サジオモダカ        (オモダカ科オモダカ属:多年草:草丈 〜50センチ:花期 〜9月)

薬効
小便不利 漢方処方
分布生育場所

科名:オモダカ科/属名:オモダカ属
和名:面高/生薬名:沢瀉(たくしゃ)/学名:Sagittaria trifolia
本州の中部以北、北海道の寒地の小川や池沼地に自生

オモダカ科オモダカ属オモダカ(面高)

(←拡大画像はクリックします)

見分け方・特徴

サジオモダカは、寒地の沼沢地(しょうたくち)に自生する多年草。
地下茎は短く根茎(こんけい)は球状で、根茎から多数の白い柔らかなひげ根を出します。
葉は、根茎に双生(そうせい)して長い柄があり、卵状楕円形か卵状長楕円形で、長さ10〜20センチ、幅5〜10センチで、先は尖っていて茎部は少し円形です。
花は、6〜9月ころに葉間から高さ60〜80センチの花茎(かけい)を伸ばして、花茎が分岐して先端に白色の3弁花を数個つけます。


採集と調整
サジオモダカは、10〜11月ころ球茎(きゅうけい)を掘り取ります。
ひげ根を取り除き、外皮をナイフで薄くはぎとり、日干しにして乾燥させます。これを生薬(しょうやく)で沢瀉(たくしゃ)といいます。

沢瀉(たくしゃ)は、生薬を有効に利用するために「修治(しゅうち)」という調製処理をします。
サジオモダカの球茎を水洗いして細根を取り除き、2〜3個に分割して、酒に一昼夜浸してさらし、低い温度であぶります。
この修治(しゅうち)で、沢瀉(たくしゃ)自身が持っている、漢方でいう「寒」になる性が「温」に変化するとされています。これは、人の各臓器の働きを鈍くする成分を除き、また、沢瀉(たくしゃ)は、でんぷんが多いので糊化して加工しやすいようにするためのものです。

栽培:栽培には水田を利用することができます。4〜5月ころに苗床(なえどこ)を作り、種子を砂に混ぜて播種(はしゅ)しますが、種子が浮かない程度に灌水(かんすい)します。
10日間程度で発芽するので、50日目くらいに株間(かぶま)を30センチくらいにして移植します。
できるだけ浅植えにすると球茎が大きく太ります。


薬効・用い方
沢瀉(たくしゃ)は、漢方処方で用います
頭痛、めまい、尿の出が悪いなどの場合を目標にして、強度のメニェール症、胃下垂症、胃アトニー症などに、沢瀉湯(たくしゃとう)を、沢瀉(たくしゃ)7.5グラム、蒼朮(そうじゅつ)5グラムを1日量として、煎じて服用します。

口が渇いて、尿が少ない場合を目標に、二日酔い、乗り物酔い、腸カタル、胃アトニー症には、五苓散(ごれいさん)(沢瀉(たくしゃ)5グラム、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)各4.5グラム、桂枝(けいし)3グラム)を、1日量として煎じて服用します。

その他沢瀉(たくしゃ)は、茯苓沢瀉湯(ぶくりょうたくしゃとう)、八味丸(はちみがん)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)猪苓湯(ちょれいとう)などにも用いられます。

漢方では、利尿(りにょう)剤とされるものに、茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、沢瀉(たくしゃ)があります。
これらは、同じ利尿作用でも、茯苓(ぶくりょう)は主に心臓、胃に働いて利尿作用を示します。また、猪苓(ちょれい)は主に腎臓系に作用して、炎症性の腎によく働きます。
沢瀉(たくしゃ)は、胃、腎に作用して本来の働きを基にもどし利尿作用が表れます。


その他
サジオモダカは、本州の中部以北から北海道、朝鮮半島、中国大陸、シベリア東部に分布していて、薬用植物として栽培されます。
また、サジオモダカの仲間は温帯、熱帯地方に10種類程度知られていますが、日本にはサジオモダカとヘラオモダカが自生(じせい)しています。

新潟県には、ヘラオモダカが自生していて、サジオモダカとヘラオモダカの区別は、葉がほぼ円形で柄との境がはっきりしているのがサジオモダカで、葉と柄が狭まりながら丸くつながる方がヘラオモダカです。