クサボケ           (バラ科ボケ属:落葉性低木:樹高 〜1メートル:花期 〜5月)

薬効
滋養強壮 せき・たん 小便不利 リューマチ    
           
分布生育場所

科名:バラ科/属名:ボケ属
和名:草木瓜/生薬名:木瓜(もっか)/学名:Chaenomeles japonica
本州、四国、九州の日当たりのよい丘陵地に自生。日本特産種

ボケは中国原産で観賞用に栽培されていて自生はありませんが、クサボケは日本の本州の関東地方以西、四国、九州に自生

見分け方・特徴

クサボケは、落葉性の低木で高さが40〜100センチメートルくらいになります。
クサボケの幹は、基部からよく枝分かれし、下の方の枝は横になって地面についています。
短い枝はそこで成長がとまり鋭い刺になります。
葉は短枝に輪状につくか、長枝に互生しています。形は倒卵形で先は丸く、葉縁は鋸歯状、長さ2〜5センチ、葉柄は3〜10ミリの長さです。長枝につく葉は腎臓形の托葉がよく目立ちます。
花は前年の枝の葉の脇につき、地面に近い下部の枝の腋に3〜5個束生します。
クサボケの花は、雌性花(両性花)と雄性花があり、1本の木に混生し4〜5月頃、雄花は花弁5で円形、色は橙赤色、雄しべ多数、径1.5センチ程です。
雌花は長楕円形で7〜10ミリ程の大きさです。雄しべは多数、花柱は15〜17ミリで、雌性花は子房が太く花柱が長いようです。
秋になる果実は黄緑色に熟し、球形で約3センチ程の大きさ、黄熟してリンゴに似た芳香があり、かむと酢っぱい味がします。
採集と調整
クサボケの果実にまだ青みのある夏の終わりごろ採取し、5分間ぐらい湯通しして、縦割りか数個に輪切りにし、天日で乾燥させる

クサボケの果実の生薬名は、ボケの果実より調整する木瓜(もっか)と区別するため、和木瓜(わもっか)と呼ぶ
薬効・用い方
有効成分は、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸が多量にある

強壮、鎮徑(ちんけい)、鎮咳(ちんがい)、利尿(りにょう)薬として下肢(かし)の筋肉の疼痛(とうつう)、脚気(かっけ)、胃痙攣(いけいれん)、暑気当たりによる筋肉のけいれんなどにもちいます。
和木瓜(わもっか)を刻み、1日量5〜10グラムとして煎じ、1日3回に分け、食間に服用します。

クサボケ酒:9〜10月頃に採取した果実500グラムを水洗いして、よく水を切り縦横に6〜8片に刻み砂糖200グラムを加えて、ホワイトリカー1.8リットルに漬けます。1〜2ヶ月でも飲めますが、本熟成には6ヶ月程熟成させます。
クサボケ酒の色は黄金色に仕上がり、酸味と香りが見事な薬用酒になります。疲労回復や慢性リューマチに、1日2回さかずきに1〜2杯飲みます。

エキス:クサボケの果実で作った、リンゴ酸エキスを1日0.3〜0.5グラム服用。貧血症、強壮、疲労回復、補血、不眠症に。

浴湯料:果実の煮だし汁を風呂に入れる。リューマチ、筋肉痛、冷え性、不眠症、疲労回復などに。

和木瓜(わもっか)(果実を2〜3片に切ったもの)には、多量のリンゴ酸が含まれるために強い酸味があります。和木瓜(わもっか)は、リンゴ酸鉄エキスの製造原料になります。
その他
名の由来は、草ボケで、古くに中国から渡来したボケ(木瓜)より小型からクサボケの名になった
別名には、シドミ、ノボケ、コボケなどがある

4〜5月ころの、春たけなわのころに、日の当たる山林や野原、土手などに鮮紅色で直径3センチほどの花が咲いているのが目立つことがあります。これがクサボケの花ですが自生は少ない

古くに、飯沼慾斎(いいぬまよくさい・1783〜)があらわした「草木図説(そうもくずせつ)・木部」には、「全花と不全花の二つを具するものの如し。然るや又啓蒙(小野蘭山(おのらんざん)の「本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう)」には、雌雄異幹の如く説けり」と記述されていますが、100年ほど前の学者がすでに、雌性花(両性花)と雄性花のことを説明しています。
同じ株に雌花と雄花があるものとし、雄花しかついていない場合もあります。雄花は子房の発達が悪く、雌花はよく肥厚して、雌花(両性花)だけが果実になります。