チガヤ          (イネ科チガヤ属:多年草:草丈 30〜70センチ:花期 5〜6月)

薬効
吐血・喀血(かっけつ) せき・たん 黄疸 腎炎 むくみ(浮腫・水腫) 小便不利
血尿 鼻血(はなぢ) かん(疳)      
分布生育場所

科名:イネ科/属名:チガヤ属
和名:血茅/別名:ツバナ(茅花)/学名:Imperata cylindrica var.koenigil
日本全土の日当たりのよい乾いた原野、川原などに自生する多年草
アジアの亜熱帯地方〜北アメリカに分布

イネ科イネ属イネ(稲)
イネ科ヨシ属ヨシ(葦)
イネ科トウモロコシ属トウモロコシ(玉蜀桼)

見分け方・特徴

チガヤ(イネ科)は、地下茎は細長く、白色円筒形で節があり、横に長くのびています。
これをかんでみると甘い味がします。茎にも節があり、そこには毛が生えています。
葉は根もとから生えていて、扁平な線形で、先は尖り、長さ20〜40センチ、巾7〜12ミリ程です。
茎葉は互生、基のところで、茎を抱き込むように鞘状となっています。
花は、茎の先に葉が出る前に褐色の、花穂をつけますが、その後、自絹色の長毛をもったものになります。これをツバナといいます。このツバナはなめると甘い味がします。
花序は長さ10〜20センチ、巾1センチぐらいの円錐状ですが、短い枝が主軸に沿って立っているので、単穂状にみえます。

チガヤの地下茎は、甘味が強く、砂糖の原料になるサトウキビ属の近い種類に属します。

採集と調整
チガヤは、11月頃に根茎を掘り取り、水洗いしてから、ひげ根を除いて雨露のかからないところで陰干しにします。
淡黄白色で太く新しいものが良品で、わらなどで磨かれている場合もあります。
これを生薬で、茅根(ボウコン)といいます。
薬効・用い方
有効成分は、果糖、ブドウ糖、蔗糖、トリテルペンのシリンドリンほか

チガヤの根茎を乾燥した、茅根(ぼうこん)の水浸剤には、カリウム塩によると思われる顕著な、利尿消炎作用があります。
水腫(すいしゅ)、黄疸(おうだん)、腎炎(じんえん)、急性肝炎に用いられます。
用い方は、1日量10〜20グラムに水0.5リットルを加えて、煎じながら約半量に煮詰めたものをこして、1日3回食間に服用します。

主に、虚弱者の利尿作用に適していて、茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、木通(もくつう)より効果がよいとされています。
若い花芽(ツバナ)と花穂は強い止血作用を示し、出血時間と凝固時間を短縮します。1日量3〜9グラムを煎じて食後に服用すると鼻血、血尿、喀血の止血剤となります。

さらに、生薬の生地黄(しょうじおう)、山梔子炭(さんししたん)などを配合すると、さらに効果が上がるとされています。民間では、鎮咳(ちんがい)や癇(かん)などに煎用しています。

中国では、急性腎炎に用いています。急性腎炎の処方は、茅根(ぼうこん)15グラム、車前草(しゃぜんそう)9グラム、栗米鬚(りくまいす)15グラム、仙鶴草(せんかくそう)9グラム、鷹不泊(たかとまらず)9グラム、広東商陸(かんとんしょうりく)15グラムを、煎じて服用します。

民間では、むくみに根茎とアズキを同量混ぜて煎じて服用。ぎょう虫駆除に花穂(かすい)を噛むと効き目があるとされています。

その他
春先の葉が出る前に咲く褐色の花穂(かすい)をツバナといって、なめると甘い味がします。

江戸時代には、チガヤのこの褐色の花穂(かすい)を売り歩いたようです。

古典の「万葉集」 巻八の紀郎女(きのいらつめ)が大伴家持(おおとものやかもち)に 「戯奴(わけ)がため 我が手もすまに春の野に 抜ける茅花(つばな)そ 召して肥えませ」という歌があり、春の野で採ったソバナを食べて太ってくださいという意味になる

晩秋の野辺を、白い毛を密生した花穂(かすい)が、一面に風にそよぐ風景は大変に美しいものがあり幻想的です。

チガヤの名前の由来は、和名のチガヤのチは千(1,000)の意味で、多数をあらわしています。

チガヤが、群生することからチガヤが名付けられたということです。