キンミズヒキ     (バラ科キンミズヒキ属:多年草:草丈 〜1メートル:花期 〜9月)

薬効
口内炎 下痢 吐血・喀血(かっけつ) 歯ぐきの炎症 浴湯剤  
           
分布生育場所

科名:バラ科/属名:キンミズヒキ属
和名:金水引/学名:Aqrimonia pilosa
本州、四国、九州などの林の縁、原野、路傍に普通に見られる多年草。

見分け方・特徴

キンミズヒキは、草丈1メートル程に伸びて、全株に長毛が密生しています。葉は互生し、羽状の複葉で表面に腺点があります。大小ふぞろいの小葉からなっていますが、根元につくものは大きくなります。長い葉柄には葉状で縁がぎざぎざの托葉(たくよう)があります。
花は、夏から秋にかけ、長くのびた茎の上部に黄色5弁の小さなものを穂状につけます。
果実は宿存がくの内側にでき、そのがくの縁には鋭くて内側に曲がった刺毛が多数でき、この刺毛が衣類等に附着して散布に役立っています。
採集と調整
夏から初秋の開花期に全草を掘り採り、水でよく洗って天日で乾燥します。
生薬名は龍牙草(りゅうげそう)又は、仙鶴草(せんかくそう)といいます。
薬効・用い方
有効成分:カテコールタンニン、クマリン、ルテオリンなどのフラボノイド性配糖体、揮発油、多糖体など

全草のエキスは、血小板増加による血液凝固促進と止血作用がありますので、強壮収斂(しゅうれん)止血剤とされていて、喀血(かっけつ)、血便、子宮出血などの止血に用います。

また、抗菌、消炎、鎮痛作用もあり、健胃、下痢止めにも応用されます。
乾燥した全草を、1日量10〜15グラムに、0.5リットルの水を加えて、煎じながら約3分の1の量まで煮詰めたものをこして、3回に分けて食間に温めて服用します。
歯ぐきの出血や口内炎、のどの荒れたときなどには、乾燥した全草5グラムに、0.2リットルの水を加えて煎じ、約半量まで煮詰めたもので、1日数回うがいをします。

浴湯剤として、疲労回復、筋肉の疲れをとるときなどに風呂に用いられることもあります。
皮膚炎、うるしかぶれ、にきび、などに全草を煎じた液を湿布するか塗布します。

また、ガン細胞と正常細胞の培養液に、キンミズヒキのエキスを注入すると、がん細胞だけが死滅して正常の細胞には異常がないことが確認されています。

春先の若芽や若葉を摘み、熱湯で茹でて水にさらしてから、おひたしや和え物にしたり、汁の実にしたりして食べる
その他
キンミズヒキの名前の由来は、ミズヒキは「水引」の意味で、夏に黄花の小花を細長く穂のように咲かせる姿から「金色の水引」に見たてこの名前がついたという
また、和歌山地方の方言には、ヒッツキグサ(果実が衣類に付くことから)の呼び名もあるという

中国では、果実の刺毛が内側に曲がった姿から「竜の牙(きば)」を連想して、龍牙草(りゅうげそう)という漢名があり、それを音読みして生薬名になりました。

また、キンミズヒキの果実が衣類に簡単につきやすいことから、ヒッツキグサという別名もあります。

植物の中には子孫を残すために、いろいろな工夫をしています。このキンミズヒキの種子の表面には刺があり、移動する動物にくっついて種子を移動して子孫を残します。果実も衣類などについて運ばれるので、キンミズヒキのことをドロボウと呼ぶ地方もあるようです。

キンミズヒキ属は、アグリモニアといい、ギリシャ語で刺の多い植物という意味のアルゲモネからきています。
キンミズヒキは、日本から東ヨーロッパまで広く分布して、全体に小型のものはヒメキンミズヒキと呼ばれ、日本の特産種になります。