オモト            ( ユリ科オモト属:常緑多年草 :草丈 20〜50センチ:花期 5〜7月 )

薬効
強心利尿 外用 有毒
分布生育場所

科名:ユリ科/属名:オモト属
和名:万年青/学名:Rohdea japonica
東海道海岸以西の暖かい山地に自生(じせい)
全国で観賞用の園芸品種として古くから植栽

見分け方・特徴

オモトは、東海道以西の暖地の海岸部の山地の林下に自生する常緑の多年草。
地下茎は太く短く、太めのひげ根が多数あります。
地下茎の頂より8〜10枚の光沢のある濃い緑色の葉が叢生(そうせい)し、長さは30〜40センチの皮針形(ひしんけい)の肉厚全縁(ぜんえん)で堅く光沢があります。
花は、5〜6月ころ下の方の葉の脇から太い花茎(かけい)を出して、肉厚淡黄色の6枚の花被片(かひへん)の花を穂状(すいじょう)につけます。
花被片(かひへん)は、下で癒合(ゆごう)している雄ずい6本で花糸は短く花被に付いています。
子房は丸く3室で、花柱(かちゅう)は短く3裂して、これは、蝸牛媒花(かぎゅうばいか)といい、カタツムリやナメクジが花被(かひ)を食べて花粉を媒介します。
秋には、赤か黄色に熟した扇球形の漿果(しょうか)をつけ、種子は褐色です。
採集と調整
根茎(こんけい)を、随時掘り取りよく水洗いして、天日で乾燥させます。
これを生薬(しょうやく)で、万年青根(まんねんせいこん)、葉を万年青葉(まんねんせいよう)、花を万年青花(まんねんせいか)といいます。

栽培:鉢植えとして水はけのよい土砂を用い、水苔(みずごけ)を敷きます。
繁殖は株分けと実生(みしょう)による場合がありますが、実生の場合には特性をもつ期待がわかりません。
乾燥には、非常に強く灌水(かんすい)は、冬に1回、夏に数回する程度です。
また、夏は簾(すだれ)などで日光の直射を避けて、冬は暖所で保護する必要があります。
薬効・用い方
オモトの根茎、葉、種子の含有成分は、配糖体ローデキシンA,B,Cなどのステロイド強心配糖体で、中毒症状は、呼吸・循環機能に障害が出て、悪心、嘔吐(おうと)、頭痛、不整脈、血圧降下を起こしてやがて心臓が停止します。

配糖体ローデキシン、ロデインがジキタリス葉に含まれる強心配糖体と良く似ているために、ジキタリスの代用として用いられたが、ジキタリスと同様に用い方は複雑ですので、一般には用いるべきではありません。


オモトには、サポニンを含み顕著な溶血作用があり、強心や利尿薬として用いますが、毒性が非常に強く有毒植物になります。

一般には、葉を煎じて、かいせん、たむしなどの外用とします。
その他
オモトの名前の由来は、大きな株という意味を表している大本(おおもと)からきていて、葉が常に緑色のことから万年青(まんねんせい)ともいう
また、オモトの良質を産する大分県の御許(おもと)山から由来するという説も

江戸時代には、老母草(おもとぐさ)と書いたという。老母を葉に見立て、子の成長を赤い実に見立てて、赤い実(子供)を葉(母)が抱いているようにも見える
滝沢馬琴(南総里見八犬伝の著者)は、母人(おもと)から、由来して、オモトの名になったという

徳川中期以降には各種の園芸植物が飛躍的に改良発達した時代にあたり、当時の植物の繁栄ぶりは色々な花譜にも見てとることができます。オモトもそのひとつであって、貴重な品種は異常なまで高い価格になって取引されたものでした。
オモトの園芸品種の栽培記録は、享保(きょうほ)20年(1735)の多数の変葉品から、文政10年(1827)の数10種にものぼる多数の品種があり、その後の天保(てんぽう)時代には大流行して金のなる木の「金生樹(きんせいじゅ)」と呼ばれていました。
明治、昭和になっても、オモトの人気が出たりして価格の変動がありました。
現在でも、園芸品種として最も人気のある植物のひとつで、品種改良により約200品種のオモトがあります。