コブシ(モクレン科モクレン属:落葉性小高木:樹高 〜6メートル:花期 3〜5月)
薬効
蓄膿症(ちくのうしょう)              頭痛(ずつう) 漢方処方       
分布生育場所

科名:モクレン科/属名:モクレン属
和名:辛夷/生薬名:辛夷(しんい)/学名:Magnolia kobus
日本全土、日当たりのよい丘陵地、尾根筋、山腹に自生。日本固有種。
本州東海地方の伊勢湾周辺の一部の地域の湿地、湿気のある場所に自生するシデコブシ
モクレン科モクレン属のタムシバモクレン


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見分け方・特徴

コブシは、高木となりがく片は花弁(かべん)の5分の1ぐらいで、花弁はやや丸みを帯びていて、花のすぐ下に1枚の緑の芽があるのがコブシです。
亜高木で花弁が白くてやや細く6枚でがく片が3枚で花弁の2分の1から3分の1ぐらいのものがタムシバです。
コブシもタムシバも、花の雄しべは60本以上、雌しべが30本ぐらいで、すべてらせん状に配列されています。
このような花のつき方が、らせん状である植物は起源の古い植物といわれています。
葉は長円形〜長卵形で両端が狭く尖り、裏面は粉白色をしています。

コブシが山麓(さんろく)や沢筋に自生するのに対して、タムシバは山腹や尾根筋に多く自生します。タムシバの樹皮は灰白色、小枝は細長く緑色をおびた褐色であって、その先端には8月ころに、すでに翌年のつぼみをつけ始めます。

分布は、本州、四国、九州で落葉樹林のブナ、ミズナラ、コナラ林と針葉樹のコウヤマキ林などの地域に多く見られます。
採集と調整
タムシバ(コブシ)は、開花直前の1〜2月ころが最適ですが、雪の多い地域では開花が遅いので雪解けの頃をみはからって、花のつぼみを採取し、風通しのよいところで陰干しします。
これを、生薬で和辛夷(わしんい)といいます。
日本では、ほとんどが野生品を採集するために、収穫量が変動することにより価格も変動します。

和辛夷(わしんい)に対して、辛夷(しんい)は中国産のモクレンの仲間のつぼみを乾燥させたものです。
タムシバも辛夷(しんい)と同様に扱います。日本の市場ではタムシバのつぼみがほとんでですが、コブシやキタコブシのつぼみも同様に利用します。
辛夷(しんい)は、毛筆のような形態で長さが2〜2.5センチ外面は黒褐色で絹糸状の毛が密生しています。
薬効・用い方
有効成分:精油。シトラール、シネオール、オイゲノールなどを含む

和辛夷(わしんい)には、芳香(ほうこう)があって、精油(せいゆ)を含んでいますので、かむとわずかに辛味があります。
鼻カタル、蓄膿症、頭痛に用います。和辛夷(わしんい)をきざんで、1日量2〜5グラムに水0.5リットルを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、3回に分けて食間に服用します。

漢方処方:和辛夷(わしんい)は主として漢方処方「辛夷湯(しんいとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)葛根湯加辛夷川弓(かっこんとうかしんいせんきゅう)」に配合されています。
前者は、蓄膿症で濃い鼻水が出る場合に用い、後者は鼻炎の初期で鼻づまりの場合に用います。
その他
名の由来は、果実(集合果)の様子を、人が手を握った拳(こぶし)に見立てた。和名の辛夷(こぶし)は、中国の別の植物の漢名を誤用したもの

春の庭先で開花するモクレンの仲間にハクモクレン、サクラモクレンなどがあります。
モクレンは中国が原産で日本に持ち込まれて栽培されたもので、日本古来のものではありません。
春が山に訪れ、落葉樹にまだ新葉が出揃わないころに、山腹や尾根筋を埋め尽くしたように真っ白な花が咲き誇ります。「コブシの花が咲いている」といいますが、このコブシと呼ばれるものにコブシとタムシバがあります。
岐阜県の東濃から愛知県にかけて、花弁(かべん)が非常に多くピンク色の花をつけるシデコブシが自生しています。日本特産でこの地域だけに分布する貴重な植物です。