ヒシ               (ヒシ科ヒシ属:1年草:花期 7〜10月)

薬効
胃がん 滋養強壮 消化不良 乳腺がん 子宮頸がん  
           
分布生育場所

科名:ヒシ科/属名:ヒシ属
和名:菱/学名:Trapa japonica
北海道、本州、四国、九州の日本全土の沼、池に自生する1年草
朝鮮半島、中国に分布し、古い池や沼に普通に分布

見分け方・特徴

ヒシは水草で、茎は細長く、その長さは水深に比例しています。
根は貧弱ですが、泥の中に根をはります。
葉には水中葉と水上葉があり、水中葉は根状で対生または輪生します。水上葉はいわゆる、ひし形で稜があり、径4〜6センチ、葉縁は鋸歯状、表面は滑らか、裏面は葉脈が隆起していて毛があります。
葉は重ならないように、うまく光を利用できるように並び、葉柄の中央部は膨出部があり、空気を蓄えて浮くのに便利なようになっています。
ヒシの花は白色4弁、1日花で花柄およびがくには軟毛があります。中心には黄色の花盤(花の基部が肥大したもの)があって、そこから蜜を出します。
花後は水中にもぐって果実を結びます。
果実は、やや扁平、逆の三角形で両端に鋭い刺が2本あり、この刺(とげ)は内側のがく片が残って成長変化したものです。
採集と調整
ヒシの実は、9〜10月頃果実を採取し、水洗いした後、天日で十分に乾燥させます。
薬効・用い方
有効成分は、ベータ・シトステロール他

滋養、強壮、消化促進にヒシの種子を生食したり、ゆでて食べたりします

ヒシの薬理実験では、種子のアルコール浸出液に、抗がん作用のあることが知られており、乳腺がん、胃がん、子宮頸がん等の治療に30〜40グラムを、煎じて服用します。
または、胃がん、子宮ガンなどに乾燥したヒシの実5個に、ツルナ20グラム、ハトムギ20グラム、ゲンノショウコ20グラム、血明子20グラムを、0.5リットル程度の水で半量に煎じて1日3〜4回に分けて服用します。

胃がんには、刺針のある果実
ひしの実(10グラム)藤瘤(10グラム)、訶子(5グラム)(かし・インドやビルマに産する、シクンシ科ミロバランの果実)薏苡仁(よくいにん)(10グラム)の4種を混ぜ、水0.6リットルを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、1日3回食間に服用します。これは、胃がん治療のWTTC療法と呼ばれています。

また、胃がん、食道がんに効くとされていて、蕃杏(ばんきょう・ツルナ)90グラム、ヒシの実(果実)120グラム、薏苡仁(よくいにん・ハトムギ)30グラム、決明子(けつめいし・エビスグサ)12グラムを混ぜて煎剤として用いられています。

ヒシの果実は、そのまま食べても、ゆでて食べても滋養強壮、健胃、消化促進などの薬効があります。
また、果実をゆでて、皮をむき渋皮をとってから食べる。油で炒めたり、あえものも美味しくたべれます。
古くから乾燥したヒシの果実を粉にひいて、餅やだんごを作っていました。

民間では全草を乾燥してから、煎服すると酒毒を解毒して、視力を増強するといわれています。
その他
ヒシの名前の由来は、緊(ひし)の意味で、ヒシの実の鋭い刺(とげ)からついたといわれていますが、その葉が平らに広がる様子がヒシゲタ形だからともいわれている

日本の古書の「本草和名(ほんぞうわみょう/918)」には、ひし実、「和名妙(わみょうしょう/932)」には菱子と記述されていて、いずれも和名を比之(ひし)としています。
これから、水面に浮かぶ葉の形が「ひし形」であることから由来したものという

飯沼慾斎(いいぬまよくさい)があらわした「草木図説(そうもくずせつ)」には「吾郷辺所在大小二種あり、大者コレヲオニビシト称ス」と記述されています。
飯沼慾斎(いいぬまよくさい)は大垣の西、長松に平林荘を築き、植物の研究を行っていましたので、大垣近辺の池か沼のヒシを見て、オニビシとヒメヒシをさしていると思われます。

オニビシは刺(とげ)が4本あり、ヒメヒシは葉柄(ようへい)が赤くて長く2個の刺があります。