンセン内腫やエールリット腹水がんに対していずれも顕著な治療効果を発揮しているといわれています。

栽培:スイセンの栽培は比較的に容易で、秋に球根を日当たりがよく、排水の良い場所に植えつけます。
土質は、砂状土がよく、植えようとする場所を20〜30センチ掘ってから有機質肥料などを入れて、10〜20センチの土を入れてから球根を置いて、その上に土をかけます。
植えつけてから3年間くらいは、そのままでも毎年花をつけます。
また、鉢植えにする場合には、球根が見えるくらい浅く植えても十分花を楽しめます。

また、有毒成分のガランタミンは、ヒガンバナラッパスイセンナツズイセンキツネノカミソリ、ショウキズイセンなどの鱗茎に含まれていて、小児麻痺の後遺症治療に用いられる
その他
スイセンは、地中海沿岸、カナリー島の原産で、ヨーロッパから、小アジアを経由して中国に渡り、それから、古くに日本に渡来しました
名前の由来は、古代中国では、水辺を好んで繁茂する清らかな植物を「水の仙人」と呼んだといいます
この植物が繁殖することによって、「水の仙人」から「水仙」と呼ばれたといいます

日本には、南宋の頃に修行僧が持ち帰ったとされていて、鎌倉時代に中国名の「水仙」をそのまま音読みにして「スイセン」という名になったとされています。

スイセンの属名をナルキッソスといい、名前の由来を知っている人も多いと思います。
それは、ギリシャ神話の伝説で、美少年ナルキッソスが泉に映った自分の姿に恋いこがれ、憔悴しきってしまい命を失ってしまうのです。
そのナルキッソスが亡くなった跡にひっそりと咲いた花がスイセンであったという伝説です。
スイセンの下に向けて花首をかしげて花を咲かせる様子が水面をのぞきこむようにも見えるからこの名がついたとされています。

また別の説では、ナース(Narce)で、この言葉の意味は、ギリシャ語のナルキソス(Narkisos)からでたもので「麻酔」を意味するといいます。
スイセンの鱗茎は有毒で神経を麻痺させることからついた名だといわれます。

スイセンは、渡来したころは、観賞用に畑地などに栽培されていましたが、一部が野生化して房総、伊豆、紀伊半島、淡路島、高知県などの比較的暖地の海岸の砂浜に群生を作っています。